2016年7月29日 (金)

【Apple Music】 ジョン・カークパトリックのチャールズ・アイヴズ:コンコード・ソナタ (mono)

【注】以下、岡林リョウ氏より、リンク、快諾頂きました。ありがとうございました。

--

【2016年7月27日のコメント欄より転記】

(ねこらぶっこさんへ)

>20世紀ウラ・クラシック<まとめ>α版
>Author:岡林リョウ氏
 http://20urakura.blog67.fc2.com/

この方のブログを紹介して頂いたことに感謝します。参考すべきことが多いです。

その一例としては、ジョン・カークパトリック(チェンバロ奏者のラルフ・カークパトリックではありません)のコンコード・ソナタです(←廃盤のようです)。
http://20urakura.blog67.fc2.com/blog-entry-5201.html
ソノ演奏を、Apple Music で試聴しました。非常にうまいと思います。
しかし、私はコレを初めて聴きました。
つまり、私のコンコード・ソナタ聴き比べの際に、ジョン・カークパトリックのコンコード・ソナタを購入しなかった←それは、完全に私の落ち度でした。あるいは、売ってなかったから、買えなかった。聴けなかった(?)

岡林リョウ氏のブログの特長は、作曲家を聴くというより《演奏、演奏者を聴く》《演奏、演奏者への嗜好》にあるかと思います。

>グラズノフ率が高い

高いですね。

・・・

あっ、もう一つ、書き忘れがありました

アイヴズという作曲家は、作品に、あれだけ多くの、アメリカの民謡、愛国歌、讃美歌等の引用があるのに、ナショナリズムを私に感じさせません。

( http://koshiro-m.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-e767.html#comment-113565078 より)

・・・

Ives

(C) Apple Music: Ives Concord Sonata John Kirkpatrick (mono)

・・・

>ステレオの薄盤による新録(1968)が知られているが、旧録のほうが壮年なりの力感があり、揺れも小気味よく、アイヴズを前衛と捉えた、もしくは「真面目な音楽」と捉えた後発他盤には絶対に聴かれない世界観が私は好きだ。モノラル。( http://20urakura.blog67.fc2.com/blog-entry-5201.html より)

Apple Music で、ジョン・カークパトリックのコンコード・ソナタ新盤(下記)も聴きましたが、旧盤(上記)の方が、確かに、面白かったと思う。

Ives_02

(C) Apple Music: Ives Concord Sonata John Kirkpatrick (stereo)

2014年4月 1日 (火)

チャールズ・アイヴズの「答えのない質問」

Ives

チャールズ・アイヴズ(1874 - 1954)作曲
「ニューイングランドの祝祭日」
「答えのない質問」
「宵闇のセントラルパーク」
シカゴ交響楽団
指揮:マイケル・ティルソン・トーマス
録音:1986年

【収録情報】
「ニューイングランドの祝祭日」別名「祭日交響曲」A Symphony: New England Holidays or simply a Holiday Symphony
1. 第1楽章「ワシントン誕生日 Washington's Birthday」 (1909年)[10'27]
2. 第2楽章「戦没将兵記念日 Decoration Day」(1912年)[9'57]
3. 第3楽章「独立記念日 Fourth of July」(1913年)[6'04]
4. 第4楽章「感謝祭 Thanksgiving and Forefathers' Day」(1904年)* [14'57]

5. 「答えのない質問」The Unanswered Question (Revised version)(1898-1908年)[7'13]
6. 「宵闇のセントラルパーク」Central Park in the Dark(1898-1908年)[7'26]
7. 「答えのない質問」The Unanswered Question (Original version)(1898-1908年)[7'01]
* シカゴ交響合唱団(合唱指揮:マーガレット・ヒルズ)<--- この指揮者はうまいが、第4楽章「感謝祭」の合唱パートは少ししかない。残念。
シカゴ交響楽団
指揮:マイケル・ティルソン・トーマス

「答えのない質問」新垣隆氏は、こういう曲を書かなきゃ!
21世紀の作品より、21世紀的!
ティルソン・トーマスの指揮は「答えのない質問」改訂版と原典版がよい。

この世に答えなんてないと考えたりする。

褒めてからすぐ貶すのは、私の悪い癖だが、ティルソン・トーマスの「アイヴズ:交響曲 第1〜4番」はあまりいいと思わなかった。

「アイヴズ:交響曲第4番」は小澤盤が、私は好きだ。

2012年2月19日 (日)

リディアン弦楽四重奏団のアイヴズ

Lydian

Charles Ives
String Quartet Nos. 1 & 2
Hymn for string quartet and contrabass
Hallowe'en for string quartet, piano and optional drum
Lydian String Quartet
Centaur Records, Inc
1988 年録音

米国アマゾンより購入。

(検索したら英国アマゾンでも売っていた)

名だたるエマーソンや、ライプチヒより、私はこのリディアン弦楽四重奏団の演奏が一番聞きやすかった。
エマーソンや、ライプチヒのアイヴズは技術的には秀でているかも知れないが、私には全然面白くなかった。

Emerson

Charles Ives
String Quartet No.1 (1896) "From the Salvation Army"
Scherzo(1903 - 04) "Holding Your Own"
String Quartet No.2 (1907 - 13)
Samuel Barber
String Quartet op.11 (1936)
Emerson String Quartet
1990 / 91 年録音

Leipziger

Charles Ives
Scherzo
String Quartet No.1 "From the Salvation Army"
Adagio sostenuto for English Horn, String Quartet and Piano
Largo risoluto Nos.1, 2 for String quartet and Piano
Adagio cantabile "The Innate" for String quartet and Piano
String Quartet No. 2
Hallowe'en for String quartet and Piano
Leipziger Streichquartett
2002 年録音


2012年1月29日 (日)

ヘザー・オドンネルのアイヴズ

Odonnell

Heather O'Donnell - RESPONSES TO IVES:
works of Ives, Zimmermann, Finnissy, Tenney, Corbett, Schneller

Charles Ives (1874 - 1954)
1. Study No. 21: Some Southpaw Pitching! (2:15)

Walter Zimmermann (b. 1949)
2. the missing nail at the river for piano & toy piano (5:50)

Charles Ives
Set of Five Take-Offs (11:55)
3. i. The Seen and Unseen?
4. ii. Rough and Ready et al.
5. iii. Song Without (Good) Words
6. iv. Scene Episode
7. v. Bad Resolutions and Good WAN!

Michael Finnissy (b. 1946)
8. Song Of Myself (11:07)

Charles Ives
9. From Four Transcriptions from "Emerson" - ii. Moderato (3:47)

James Tenney (1934 - 2006)
10. Essay (after a sonata) for inside piano (11:30)

Charles Ives
11. From Four Transcriptions from "Emerson" - iii. Largo (2:35)
12. Study No. 9: The Anti-Abolitionist Riots in the 1830's and 1840's (3:22)

Sidney Corbett (b. 1960)
13. The Celestial Potato Fields (10:07)

Charles Ives
14. London Bridge Is Fallen Down! (1:03)

Oliver Schneller (b. 1966)
15. "And tomorrow..." for piano & electronics (5:41)

Heather O'Donnell, piano
Recorded: 2007 / 2008
mode records

アイヴズの作品とアイヴズへのオマージュとして作曲された作品を交互に演奏したアルバム。ヘザー・オドンネルが弾く「エマーソンからの編曲」や第12曲を聴く限り、彼女が「コンコード・ソナタ」を演奏したら、多分うまいと思う。さっさと録音して欲しい。オドンネンルの打鍵はかなり力強い。アイヴズ以外の作品は静かな曲が多い。したがって、どちらかというと地味なアルバムである。ただし、第13曲は激しい音楽で始まり、中間では音楽が何度も止まるので、びっくりさせられる。第15曲は、電子音によって四分音が模倣されている。私は第15曲が気に入った。第2曲は「たんたんたぬき」が、おもちゃのピアノで奏される。第8曲の前半は、宮沢賢治の「星めぐりの歌」に少し似ていると思った。

リーフレットの解説は、オドンネル自身による。

【HMV.co.jp へのリンク】
レスポンス・トゥー・アイヴズ〜アイヴズと現代アメリカのピアノ作品集 オドンネル

2012年1月 8日 (日)

アイヴズ作曲「ピアノ・ソナタ 第2番」の決定盤を求めて(8)

Shannon

Charles Ives (1874 - 1954)
Piano Sonata No. 2
John Harbison (b. 1938)
Piano Sonata No.1
"Roger Sessions in Memoriam"
Robert Shannon
1992年頃録音
BRIDGE

この人は、Violin Sonatas Gregory Fulkerson violin Robert Shannon piano 1989 年録音でピアノを弾いている人。
この人は、Fulkerson とのデュオでは丁寧かつ雄弁に演奏している。そのような演奏を「コンコード・ソナタ」でも期待したが、むしろ豪快で少し粗かった。
ただ、この人の強い表現の中に新しい発見もあった。
たとえば「譜例8」の旋律の中に「譜例3」が用いられているのではないか、と思わせられた(実際には譜例8に譜例3と同じ音形はなかったが)。

Ives_pf_sonata_2_1_03
譜例3(midi

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譜例8(midi

この人の演奏は、旋律やアーティキュレーションや音そのものを強調し豪快だが、同時に、弛緩があり、退屈させられる部分もある。

第4楽章の終わりは美しかった。

--

Blackwood

Ives: Piano Sonata No. 2
Copland: Piano Sonata
Easley Blackwood
Recorded: 1991
Cedille Records

この人は、作曲家なので、作曲家としてのアプローチすなわち論理的で明晰で緻密な演奏をしている。技巧は秀でている。私はこの人の演奏を気に入っている。
しかし、むしろ弛緩がなく論理的な演奏であるが故に退屈する。「弛緩がなく論理的な演奏であるが故に退屈する」というのは変だと思われるかも知れないが、アイヴズのピアノ・ソナタは45分もある。その45分を論理だけで演奏するのは、何かが足りないような気がする。

--

Kalish

Ives: Piano Sonatas No. 2
Gilbert Kalish
Recorded: 1976
Elektra Nonesuch

この人の演奏はテクスチュアがよく聞こえる。Easley Blackwood に比べると粗いが、この人の演奏のみが退屈させない。

【まとめ】
Gilbert Kalish 盤はお薦めだが、それが、アイヴズ作曲「コンコード・ソナタ」の決定盤であると断言する自信は私にはない。誰かもっと若い演奏家が Gilbert Kalish を超える演奏をしてくれればよい、と私は思っている。


2011年12月27日 (火)

アイヴズ作曲「ピアノ・ソナタ 第2番」の決定盤を求めて(7)

作品について

・第4楽章「ソロー」

... And if there shall be a program let it follow his thought on an autumn day of Indian summer at Walden --- a shadow of a thought at first, colored by the mist and haze over the pond:

Low anchored cloud,
Fountain head and
Source of Rivers ...
Dew cloth, dream drapery ---
Drifting meadow of the air ...

(スコアの各楽章の前ページに記されたコメント。おそらく、アイヴズ自身のコメント。私の語学力不足のため、上記の訳は省略します(汗;;)

第4楽章の開始は、ベートーヴェンの「ハンマークラヴィーア」の第4楽章の序奏に似ていると思う。第4楽章「ソロー」の前半は、後で述べる「吹ーけーよ、吹ーけー」という旋律の前まで、長い「前奏」に聞こえる。それは長いレチタティーヴォのように聞こえる。

この楽章は、叙情的、幻想的、神秘的であり、散文的に語られ、ささやかれる。

また、カリッシュ盤の2分00秒あたりに出て来る旋律は「as an echo」とスコアに記されていてそれはエコーする。それは音楽的には目立たないが、その「こだま」は自然の静けさのなかに聞こえるこだまであるとともに、自然のなかで思索する者の頭の中にこだまする「思索のこだま」に思える。それは、私をして、私自身もそのような思索をしたいという気持ちにさせる。要するに「as an echo」で奏される部分を私は非常に気に入っている。「as an echo」すなわち「こだま」は2分00秒のあとにも2回現れる(2分35秒と3分17秒)。

第4楽章は、ウォールデン湖畔の森の中に丸太小屋を建て、自給自足の生活を2年2ヶ月間送ったヘンリー・デイヴィッド・ソロー、および、おそらくは彼の代表作『ウォールデン - 森の生活』を扱ったものであり、上記、アイヴズの前書きにあるように「ウォールデン湖畔の小春日和」を描写した音楽であり、この楽章は「マサチューセッツ州コンコード 1840 - 60年」という「時空そのもの」を表していると思う。

カリッシュ盤の4分08秒あたりに聞かれる旋律は、エマール盤のリーフレットによるとフォスターの「主人は冷たい土の中に」の引用であると書いてある。その歌は、私が小学生のとき学校で歌った「春風」という歌だ。「吹ーけーよ、吹ーけー」という旋律の下降音型は、第1楽章冒頭の下降音型(譜例1、midi)を全音階にしたものか?

Ives_pf_sonata_2_1_01
譜例1

フルートのパートは、このソナタを非常に効果的に締めくくる(譜例12、midi)。それには、全曲を統一する「運命の動機」が聞かれるが、「運命の動機」の4音は「エマーソン、ホーソーン、オールコット父娘、ソロー」の4組の思想家を表すのではないかと私は推測する。

Ives_pf_sonata_2_4_03
譜例12

第3楽章はハ長調で解決するが、第4楽章は名残を惜しむかのような旋律に終わる(譜例13、midi)。

Ives_pf_sonata_2_4_04
譜例13

話は前後するが、高音域は「運命の動機」で閉められる(譜例14、midi)。

Ives_pf_sonata_2_4_05
譜例14

2011年12月25日 (日)

アイヴズ作曲「ピアノ・ソナタ 第2番」の決定盤を求めて(6)

作品について

・第3楽章「オールコッツ(The Alcotts)」

第3楽章「オールコッツ」はわかりやすいのであまり解説は要らないと思う。この楽章はページ数にして5ページしかない(エマーソンは19ページ、ホーソーンは31ページ、ソローは10ページである)。

第3楽章「オールコッツ」は「エイモス・ブロンソン・オールコットとルイーザ・メイ・オールコット父娘」を題材にした楽章である。ルイーザ・メイ・オールコットは小説「若草物語」の作者であり、「若草物語」は映画やアニメで私たちに馴染みがある。アイヴズのピアノ・ソナタのなかに、やっと私たちに馴染みがある素材が出てきた。アイヴズのピアノ・ソナタ第2番は、この第3楽章から入るとわかりやすいと思う(私も第3楽章から入った)。

しかし、この楽章もよく聴くと、複雑で演奏するのが難しい楽章に思える。

スコアの1ページ目の2段目から3段目にかけて、右手が変ロ、左手が変イで書かれている。

カリッシュ盤の3分4秒あたりに現れる譜例11(midi)は、舟歌のようなリズムであり親しみやすい。それは第1楽章の譜例6(midi)に少し雰囲気が似ているかも知れない。

Ives_pf_sonata_2_3_02
譜例11

Ives_pf_sonata_2_1_05_1
譜例6

譜例11の終わりの部分はワーグナーの「婚礼の合唱」を思わせる。


2011年12月24日 (土)

アイヴズ作曲「ピアノ・ソナタ 第2番」の決定盤を求めて(5)

Ives_pf_sonata_2_2_00
Copyright 1947 by Associated Music Publishers, Inc., New York

作品について

・第2楽章「ホーソーン」

アイヴズという作曲家を好きな私でも、この楽章は少し「やり過ぎ」ではないかと思う。この楽章は「a scherzo supposed to reflect a lighter quality which is often found in the fantastic side of Hawthorne. ホーソーンの幻想的な側面にしばしば見られるやや軽い資質を反映すべきスケルツォ(ウィキペディアより)」であり、アイヴズの前書きによると「an extended fragment trying to suggest some of his wilder, fantastical adventures into the half-childlike, half-fairylike phantasmal realms(拡張された断片。ホーソーンのやや野性的で幻想的な冒険物語 --- それは半分子ども半分妖精の妖怪の世界へと通じる --- を表そうとするもの)」である。私の考えでは、第2楽章「ホーソーン」は、諧謔、遊び、いたずら、茶目っ気、即興の音楽であるが、それはグロテスクというより、クレイジーだと思う。

この楽章は、「ショパンのピアノ・ソナタ第2番の第2楽章(スケルツォ)」を思わせる軽快できらびやかな(ただし、ショパンのソナタ2番のスケルツォよりはるかに幻想的な)音楽で始まる(上記画像参照)。

カリッシュ盤の1分23秒あたりで、例の14と3/4インチの板で鍵盤を同時に押す特殊奏法が現れる。それは下の動画で見ることができる。

その特殊奏法は、14と3/4インチ、すなわち 37. 4 cm の棒さえあれば誰にでも演奏できるむしろ簡単な奏法である。私も試しに、竹性の30センチ物差しで、我が家の電子ピアノの黒鍵を押さえてみた。そうすると、同じような音が出た。この特殊奏法は、カリッシュ盤の1分23秒から2分54秒あたりまで、計32回(上の動画では省略されている)の打鍵で奏される(譜例9、アイヴズの注釈には「たたいてはいけない without striking 」とある)。

Ives_pf_sonata_2_2_01
譜例9

--

さて、第2楽章「ホーソーン」は、上記の特殊奏法の部分までは、むしろ美しい音楽だと思う。

だがそのあと、奇怪な音楽になると思う(特殊奏法のあと、音楽がどの方向に向かうのかわからない)。

以下、箇条書きで

・カリッシュ盤の4分29秒あたり
「運命の動機(オールコッツの旋律)」が現れる。

・カリッシュ盤の4分55秒あたり
賛美歌「Jesus, Lover of My Soul」らしき旋律が現れるが、それは荒々しいノイズでインターラプトされる。

・カリッシュ盤の6分35秒あたり
明るい行進曲(出典不明)になる(譜例10、midi)。

Ives_pf_sonata_2_2_03
譜例10

・カリッシュ盤の7分13秒あたり
一旦、短調になる。

そのあと、音楽はジャズ的、即興的な激しい部分を経過し、

カリッシュ盤の8分43秒あたりでフェルマータが入る。そのあと、静かで美しい音楽が短く挿入される。

・カリッシュ盤の9分28秒あたり
「O Columbia, the Gem of the Ocean(下記参照)」が最初はグロテスクに引用され次第にテンポを速める。

10分34秒あたりで、一旦、休止する。

そのあと、第2楽章の終わりまで、音楽は「roller coaster ride(ジェットコースター)」のように展開する(roller coaster ride という言葉は、René Eckhardt 盤のリーフレットの書かれてある言葉である)。

--

第2楽章「ホーソーン」を通して私が思うことは、

・アイヴズのピアノ・ソナタ第2番もまた大衆的であること(讃美歌・行進曲の引用、ジャズ的要素によって)。

「O Columbia, the Gem of the Ocean」は、グレン・ミラーの「アメリカン・パトロール」に引用された音楽であり、誰でも聴いたり演奏したりする大衆の音楽である。

・その意味で、アイヴズのピアノ・ソナタ第2番は、ベートーヴェンの後期ピアノ・ソナタのように聴かれるべきではなく、また、弾かれるべきではない。すなわち、繰り返すが、アイヴズのピアノ・ソナタ第2番は、ベートーヴェンの後期ピアノ・ソナタ(=同時代、すなわち、ベートーヴェンが生きていた時代の一般大衆には難しすぎたベートーヴェンの後期ピアノ・ソナタ)のように聴かれるべきではなく、また、弾かれるべきではないこと。

・繰り返すが、アイヴズのピアノ・ソナタ第2番は、崇高な世界の音楽であるベートーヴェンのピアノ・ソナタとは異なること。アイヴズの音楽は大衆に根ざした音楽であること。
(第3楽章「オールコッツ」に続く)

Columbia_the_gem_of_the_ocean

2011年12月21日 (水)

アイヴズ作曲「ピアノ・ソナタ 第2番」の決定盤を求めて(4)

Ives_pf_sonata_2_1_00_2
Copyright 1947 by Associated Music Publishers, Inc., New York

作品について

・第1楽章「エマーソン」

この楽章は自由な形式であり古典的なソナタ形式ではないと思うが、あえてソナタ形式に例えると「展開部」に入ると思われる楽想がある(後述)。

冒頭、下降音型(譜例1、midi)と上昇音形(譜例2、midi)が重ねられて奏される。

Ives_pf_sonata_2_1_01
譜例1

Ives_pf_sonata_2_1_02
譜例2

Ives_pf_sonata_2_1_02_2
(譜例1)+(譜例2)

譜例1と上譜例2は第1楽章、および、このソナタ全体が、取っ付きにくく難解な音楽であるという印象をリスナーに与えると思う。しかし、譜例1、譜例2は、第1楽章において支配的な音形ではない。

スコアにはメトロノームによるテンポ指示はない。アイヴズは彼の注釈の中で「演奏者はその日の気分に応じてテンポを決めてもよいが、一応、第1楽章の開始のテンポは、四分音符=72−80ぐらいでやってくれ」というようなことを述べている。

下記譜例3(midi)の付点の音形が第1楽章において支配的である(譜例3は最後までしつこく何度も現れる。第1楽章の終わり近くオプションのヴィオラ・パートの部分においても現れる)。

Ives_pf_sonata_2_1_03
譜例3

このソナタ全体を統一する「運命の動機」は譜例3の前に現れるが、しかし、完全な形で奏されるのは譜例3の後である(左手にて。譜例4、midi)。第1楽章は「運命の動機」によって統一され「運命の動機」によって閉じられる。

Ives_pf_sonata_2_1_04
譜例4

ちなみに、この作品には基本的に小節線がない(上記画像参照)。したがって音楽の流れを小節数で示すことができず、譜例の音形がどの辺りに現れるのかを言い表すのが難しい。ご容赦下さい。

譜例4の「運命の動機」は「エイモス・ブロンソン・オールコットとルイーザ・メイ・オールコット父娘」を扱った第3楽章「オールコッツ(The Alcotts)」のための動機であることが後で分かる。すなわち「運命の動機」は、第3楽章「オールコッツ」の主題であり「オールコッツ」において最も美しく、かつ最も効果的に歌われる。

「運命の動機」と譜例3を中心に音楽が重層的に展開された後、一時的に明快な付点のパッセージが現れる(譜例5、midi)が、再び複雑な音楽が経過する。

Ives_pf_sonata_2_1_08
譜例5

この楽章は、複雑な語法で書かれてあり、音楽が多層的重層的であり、音符が幾重にも重ねられ、グロテスクであると言ってもいいほどだ。繰り返すが、そもそも、譜例1の下降音型と譜例2の上昇音形は、グロテスクで難解な印象をリスナーに与えると思う。しかし、私の主観では、この第1楽章は、演奏においてもリスニングにおいても、複雑な音楽の要素がジグソーパズルのようにきれいに組み合わされるべきであると思う。

ミステリアスな楽想がめまぐるしく展開された後、複雑な楽想が一段落するのは、譜例6(midi)の出現によってである(カリッシュ盤の4分48秒あたり)。

Ives_pf_sonata_2_1_05_1
譜例6

Ives_pf_sonata_2_1_05_2
譜例6再掲(詳細)(midi

シンプルで穏やかな旋律(譜例6)が、第1楽章において初めて現れるまでにかなり時間がかかる(譜例6は普通のソナタ形式で言えば第2主題に当ると思う)【注1】。そして譜例6は「運命の動機」と同じぐらい第1楽章において支配的である。

その後、音楽は再び激しさを帯び、カリッシュ盤の6分26秒あたりで、ペダルをリリースする指示があるところにて楽想に変化が見られ、展開部に入るように思える。だが、明らかに楽想が変化するのは、その後、譜例7(midi)が奏されるところである(アイヴズは、譜例7を詩的であると注釈に書いている。すなわち、譜例7から音楽が散文から韻文に移行するということをアイヴズは示唆している)。

Ives_pf_sonata_2_1_06
譜例7

そのあと、しばらくは、譜例7を中心に音楽が経過する。そして、次に、落ち着いた美しい叙情的な楽想に至る(譜例8、midi)。

Ives_pf_sonata_2_1_07
譜例8

譜例8で、この楽章の複雑さは減じる。この楽章は「混沌の部分」だけでなく「幻想的で美しい部分」を持つ。すなわち、第1楽章は狂乱から次第に美と安寧に向かうのである。そのことを私は強調したい。

「アイヴズのピアノ・ソナタ 第2番は第2楽章では14と3/4インチの板で鍵盤を同時に押す、トーン・クラスターが使用される怪物のような作品である」という先入観は捨てた方がよい。

カリッシュ盤の10分22秒あたり(2回のターンの後)で、短いフーガ様の音楽(譜例6に基づくフーガ)で再び音楽は活気づく。

そのあと、譜例6の穏やかな楽想と複雑で激しい音楽を経過。

カリッシュ盤の12分25秒あたりで、譜例6がシンプルに奏される。そこを再現部と見てもいいのだが、私の主観では、12分25秒以降、音楽は一気に完結に向う。過去の音楽は再現しない。この楽章に再現部はないと思う。繰り返すが、この楽章は自由な形式であり古典的なソナタ形式ではない。

カリッシュ盤の12分25秒(譜例6がシンプルに奏される箇所)から第1楽章が閉じられるまでに、アイヴズは「これでもか」と言わんばかりに、さらなる緻密な作曲技法を駆使している【注2】

そして、第1楽章の最後の音における静けさ。リスナーは精神の昇華を体験するであろう。

【注1】実は、譜例6は「カリッシュ盤の4分48秒」に登場する前に、すでに登場する。

【追記】本当に、このピアノ・ソナタの良さを知るためには、スコアを買ってしまった方が良いかも知れない。

sheetmusicplus.com へのリンク
Ives: Piano Sonata No. 2 (2nd Ed.) Concord, Mass 1840-60

【2011年12月27日 訂正】
譜例1、譜例2は、第1楽章において支配的な音形ではないと書いたが、それらは、隠れているのでわかりにくいが第1楽章においてやはり重要なモチーフであるようだ。

【2011年12月29日 追加・注2】
カリッシュ盤13分02秒に、譜例7の一部が再現する。

2011年12月18日 (日)

アイヴズ作曲「ピアノ・ソナタ 第2番」の決定盤を求めて(3)

これは自然体で、非常によいと思う。

Kalish

Ives: Piano Sonatas No. 2
Gilbert Kalish
Recorded: 1976
Elektra Nonesuch

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これもよいと思う。

Blackwood

Ives: Piano Sonata No. 2
Copland: Piano Sonata
Easley Blackwood
Recorded: 1991
Cedille Records


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