2014年9月24日 (水)

イトカ・ホスプロヴァーのヒンデミット

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Hosprova

Paul Hindemith (1895-1963)
Music for Viola
Jitka Hosprova, viola
Jitka Cechova, piano
Prague Chamber Orchestra
2014年録音
SUPRAPHON

【収録情報】

Sonata for Viola and Piano Op. 11 No. 4 (1919) [18:41]
01. I. Phantiasie ファンタジー [3:19]
02. II. Thema mit Variationen 主題と変奏 [4:31]
03. III. Finale (mit Variationen) フィナーレと変奏 [10:51]

Sonata for Viola Solo Op. 25 No. 1 (1922) [14:10]
04. I. Breit. Viertel 広がりをもって、四分音符(あるいは4分の4拍子) [1:59]
05. II. Sehr frisch und straff (Viertel) 非常に溌剌かつ張りつめて (四分音符)[2:03]
06. III. Sehr langsam 非常に遅く [4:36]
07. IV. Rasendes Zeitmaß. Wild. Tonschönheit ist Nebensache 疾走するテンポで。野性的に。音の美しさを気にせずに [1:32]
08. V. Langsam, mit viel Ausdruck 遅く、表情豊かに [3:59]

Sonata for Viola Solo Op. 11 No. 5 (1919) [20:10]
09. I. Lebhaft, aber nicht geeillt 生き生きと、しかし、急がずに [3:16]
10. II. Mäßig schnell, mit viel Wärme vorgetragen 速く、ただし節度をもって、大いに温かみをもって演奏すること [3:46]
11. III. Scherzo. Schnell スケルツォ、速く [3:28]
12. IV. In Form und Zeitmaß einer Passacaglia. Das Thema sehr gehalten パッサカリアの形式とテンポで、主題を大いに保って [9:35]

Trauermusik for Viola and String Orchestra (1936) [7:48]
13. I. Langsam. Lento 遅く、レント [3:38]
14. II. Ruhig bewegt. Poco mosso 静かな動きで、少し速く [0:46]
15. III. Lebhaft. Vivo 生き生きと、速く [1:18]
16. IV. Choral Vor deinen Thron tret ich hiermit. Sehr langsam. Largo コラール「われ汝の御座の前に進み出て」、非常に遅く、ラルゴ [2:05]

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結論から言うと:
1
もしかしたら録音が新しいせいか、カシュカシャン盤よりホスプロヴァー盤の方が、ヴィオラらしい音が聞ける。特に、大音量で聞くと、ヴィオラの迫力が伝わってくる。とにかく、ホスプロヴァーが弾くヴィオラは、ド迫力がある。
2
カシュカシャンの繊細さに比べ、ホスプロヴァーは大味で粗い。だが、ホスプロヴァーが弾くヴィオラは、その「音量」「低音の豊かさ」、彼女の奏法における「鋭さ」「迫力ある重音」が良い。また「彼女のヴィオラの響きは、チェロっぽい」と思わせられるところが良い。しかし、コノアルバムは、彼女のデビュー盤「モノローグ〜20世紀チェコの無伴奏ヴィオラ作品集 ホスプロヴァー」に比べるとインパクトが弱いと思う。すなわち、彼女のデビュー盤のほうが、彼女の個性にマッチしていたと思う。

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・第1曲「作品11の4」(1919年)
カシュカシャンより演奏時間が長い。そして、テンポの揺れが大きいようだ。
「モノローグ〜20世紀チェコの無伴奏ヴィオラ作品集 ホスプロヴァー」で書いた通り、ホスプロヴァーは手が大きく指が長い。ソノこと(彼女のヴィオリストとしての有利な点)を含め、彼女のビブラートのかけ方、音量、テンポの揺れなどにより、彼女はヴィオラの特性を生かしていると思う。そして、このソナタ「作品11の4」の冒頭の響きはチェロっぽいと言ってもいいかも知れない・・・私は、そう思う。ソレは私の好みに合う。

・第2曲「作品25の1」(1922年)
第2楽章『III. Sehr langsam 非常に遅く [4:36]』および第5楽章『V. Langsam, mit viel Ausdruck 遅く、表情豊かに [3:59]』(いずれもテンポが遅い楽章):カシュカシャンより演奏時間が短い。それらの楽章は、ホスプロヴァーもまた朗々と弾いているのだが、《痛切さ》の表現においてはカシュカシャンのほうが繊細。
第4楽章『IV. Rasendes Zeitmaß. Wild. Tonschönheit ist Nebensache 疾走するテンポで。野性的に。音の美しさを気にせずに [1:32]』:その指示の通り、ホスプロヴァーは、音の美しさを気にせずにアクロバティックに疾走している。カシュカシャンの同楽章も迫力あるが、ホスプロヴァーのほうが、より荒々しく、より超絶技巧を感じさせる。

※両者の技巧は拮抗していると思うが、演奏法は、ホスプロヴァーのほうが技巧に重きを置いているように思える。

・第3曲「作品11の5」(1919年)
第4楽章「パッサカリア」:カシュカシャンより演奏時間が短い(カシュカシャンの10分59秒に対し、ホスプロヴァー9分35秒)。ホスプロヴァーは技巧に走っている。一方、カシュカシャンの演奏は、流れが良くしかも堂々たるパッサカリア。<すなわち、その点で、ホスプロヴァーのパッサカリアは、カシュカシャンのそれに負けると思う。
よく聞いてみたら、このパッサカリアの冒頭は、第1楽章の冒頭と同じ音形である(もしかしたら、このソナタ全体が、同一モチーフに基づいているのかも知れない)。

・第4曲「ヴィオラと弦楽合奏のための葬送音楽」(1936年)
第1曲と同様、おおらか、あるいは、自然体。
最終楽章はバッハのコラール「われ汝の御座の前に進み出て(BWV 668)」の「和声(harmonisation)」を引用している。

【参考/ユーチューブ】
J.S. Bach - BWV 668 - Vor deinen Thron tret' ich hiermit

2014年9月21日 (日)

キム・カシュカシャンのヒンデミット

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Hindemith

Paul Hindemith (1895-1963)
Sonatas for Viola/Piano
And Viola Alone
Kim Kashkashian, viola
Robert Levin, piano
1985/86年録音
ECM

【収録情報】

Disc 1

Sonata for Viola Solo Op. 31 No. 4 (1924)
01. Äußerst lebhaft この上なく生き生きと [3:19]
02. Lied - Ruhig, mit wenig Ausdruck 歌曲 - 静かに、ほとんど無表情に [4:11]
03. Thema mit Variationen: Schnelle Viertel - Langsam - Ziemlich lebhaft 主題と変奏: 速い4分音符で - 遅く - かなり生き生きと [10:37]

Sonata for Viola Solo Op. 25 No. 1 (1922)
04. Breit Sehr frisch und straff 広がりをもって、非常に溌剌かつ張りつめて [3:46]
05. Sehr langsam 非常に遅く [5:54]
06. Rasendes Zeitmaß. Wild. Tonschönheit ist Nebensache 疾走するテンポで。野性的に。音の美しさを気にせずに [1:31]
07. Langsam, mit viel Ausdruck 遅く、表情豊かに [5:03]

Sonata for Viola Solo (1937)
08. Lebhafte Helbe 生き生きした2分音符で [4:01]
09. Langsame Viertel - Lebhaft (pizzicato) 遅い4分音符で - 生き生きと(ピチカート) [7:20]
10. Mäßig schnelle Viertel 速い4分音符で、ただし節度をもって [4:33]

Sonata for Viola Solo Op. 11 No. 5 (1919)
11. Lebhaft, aber nicht geeillt 生き生きと、しかし、急がずに [3:02]
12. Mäßig schnell, mit viel Wärme vorgetragen 速く、ただし節度をもって、大いに温かみをもって演奏すること [4:17]
13. Scherzo スケルツォ [3:32]
14. In Form und Zeitmaß einer Passacaglia パッサカリアの形式とテンポで [10:59]

Disc 2

Sonata for Viola and Piano Op. 11 No. 4 (1919)
01. Phantiasie ファンタジー [3:06]
02. Thema mit Variationen 主題と変奏 [4:01]
03. Finale mit Variationen フィナーレと変奏 [10:09]

Sonata for Viola and Piano Op. 25 No. 4 (1922)
04. Sehr lebhaft, markiert und kraftvoll 非常に生き生きと、際立つように、力強く [4:47]
05. Sehr langsame Viertel 非常に遅い4分音符で [4:00]
06. Finale, lebhafte Viertel フィナーレ、生き生きした4分音符で [5:12]

Sonata for Viola and Piano (1939)
07. Breit, mit Kraft 広がりをもって、力を込めて [7:10]
08. Sehr lebhaft 非常に生き生きと [4:40]
09. Phantasie ファンタジー [3:57]
10. Finale フィナーレ [7:25]

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赤字は、イトカ・ホスプロヴァーの「Paul Hindemith: Music for Viola」に収められている曲。

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私は、ヒンデミットが苦手だが、このカシュカシャンの「ヴィオラ曲集」は気に入った。カシュカシャン、イトカ・ホスプロヴァーともに、一長一短あるが、両者とも、いい演奏していると思う。

【カシュカシャン盤について】

・第1曲「作品31の4」(1924年)
カシュカシャンが、何故、「作品31の4」をコノアルバムの第1曲目に持ってきたか分かる。第1楽章、その常動曲、無窮動を思わせる楽章は、激しく東洋的。そして、それは、ヒンデミットが書いたヴィオラ曲の《充実》あるいは《充溢》を代表して言い表しているかのようだ。
第2楽章、カシュカシャンはテンポが遅い楽章がうまい。
第3楽章、このアルバムにおける他の《変奏曲》が、わかりにくいものであるのに対し、コノ第3楽章「主題と変奏: 速い4分音符で - 遅く - かなり生き生きと」は分かりやすい。第8変奏に行くあたり(4分8秒のあたり)で音楽が止まり、遅いテンポの変奏に行く。遅い変奏のあと、速い変奏「かなり生き生きと」に戻る。カシュカシャンが弾く第3楽章は、当初、冗漫に聞こえたが、よく聴いてみると確固たる端正な「変奏」か。

・第2曲「作品25の1」(1922年)
第2、4楽章(テンポが遅い楽章):
第1次大戦と第2次大戦の間にあって、ドイツ、およびヨーロッパの未来を見通したがごとき《不安》が、カシュカシャンによって痛切に歌われている。カシュカシャンは健康的で端正な演奏をする人だと、私は思っていたが、そうではなかった。
第3楽章「疾走するテンポで」は、ホスプロヴァーの演奏と聴き比べたい。
第4楽章は、痛々しく、かつ、伸びやかに歌われる。最後の音はノンビブラートのハ音、開放弦(一番低い弦)。

・第3曲「1937」作品番号なし
第2楽章:「緩 - 急 - ピチカート - 緩」のユニークな楽章。ピチカートのあと(5分9秒あたり)遅い音楽に戻る(第2楽章5分9秒以降も痛切に歌われる)。

・第4曲「作品11の5」(1919年)
第2楽章、重音。よく歌っている。
第4楽章「パッサカリア」は、アルペジオしながら歌うところなど技巧的。(アルペジオしながら歌う。<その奏法をなんというんだっけ?)
中間部(4分20秒あたり)は、穏やかな変奏で一休みする。この長大なパッサカリアはバッハの「シャコンヌ」を思わせる。カシュカシャンの技巧的かつ堂々たる演奏。

・第5曲「作品11の4」(1919年)
このアルバムの中で、最も親しみやすい曲。それを、カシュカシャンは、本当に親しみやすく弾いている。速いフレーズを鮮やかに。全曲の流れが良い。
第1楽章から第3楽章まで続けて演奏される。
第3楽章は、自由な変奏曲であり複雑であり「形」がよく分からない(下記譜例参照)。4分19秒あたりにフガート風の部分があり、第3楽章を盛り上げている。

Hindemith_11_4_2
第2楽章の主題/静かに、素朴に、民謡のように(midi

Hindemith_11_4_3
第3楽章の主題/非常に生き生きと(アラブレーヴェ)、拍子を替えながら(midi

Hindemith_11_4_4
第3楽章に現れる親しみやすい旋律(midi

・第6曲「作品25の4」(1922年)
第1楽章、ピアノによる長い前奏。この楽章のリズムはトルコ風か?
第2楽章、遅いロマン的楽章を、カシュカシャンは、思いっきり歌っている。
第3楽章、またも東洋風リズムか。速いリズムに乗ってカシュカシャンの冴えた技巧。これも鮮やか。
このソナタは、Robert Levin, piano との対話・掛け合いが良いと思う。

・第7曲「1939」作品番号なし
第1楽章、長い楽章だが、冒頭の主題がフガート風に再現し(2分42秒あたり)、それがコノ楽章全体をしめていると思う。カシュカシャンにしては力(りき)がある演奏(mit Kraft 力を込めて)。聴き応えあり。Robert Levin, piano が良い。
第2楽章、これは、スケルツォ? 独特なリズムを持つモチーフ。彼女の技巧が冴えてる。そして、これも、Robert Levin, piano が良い。スリルある演奏。
第3楽章、打って変わって独特なファンタジー。ロマン的。遅いテンポで始まり、中間部は速くて激しく迫力ある。
第4楽章、長い楽章だが遊び心があり、面白い。

【まとめ】
このアルバムのディスク2は、ヴィオラ・ソナタじゃなくて、ヴァイオリン・ソナタのように聞こえる。その点、面白くない。

【参考/ユーチューブ】
Paul Hindemith - Sonata for Viola and Piano in F major, Op. 11 No. 4

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