2017年10月15日 (日)

Domenico Scarlatti: Sonatas Vol.2 Angela Hewitt

Scarlatti

Domenico Scarlatti:
Sonatas Vol.2
Angela Hewitt

あまり期待してなかったがヒューイットのこのスカルラッティ第2集は第1集より良い。第2集の方が華やか。そしてある意味バラエティに富む。第2集の方が長調の曲が多い(第1集は長調9曲、短調7曲。第2集は長調12曲、短調5曲)。第2集第5曲は技巧的。同第14曲はフーガ(バッハっぽい)。同第15曲はモーツァルトのイ長調のソナタ(K.331)に似ている。

・第1集(2015年録音。ピアノはファツィオリ)
・第2集(2017年録音。ピアノはファツィオリ)

2017年10月 8日 (日)

Music of Frédéric Chopin Melody Fader

Fader

Music of Frédéric Chopin
Melody Fader
2010年録音


Barcarolle in F-Sharp Major, Op. 60 [7:28]
24 Preludes, Op. 28: No. 15 in D-Flat Major, "Raindrop" [4:40]
Fantasy-Impromptu in C-Sharp Minor, Op. 66 [5:10]
Nocturne No. 7 in C-Sharp Minor, Op. 27, No. 1 [4:26]
Nocturne No. 8 in D-Flat Major, Op. 27, No. 2 [5:05]
Ballade No. 1 in G Minor, Op. 23 [8:33]
Mazurka No. 10 in B-Flat Major, Op. 17, No. 1 [2:20]
24 Preludes, Op. 28: No. 3 in G Major [0:56]
24 Preludes, Op. 28: No. 4 in E Minor [1:38]
24 Preludes, Op. 28: No. 11 in B Major [0:35]
Scherzo No. 2 in B-Flat Minor, Op. 31 [9:36]


「舟唄」と「バラード1番」を河村尚子の演奏(舟唄、バラード1番)と聴き比べてみた。河村は「舟唄」において、ショパンが得意なレチタティーヴォでエレガントに美音を聞かせる。

メロディ・フェーダーはバラード(物語)を語っていない。河村はピアノの美音の中で物語を語り、美音が生きているが、フェーダーの場合、美音が生きてない。

「バラード1番」において、しつこく繰り返される第1主題は、河村の場合、そのしつこさが生きているが、フェーダーの場合、変な表現だが或る意味即物的か。

ところが、河村と正反対と思わせられるフェーダーの不器用な演奏は飽きが来ない。
多分、分かりやすく言って、これは怪我の功名だと思う。
よく聴くとフェーダーはやっぱり上手かった。技巧的にも。そして、おそらく、ポリフォニー的にも。

ところで「舟唄」の最後の2つのクライマックスは、どちらも中間部の旋律から取られているんですね。

2017年10月 3日 (火)

(C) Apple Music でオイストラフの名演「プロコフィエフ:ソナタ1番」が聞ける

Oistrakh
(C) Apple Music

検索キーワード:Prokofiev Sonata No.1 Oistrakh

Szymanowski: Violon Concerto, No. 1 / Chant de Roxane / Myths, Op.30 / Rosanne Philippens

Philippens

Szymanowski:
Violon Concerto, No. 1
Chant de Roxane
Myths, Op.30
Rosanne Philippens
NJO
Xian Zhang
2014年録音


【収録情報】
シマノフスキ:
● ヴァイオリン協奏曲第1番 Op.35
● ロクサーナの歌(歌劇『ロジェ王』 Op.46より/ヴァイオリンとピアノ版)
● 『神話』 Op.30
● 夜想曲とタランテラ Op.28

ストラヴィンスキー:
● ロシアの歌
● 『火の鳥』より『子守歌』『スケルツォ』(ヴァイオリンとピアノ版)

 ロザンヌ・フィリッペンス(ヴァイオリン)
 ジュリアン・クエンティン(ピアノ)
 オランダ・ナショナル・ユース・オーケストラ(協奏曲)
 シエン・チャン(指揮:協奏曲)

 SACD Hybrid
 CD STEREO/ SACD STEREO/ SACD SURROUND

(HMV.co.jp より)


シマノフスキ:ヴァイオリン協奏曲第1番のみについて言えば、ロザンヌ・フィリッペンスの演奏はポルタメントがなまめかしくセックスアピールは聞こえるが品がない。芯がない。自己満足。

それに対し、スクリデ盤は音楽の構成・楽想に適度に距離を置き、より見通しが良い。スクリデの演奏は、より骨太。迫力あり。やや粗いが、このシマノフスキの『無国籍音楽』 Vn 協奏曲第1番の美学を損なっていない。そして、スクリデ盤は「Vn 協奏曲第2番」の方がさらに良い演奏だと思う。

私は、この商品を私の環境 Mac OS X 10.9 Mavericks にて Apple Music を聞けなくなった時に購入。もし、これを Apple Music にて全曲試聴できたなら、私はこれを買わなかっただろう。


【譜例】

Szymanowski_vn_con_1_1

シマノフスキ:ヴァイオリン協奏曲第1番 Op.35 第1楽章 アインガング(midi

2017年9月28日 (木)

(C) Apple Music Irina Bogdanova / Donka Angatscheva / Natasha Paremski / Mona Asuka / Anastasia Huppmann / 高橋多佳子

Bogdanova
検索キーワード:Chopin Irina Bogdanova
雑です。買わない。




Angatscheva
検索キーワード:Liszt Donka Angatscheva
『ダンテ・ソナタ』は悪くないが『ロ短調ソナタ』に挑戦して欲しかった。買わない。




Paremski
検索キーワード:Prokofiev Natasha Paremski
私の苦手な曲ばかり演奏しているのでよく分からないが上手いと思う・・・しかし、ユーチューブで彼女の演奏を聴くと購入するほどではないと思った(汗;;
http://amzn.to/2wZk6yT




Natasha_paremski
検索キーワード:Tchaikovsky Natasha Paremski
理屈抜きのエンターテインメント・・・でも、アルゲリッチっぽい演奏は飽きた・・・ラフマニノフは良く分からない・・・ので買わない。




Mona_asuka
検索キーワード:Schubert Mona Asuka
意外に上手いけど、選曲が私の好みに合わないので買わない。




Anastasia_huppmann
検索キーワード:Chopin Anastasia Huppmann
《英雄ポロネーズ》は良かったが他の曲がイマイチ。買わない。
http://amzn.to/2yv17gY




Takahashi
検索キーワード:高橋多佳子
この人のショパンはベテランの味がする。6枚組のショパン集を出しているので、思い切って買ってみようか。
http://amzn.to/2k5zJn7

2017年9月18日 (月)

Live from Lugano 2016 Martha Argerich & Friends

Lugano

Live from Lugano 2016
Martha Argerich & Friends


【収録情報】
Disc1
1. ラヴェル:夜のガスパール
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)

2. ブゾーニ:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 op.35a、BV243
ルノー・カプソン(ヴァイオリン)
アレクサンドル・ヴェデルニコフ指揮、スイス・イタリア語放送管弦楽団

3. モーツァルト:2台ピアノのためのソナタ ニ長調 K.448/375a
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)、セルゲイ・ババヤン(ピアノ)

4. ファリャ:2つのスペイン舞曲(歌劇『はかなき人生』より)
セルジオ・ティエンポ(ピアノ)、カリン・レクナー(ピアノ)

Disc2
1. ラヴェル:ピアノ協奏曲ト長調
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
アレクサンドル・ヴェデルニコフ指揮、スイス・イタリア語放送管弦楽団

2. ベートーヴェン:合唱幻想曲 op.80
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
ディエゴ・ファソリス指揮、スイス・イタリア語放送管弦楽団&合唱団

3. ブラームス:ホルン三重奏曲変ホ長調 op.40
ニコラ・アンゲリッシュ(ピアノ)
ルノー・カプソン(ヴァイオリン)
ダヴィッド・ゲリエ(ホルン)

Disc3
1. ベルク:ピアノ、ヴァイオリンと13管楽器のための室内協奏曲
ニコラ・アンゲリッシュ(ピアノ)
ルノー・カプソン(ヴァイオリン)
ブルーノ・グロッシ(フルート)
マウリツィオ・シメオリ(ピッコロ)
パオロ・ベルトラミーニ(クラリネット)
コッラド・ジュフレディ(クラリネット)
ステファノ・フランチェスキーニ(フルート)
マルコ・スキアヴォン(オーボエ)
フェデリコ・チコリア(オーボエ)
アルベルト・ビアーノ(バスーン)
ステファノ・センプリーニ(ヴァイオリン)
リカルド・セラーノ(ホルン)
ヴィットリオ・フェラーリ(ホルン)
イヴァーノ・ビュアート(トランペット)
フロリアーノ・ロシーニ(トロンボーン)
エレーナ・シュワルツ(指揮)

2. J.S.バッハ:ヴァイオリン・ソナタ ト短調 BWV.1017
テディ・パパヴラミ(ヴァイオリン)
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)

3. ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲(ドビュッシーによる2台ピアノ版)
スティーヴン・コワセヴィチ(ピアノ)、マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)

4. マルセロ・ニシンマン[1970-]:オンブレ・タンゴ
アンサンブル・レンクエントロス

録音時期:2016年6月
録音場所:イタリア、ルガーノ
録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)

(HMV.co.jp より)


Disc1
「夜のガスパール」は、かろうじて『ヒビの入った骨董品』のそしりを免れている。
「ブゾーニ:ヴァイオリン協奏曲」は、ルノー・カプソンの弾くヴァイオリンの音がとても美しい(第1楽章アインガングなど)・・・しかもカプソンの技巧が冴えてる。

Disc2
「ベートーヴェン:合唱幻想曲」は名演だと思う・・・ベートーヴェンを得意とするアルゲリッチの価値ある録音だと思う・・・ところで改めて聴いてみると、この作品は「ラプソディー」っぽい・・・。

Disc3
「ベルク:ピアノ、ヴァイオリンと13管楽器のための室内協奏曲」は、ニコラ・アンゲリッシュ(ピアノ)ルノー・カプソン(ヴァイオリン)及びエレーナ・シュワルツ(指揮)が、ベルクの難曲を上手くさばいていると思う。ここでもルノー・カプソンが冴えている。引き締まった怪演・快演ではないが、私はこの演奏が気に入った。

マタイ受難曲の有名なアリア《わが神よ、憐れみたまえ》に転用された「バッハ:ヴァイオリン・ソナタ ト短調」(第1楽章、シチリアーノ)は雄弁ではないが滑らかな演奏(←シェリング&ヴァルヒャのように)。←アルゲリッチの控えめな演奏が、かえってヴァイオリンを盛り上げている。対照的に同曲第2、4楽章のフーガはジャズのインタープレイの様。アルゲリッチはやっぱり根っからのバッハ弾きだ(!)。

(C) Apple Music Prokofiev: Works for Violin & Piano Franziska Pietsch (violin), Detlev Eisinger (piano)

Franziska_pietsch
(C) Apple Music 検索キーワード:Franziska Pietsch

注文してしまった(汗;;)。

ドイツ出身のヴァイオリニスト、フランチスカ・ピーチ。
(C) Apple Music で聴く限り、正直言って、この人は上手いのかどうか分からない。
夜の歌を聴かせるかと思うと、昼の光に照らされた技巧を聞かせる・・・。
しかし少なくとも、彼女の演奏には、プロコフィエフ的でないと、言われたくないというモチベーションを感じる。


【収録情報】
プロコフィエフ:
● ヴァイオリン・ソナタ第1番ヘ短調 Op.80 [29:24]
● ヴァイオリン・ソナタ第2番ニ長調 Op.94b [25:11]
● 5つのメロディ Op.35b [14:03]

 フランチスカ・ピーチ(ヴァイオリン/1751年製テストーレ)
 デトレフ・アイシンガー(ピアノ/シュタイングレーバー)

 録音時期:2015年11月23-25日
 録音場所:ベルリン、イエス・キリスト教会
 録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)

(HMV.co.jp より)

2017年9月12日 (火)

(C) Apple Music Chopin: Piano Works Melody Fader

この人は、とちったような演奏をするが、品格、風格がある・・・少し巨匠じみている。理屈抜きに気に入った・・・いや、この人は理にかなった演奏をしているかも知れない。

ところが、この商品はアマゾンJPで売ってない;;

HMV.co.jp では売ってるが、会員価格(税込):¥2,772。高いな〜。買おうかどうしようか;;


【HMV.co.jp へのリンク】

Piano Works: Melody Fader
ショパン (1810-1849)


Melody_fader
(C) Apple Music 検索キーワード:Melody Fader

2017年9月 8日 (金)

【メモ】 トリスタンとイゾルデについての覚え書き/書き直し

ワーグナー作曲 楽劇『トリスタンとイゾルデ』を鑑賞するにあたって押さえておきたいことを箇条書きします。

【前置き】

要するにこのオペラは誰がイングランドとアイルランドの王位・家督を継ぐか、その跡目争い(あるいは御家騒動?)の物語だと見ることができよう。というのもこのオペラの背景にはイングランドとアイルランドいずれもお世継ぎが決まっていないという事情が在るからだ。

1. トリスタンは孤児。イゾルデはプリンセス(!)
トリスタンは孤児でありイングランドの正当な王位継承権者ではなかった。トリスタンはマルケ王の従僕(der Knecht)であり且つよそ者である。そのことはイングランドの臣民たちも認識していたと思う。トリスタンはマルケ王の「おい」であるはずだがその証拠はない。分かりやすく言ってトリスタンは何処の馬の骨か分からない男である。それに対しイゾルデはアイルランドの「プリンセス(!)」。彼女がアイルランド王家において男子を出産すればその子はアイルランドの正当な王位継承権者となるだろう・・・すなわちイゾルデは女主人(die Herrin)でありトリスタンは従僕(der Knecht)。そのことによって第1幕におけるイゾルデはトリスタンをひどく見下している。またトリスタンはイゾルデに対して強いコンプレックスを抱いている。

2. 政略結婚(1)
イゾルデとマルケ王の結婚は政略結婚である。そしてそれはイングランドとアイルランドとの不仲(争い)を和解させ得る。もしイゾルデがマルケ王の男子を産めばその子はイングランドとアイルランドを和解させ両国を統治する王となるかも知れない(しかし一般的に女性にとって「政略結婚」ほど屈辱的なことはないだろう)。

3. 政略結婚(2)
もしイゾルデがマルケ王に嫁ぐためにイングランドに向かう船上でトリスタンを毒殺すればその「政略結婚」はおじゃんになる。それはイゾルデにとって本意であったか不本意であったか。それを我々は言い得ないだろう。
イゾルデの本意はとにかくトリスタンとセックスすること(!)。私は、第1幕第5場にてイゾルデとトリスタンが二人だけになった時にかわされる二人の「ねちっこい会話」を聴くとイゾルデがトリスタンに「さっさと私とセックスしなさいよ」と言っているように聞こえる・・・少なくとも私にはそう聞こえる。
しかもイゾルデの欲求は性欲の最大の充足である不倫である。トリスタンもまた第1幕においてその不倫の一歩手前まで来ている。

問:あの〜、トリスタンが、イゾルデをめとることはできなかったのですか?
答:いや、それはできない:なぜなら、トリスタンとイゾルデの身分が違い過ぎるから。

4. イゾルデが求めたのは「マルケ王との婚姻を前提とした裏切り(!)」
第1幕、イゾルデは(識別できるように)印をつけた死の薬(毒薬)をブランゲーネに持って来させる(それをトリスタンと二人で飲むためである)。イゾルデはブランゲーネに「死の薬を持って来い」と命じるが果たしてそれが「毒薬」であったか「愛の妙薬」であったかは重要ではない。
イゾルデの目的はトリスタンにマルケ王を裏切らせることだった・・・そして、イゾルデとトリスタンが「同じ杯から薬を飲むという行為そのもの」が(その薬が毒であれ媚薬であれ)結果としてイゾルデとトリスタンによるマルケ王への裏切りだ(!)。その杯の中身は何でも良い。

<--- 引用 ココから ウィキペディアより --->

「ワーグナーの台本に特徴的なもののひとつに『媚薬』がある。伝説では脇役的な意味でしかなかった媚薬を、ワーグナーは本作で二人が『死の薬』と信じてあおる設定とした。このために愛は死の中にのみ実現可能という、『愛=死』の強いメッセージを込めることに成功している。これについて、トーマス・マンは『このとき二人は水を飲んでもよかったのだ』と述べている。また、ヴィーラント・ワーグナーは、本作の媚薬は『以前から存在していた愛情を舞台上に視覚化する契機』であり、媚薬が情熱の告白の一歩前にいた二人を告白に踏み切らせたとする」

<--- 引用 ココまで ウィキペディアより --->

5. イゾルデが求めたのは「トリスタンとの不倫」(再び)
二人が飲んだ薬は肉体的死をもたらすものではなく精神的死(理性・道徳・倫理・正義の死)をもたらすものである。つまりその媚薬は二人に「しきたりの中で生きること」をやめさせ愛の死に追いやる。愛と死がイコールでつながる。それがこのオペラの重要なテーマだ。
「薬」を二人が一緒に飲むことは二人を性の欲動へと駆り立てる。そのきっかけだ。

6. 第1幕冒頭、イゾルデの狂乱
このオペラの第1幕冒頭のイゾルデの狂乱は『神々の黄昏』においてブリュンヒルデがジークフリートに裏切られたことを知ったときの狂乱に似ている。ただし両者は「文脈(前後の筋書き)」が違う。両者の違いは、イゾルデの場合、イゾルデの狂乱の理由が当初「聴衆」にはまったく分からない。それに対しブリュンヒルデの場合、彼女の狂乱は楽劇『ニーベルングの指輪』の最も重要なモチーフである「指輪の呪い」がもたらしたことであるのを「聴衆」は知っている。

7. 淫らなドラッグ
しかしながらトリスタンたちが飲んだ「愛の妙薬」もジークフリートが飲んだ「忘れ薬」も「目の前に居る異性を愛せ!」・・・という淫らな行為に陥れるドラッグだ。そしてそれは「聴衆」をもめろめろにさせ・・・また「聴衆」をも愛の享楽・快楽へと導く。トリスタン、イゾルデ、ジークフリートが飲んだ液体はワーグナーが発明した最も淫らなドラッグだ。

8. トリスタンの後見人クルヴェナールは『タントリスの件』を知っていた
『タントリスの件』とはかつてイゾルデが彼女の婚約者モーロルトを殺した「仇」であるトリスタンに一目惚れし瀕死のトリスタンを救命し解放したというエピソードである(第1幕にてイゾルデによって語られる)。
クルヴェナールは、第3幕で、イゾルデを「die Ärztin(女医者)」と呼び、彼は彼女を「昔、あなたがモーロルトから受けた傷をとざした方(第3幕第1場)」と呼ぶ。つまり、クルヴェナールは『タントリスの件』を知っていた。
にもかかわらず、クルヴェナールは第1幕で「トリスタンの命の恩人であるイゾルデ」を侮辱する歌を歌う(クルヴェナールはバカである)。

9. クルヴェナールはトリスタンとイゾルデが愛しあっていることをも知っていた(?)
クルヴェナールはもしかしてトリスタンとイゾルデが愛しあっていることをも知っていた。そうでなければ彼は第3幕でイゾルデをわざわざトリスタンの下(もと):カレオール(トリスタンの故郷。ブルターニュ半島、フランス)に呼んだりしない。

10. クルヴェナールはくせ者
このオペラにおいてワーグナーはクルヴェナールを愚者として描いているように私には思える。なぜならクルヴェナールは『タントリスの件』『トリスタンとイゾルデの愛』を知っていながらトリスタンとイゾルデが陥ったジレンマを解決しようとしない(!)。彼は傍観者である。

11. トリスタンがマルケ王にイゾルデの秘密をばらしたというのは真実か?
トリスタンがマルケ王にイゾルデをめとるようにすすめたとき「トリスタンはマルケ王に『タントリスの件』をばらした」と言ってイゾルデはトリスタンを責める(第1幕第5場)。すなわちイゾルデはトリスタンが秘密にすべき『タントリスの件』を第三者(マルケ王)にばらしたと言ってトリスタンを責める:「憎むべきトリスタンは口が軽い男であり、恩を仇で返す裏切り者だ(!)」と。
とにかく『タントリスの件』はイゾルデにとって極めて重大な秘密であり、それは彼女にとって恥辱なのである。その秘密をトリスタンが第三者に漏らしたのであれば、それは死をもってつぐなわなければならないトリスタンの裏切り(!)。

12. トリスタンがマルケ王にイゾルデの秘密をばらしたというのはイゾルデの妄想か?
しかし、そもそもトリスタンが『タントリスの件』をマルケ王にばらしたというのは本当のことなのだろうか・・・あるいはそれはイゾルデの妄想か(?)・・・いずれにしても重要なことはトリスタンとイゾルデの『タントリスの件』に対する《認識のずれ》《思惑の違い》である:トリスタンにとって『タントリスの件』はイゾルデをマルケ王にめとらせるための「方便」に過ぎない・・・が、イゾルデにとってそれは「トリスタン暗殺の動機」である。

13. そもそも『タントリスの件』は公然の秘密だったのかも知れない
思うに『タントリスの件』はこのオペラの第1幕が始まる前からそもそも「公然の秘密」だったのかも知れない。

14. トリスタンがマルケ王にイゾルデとの結婚をすすめたもう一つの理由(?)
たとえば『風と共に去りぬ』のスカーレットがメラニーの兄と結婚したのはアシュリーに接近するためだった。つまりスカーレットがメラニーの兄と結婚すればそのことでスカーレットはメラニーの義理の姉になる・・・そのことでスカーレットはメラニーの夫アシュリーに接近できる。トリスタンの場合も上記と同じ事が言えると思う:すなわち、イゾルデがマルケ王と結婚すればトリスタンはマルケ王の妃イゾルデに仕えることができる。そのことでトリスタンはイゾルデに接近できるというわけだ。

15. 「トリスタン和音」(1)
「トリスタン和音」=愛し合っているが結ばれない=ワーグナーが一番言いたかったことはこれだろう。
ワーグナーは二人の主人公だけではなくこのオペラの「聴衆」をも現実から遠ざけさせる・・・ワーグナーは「聴衆」の《死や裏切りに対する免疫》を高める・・・トリスタン和音は「聴衆」をめろめろにさせ享楽・快楽へと導く。
繰り返すがトリスタンとイゾルデが愛の媚薬を飲むときにオーケストラによって演奏される「トリスタン和音」は「聴衆」の《裏切りや姦淫や死に対する免疫》を高める。トリスタンとイゾルデが飲んだ「媚薬」はジークフリートが飲んだ「忘れ薬」と同じ物である(すなわちジークフリートも忘れ薬を飲んだあとすぐにグートルーネに惚れてしまう:それは惚れ薬!)。
その「忘れ薬(愛の媚薬)」がトリスタンをしてイゾルデに対するコンプレックスを忘れさせ、イゾルデをしてプライドを忘れさせる。そしてその忘れ薬が「聴衆」をして日常性を忘れさせる。

16. 「トリスタン和音」(2)
だがトリスタンとイゾルデはまだ十代の少年少女である。この作品のストーリーは十代の少年少女の恋愛ごっこ、あるいはスキャンダルなのである。「落ち」をつければ、このオペラのストーリーは十代から二十代に我々が経験する恋愛ごっこ・・・それがトンデモナイ災いになってしまった(!)。
ただし下記のトリスタン和音だけは本物(!)。その和音はワーグナーとヴェーゼンドンク夫人が陥った危機から生まれた(!)。ワーグナーはその危機を作品に託し昇華した。


Tristan_chord

トリスタン和音(midi)

2017年9月 5日 (火)

ヘルムート・ヴァルヒャ/バッハ:鍵盤楽器作品集(1958-1962年録音)

Walcha

J. S. Bach:
Keyboard Works
Helmut Walcha
1958-1962年録音


【収録情報】

CD 1
● インヴェンションとシンフォニア BWV.772-801(全曲)1961年録音

CD 2-3
● イギリス組曲 BWV.806-811(全曲)1959年録音

CD 4-5
● フランス組曲 BWV.812-817(全曲)1962年録音

CD 6-7
● パルティータ集 BWV.825-830(全曲)1958年録音

CD 8-9
● 平均律クラヴィーア曲集 第1巻 BWV.846-869(全曲)1961年録音

CD 10-11
● 平均律クラヴィーア曲集 第2巻 BWV.870-893(全曲)1961年録音

CD 12
● イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV.971(1960年録音)
● 半音階的幻想曲とフーガ ニ短調 BWV.903(1960年録音)
● フランス風序曲 ロ短調 BWV.831(1960年録音)

CD 13
● ゴルトベルク変奏曲 BWV.988(1961年録音)

 ヘルムート・ヴァルヒャ(アンマー・チェンバロ)

 録音時期:1958-1962年
 録音場所:ハンブルク、ブランケネーゼ
 録音方式:ステレオ(アナログ/セッション)
 2003年リマスター音源使用

(HMV.co.jp より)


【前置き】

「使用楽器は旧東ドイツのアンマー社製(アンマー・チェンバロ)。この楽器は、ノイペルト等より、弦の張力が弱く、モダン・チェンバロとしては、ヒストリカル・チェンバロに近い楽器である。しかし、EMI に録音されたヴァルヒャのバッハは、CD 盤で聴くと音が金属的でうるさい。だが、アナログ盤では、アンマー・チェンバロ本来の美しい音を聴くことができる」

すなわち「ヘルムート・ヴァルヒャが弾いた『アンマー・チェンバロ(Ammer)』は、モダン・チェンバロなので音が金属的でキンキンして美しくない」という先入観をお持ちの方があるが、それは間違い。

私はヴァルヒャの《平均律全巻》旧盤=『アンマー・チェンバロ』盤=アナログ・レコード盤を持っていたが、それを他の演奏者が弾くヒストリカル・チェンバロと比較したとき、前者は後者に劣らず耳障りが良かった。
(↑ちなみにそのヴァルヒャ平均律旧盤アナログ盤は非常に状態が良いものであったが、2009年、私の自宅の全焼火災により焼損したので今は無い)

私が所有していたヴァルヒャの《平均律全巻》旧盤=アナログ盤の音は、この商品すなわち『ヴァルヒャ/バッハ:鍵盤楽器作品録音集[CD-DA 盤](ASIN: B071LRS4YS)』より弦が緩やかに張られているように聞こえた、と私は記憶する。

そして、私が所有していたヴァルヒャの《平均律全巻》旧盤=アナログ盤の音は、ある意味もっと金属音が鳴っていたと思う・・・そしてその金属音は耳障りが良かった。←その金属音のリアルな音が快かった。←よってこの商品(ASIN: B071LRS4YS)のデジタル・リマスターにおいても、もっと「金属音」(高音域)を生かして欲しかった。

※ ちなみに私は、或るチェンバロ奏者、兼、チャンバロ制作に関わっていらっしゃる方から「ヴァルヒャが弾いた『アンマー・チェンバロ』の音はヒストリカル・チェンバロの音に近い」という事実を確認しました(!)。

【本文】

このヘルムート・ヴァルヒャ/バッハ:鍵盤楽器作品録音集[CD-DA 盤]を聴くと、ヴァルヒャという人は情熱的な(あるいは熱い)演奏をする人であったことが分かる(フランス組曲第1番、イギリス組曲第6番の Prélude)。また、あえて言えば、ヴァルヒャの弾く「パルティータ第4、5番」などは即興的でもある。インヴェンション、ゴルトベルク変奏曲において、ヴァルヒャはエンターテインメントに徹しているように聞こえる。CD 12 は『イタリア協奏曲』の第3楽章『半音階的幻想曲とフーガ』も良いが『フランス風序曲』が良い。

【問題は平均律】

ヴァルヒャの弾く《平均律第1巻》の後半が良くない:後半、嬰ヘ長調の前奏曲は突如テンポが速くなる。ト短調の前奏曲のテンポも速い。←それらは意味がないと私は思う。←そのテンポ設定は『即興』ではないと思う。つまり即興的効果はないと思う。←不自然。←イ短調のフーガ、最後のフーガ(ロ短調)は素晴らしい。←だが軽快な変ロ長調から重々しい変ロ短調そして美しいロ長調への解釈・流れが良いのか、どうかは微妙。ヴァルヒャの《第1巻》後半はやっぱり流れが悪いと私は思う(まさかヴァルヒャにとって平均律第1巻の後半は鬼門だったか?)。

ヴァルヒャの弾く《平均律第2巻》は《第1巻》より良い。←躍動的!←解釈も良いと思う。←ホ長調の前奏曲とフーガは美しいではないか(!)。嬰ヘ短調のフーガはスリルがあり、ト長調のフーガは軽快である。嬰ト短調、変ロ短調のフーガは精緻であると思う。←ただしこの《平均律第2巻》もテンポの設定に幅がある・・・が問題ないと思う。


【関連記事】

中古LPレコード購入記/ウェブリブログ 過去ログより転記(2004-5-24/2005-11-8)/これらはすべて火災で焼損しましたの下のほうをご参照下さい。

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