2015年7月28日 (火)

Apple Music、驚いたことに、私の好きな Vanessa Benelli Mosell もある

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2015年7月 5日 (日)

ヴァネッサ・ベネリ(ベネッリ)・モーゼル、デッカからメジャーデビュー(?!) plays シュトックハウゼン、カロル・ベッファ (1973 - ) 、ストラヴィンスキー

Mosell

[R]evolution:

Karlheinz Stockhausen (1928 - 2007)
8 Klavierstücke

Karol Beffa (1973 - )
Suite

Igor Fyodorovich Stravinsky (1882 - 1971)
Trois mouvements de Petrouchka

Vanessa Benelli Mosell, piano
2014年録音
DECCA

【収録情報】

Karlheinz Stockhausen (1928 - 2007)

01. Klavierstück I [3.04]
02. Klavierstück II [1.52]
03. Klavierstück III [0.38]
04. Klavierstück IV [2.08]
05. Klavierstück V [5.31]
06. Klavierstück VII [6.55]
07. Klavierstück VIII [2.16]
08. Klavierstück IX [10.46]

Karol Beffa (1973 - )

Suite pour Piano ou Clavecin (2008)
09. "La volubile"(おしゃべりの、早口の)[1.52]
10. "La ténébreuse"(暗い、陰鬱な)[3.15]
11. "La déjantée"(はずれる、乱れる)[4.01]

Igor Fyodorovich Stravinsky (1882 - 1971)

Trois mouvements de Petrouchka
12. Danse Russe「ロシアの踊り」[2.28]
13. Chez Petrouchka「ペトルーシュカの部屋」[4.30]
14. La Semaine Grasse「謝肉祭」[8.33]

Total time 58.06

【私の評価】

星4つ。

【前置き】

2枚のアルバム(ハイドン、リスト、スクリャービン、プロコフィエフおよびリスト:ピアノ独奏曲集)を「Brilliant Classics」より発売後、ヴァネッサ・ベネリ(ベネッリ)・モーゼルが、デッカからメジャーデビュー(?!)。
このアルバムを、私はとても気に入った。ただし、私が気に入ったのは、シュトックハウゼンのみ。

【感想】

・シュトックハウゼン「8つのピアノ曲集」

このアルバムのメインは、シュトックハウゼンだと思う。
作品群、シュトックハウゼン:「8つのピアノ曲集 Klavierstück I - V, VII - IX」
これは、モーゼルが、晩年のシュトックハウゼンに招かれ、彼女が、シュトックハウゼンのもとで、ドイツにて学んだ作品群であり、その際、彼女が弾いた「Klavierstücke」は、批評家の高い評価を得た【注1】。それだけに、このアルバムにおいて、モーゼルが弾く「シュトックハウゼン」からは、彼女の自信と確信がうかがえる。彼女の打鍵は強い。この作品群を大音量で聴くと快い。多分、故意にそうしたのだろうが、この作品群の録音は若干オンマイク気味。そして、曲の終わりの持続音がえらく長い曲がある!←たとえば第1曲。

彼女の強烈な打鍵を大音量で聴くと、私は、マゾヒスティックな快感を覚える。その理由は、おそらく、彼女の《強烈》かつ《的確》な打鍵に、また、彼女の明快さ、若さ、良い意味での未完成さに、私の鈍感な感性でさえも触発され、いや、えぐられ、彼女の「技」に飲み込まれてしまうから、だろう。

シュトックハウゼン:「8つのピアノ曲集 Klavierstück I - V, VII - IX」の作風は、シェーンベルクのピアノ独奏曲に、少し似ていると思う(無調。特殊奏法は無い)。ただし、「シェーンベルク」と「シュトックハウゼン」を比較すると、前者が、後者に比して、より情緒的であるのに対し、後者は技巧に走っていると感じる(そして、後者は前者よりアグレッシヴ)。しかし、「シュトックハウゼン Klavierstück I - V, VII - IX」の魅力は、勿論「技巧」だけではない。この作品群には味がある。それは、たとえば、ハーディ・リットナーの弾くシェーンベルクが《美しく端正》であるとすれば【注2】、モーゼルのシュトックハウゼンには、《力(りき)》があり《元気》がある。彼女の演奏の特長は、ストレートであることと、「生きのよさ」であろう(←デュナーミク・アーティキュレーションにおいて)。そして、彼女の「シュトックハウゼン」における、デュナーミクやアーティキュレーションは、彼女が作曲者シュトックハウゼンから教授された「音」だけではなく、その「生きのよさ」において、「彼女自身の自己主張・解釈」を含むかも知れない。

HMV.co.jp の商品レビューに、「彼女らしいポジティブなプログラムによって、推進力のある音楽を体感いただけます。(ユニバーサルIMS)」とあるが、それは、このアルバムを批評するに、的を射ていると思う。すなわち、モーゼルは、プログラムのオープニングに、アグレッシヴ・難解・技巧的なシュトックハウゼンの作品を持ってきて、それを、真正面から、ストレートに弾くことによって、その演奏を成功させ、それを、このアルバムの「推進力」にした。

英語版ウィキペディアの詳細な記事によると、シュトックハウゼン:「8つのピアノ曲集(この曲集は、本来、全部で19曲、あるいは、21曲書かれた。ココに取り上げられた「Klavierstück I - V, VII - IX」は、主に、1950 - 60年代頃に書かれた作品のようだ)」は、論理的に難解で複雑な作品群である。だから、私は、この作品群をアナリーゼできない・・・にもかかわらず、私が、モーゼルのパフォーマンスは、「シュトックハウゼン:Klavierstück I - V, VII - IX」の魅力を引き出していると感じる理由・・・それは、この作品群が持つ魅力の一つである楽想の変化、そして、その変化の「面白さ」「奇麗さ」または「クールさ」を、モーゼルが、作品から引き出しているからだろう。

モーゼルの弾く「シュトックハウゼン Klavierstück I - V, VII - IX」は、「難しく聴くより、難しく聴かないほうが良い」と思う。なぜなら、モーゼルの演奏は、(変な表現だが)初心者向きであり、新鮮であり、聴く者に、容易に満足感と快感を与える、ある種のシュトックハウゼン入門盤だからである。やっぱり彼女は、うまい。ただ者じゃない。

【注1】英語版ウィキペディアには、シュトックハウゼンのモーゼルへの賛辞が紹介されている:「私の音楽をリスナーに正しく理解させる力を持つ "(she) has the power to let people appreciate my music"」

【注2】ハーディ・リットナーのシェーンベルク:ピアノ独奏曲全集を、聴き直してみたら、コレは、必ずしも悪い演奏ではないと私は感じた。

・フランスの若い作曲家カロル・ベッファ (1973 - ) の「ピアノまたはクラヴサン(チェンバロ)のための組曲」

ベッファのこの作品は、シュトックハウゼンやストラヴィンスキーの作品のような巨匠的マスターピースではないが、この作品は、第3曲にジャズを取り入れたりした聞きやすい佳作である(←例によって、モーゼルの健康的な表現と技巧が聞ける)。「この作品は、2008年に作曲された作品であり、エレガント、かつ、インターラプトされないアルペジオのシークエンスに基づいている。His Suite for piano or harpsichord was composed in 2008 and is based on an elegant, uninterrupted sequence of arpeggios.」とリーフレットに書いてあるが、そのアルペジオは、第1曲のみに聞こえる?!

・ストラヴィンスキー「ペトルーシュカからの3楽章」

私は、ストラヴィンスキーは苦手なので、よく分からないが、たとえば、ポリーニとモーゼルの「ペトルーシュカからの3楽章」を比較した場合、前者のほうに、「古いタイプのヴィルトゥオージティ」が聞こえるが、両者の演奏は、そのポリーニのヴィルトゥオージティによって、ポリーニに軍配が上がると思う。

モーゼルの演奏は技巧的に余裕がなく、散漫な演奏と言ってしまっていいかも知れない。ポリーニの演奏は、(変な言い方だが)アルゲリッチ的メリハリやスリルに富む。そして、主題もテクチュアもよく聞こえる。モーゼルの「ペトルーシュカ」は、たとえば、第3楽章は盛り上がるが、その楽章において、彼女は、おそらく全てを語り尽くすことなく、あっけなく終わる。つまり、モーゼルも、なかなか技巧を聞かせているが、ポリーニに比べれば、テクスチュアが見えにくく、原曲の主題・旋律が聞こえづらいと思う。

モーゼルは、「ペトルーシュカ」において「外した」つまり「失敗した」と思う。これは、選曲ミスだ。彼女は、もう少し「ペトルーシュカ」を研究・練習して、そして、弾き込んでから、この曲にチャレンジすべきだったと思う。このアルバムにおいて、「ペトルーシュカ」は、オマケだと思う。すなわち、「ペトルーシュカからの3楽章」の収録の理由は、「誰でも知っている有名曲を1曲収録しないとこの商品は売れない」というレコード会社の要求に応じて取り上げられた、という感アリ。繰り返すが、このオマケは、選曲が悪かった。モーゼルは、もうちょっと易しい曲を選曲すべきだったと思う。

・最後に

それにしても、DECCA は、モーゼルに、(ショパンやシューマンじゃなく)シュトックハウゼンやカロル・ベッファというマイナーな(?)選曲・録音を、よくも許したもんだ・・・と思う・・・(←はっきり言って、このアルバムは、あまり売れないと思うよ)

・おまけ

例によって、モーゼルは、美人なので、リーフレットに彼女を被写体とした写真が複数掲載されている。

【追加】

モーゼルのシュトックハウゼンを聴いて「途中で退屈する」と思う人があるかも知れない。私も、これを、万人に薦められない。しかし、作曲者のシュトックハウゼン自身が、ヴァネッサ・ベネリ・モーゼルの弾くシュトックハウゼンの作品を、良いと言ってるのだから、やっぱり、これは良いのだろう。

--


Vanessa Benelli Mosell - STOCKHAUSEN: KLAVIERSTÜCKE
(C) VEVO(ヴィーヴォ)

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【2015−7−8 追加】

この人は、ラストネーム(Mosell)は、ドイツ系だし、下記動画では、彼女はロシア語を話している。彼女は、どんな生い立ちなのだろうか?

https://youtu.be/A0UgQfgbfTc

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【2015−8−20 追加】

上の動画を見る限り、Vanessa Benelli Mosell は、思ったより小柄で、手は大きくないし、腕の筋肉も発達していないようだ。すなわち、いわゆる、ヴィルトゥオーザではないようだ。そんな彼女が、今後、何をやってくれるか、期待したい・・・否、期待半分、心配半分である。

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