2016年6月13日 (月)

ヴァネッサ・ベネリ・モーゼル plays スクリャービン:「24の前奏曲 作品11」「3つの小品 作品2」「練習曲 嬰ニ短調 作品8の12」 シュトックハウゼン:「クラヴィーア曲 XII 『試験』(歌劇『光の木曜日』より)」

Mosell

SCRIABIN | STOCKHAUSEN
LIGHT
Vanessa Benelli Mosell, piano

Producer: Vanessa Benelli Mosell
Recording: November 2015, Prato
Piano: Steinway & Sons, model D
DECCA

ALEXANDER SCRIABIN (1872 - 1915)
24 PRELUDES OP. 11
01 No. 1 in C major - Vivace 1.03
02 No. 2 in A minor - Allegretto 2.09
03 No. 3 in G major - Vivo 0.56
04 No. 4 in E minor - Lento 2.02
05 No. 5 in D major - Andante cantabile 1.44
06 No. 6 in B minor - Allegro 0.45
07 No. 7 in A major - Allegro assai 1.01
08 No. 8 in F-sharp minor - Allegro agitato 1.19
09 No. 9 in E major - Andantino 1.49
10 No. 10 in C-sharp minor - Andante 1.50
11 No. 11 in B major - Allegro assai 1.17
12 No. 12 in G-sharp minor - Andante 1.50
13 No. 13 in G-flat major - Lento 1.33
14 No. 14 in E-flat minor - Presto 0.57
15 No. 15 in D-flat major - Lento 1.58
16 No. 16 in B-flat minor - Misterioso 2.37
17 No. 17 in A-flat major - Allegretto 0.37
18 No. 18 in F minor - Allegro agitato 0.47
19 No. 19 in E-flat major - Affettuoso 1.32
20 No. 20 in C minor - Appassionato 1.07
21 No. 21 in B-flat major - Andante 1.59
22 No. 22 in G minor - Lento 1.10
23 No. 23 in F major - Vivo 0.40
24 No. 24 in D minor - Presto 0.49

3 PIECES OP. 2
25 Etude: Andante 3.16
26 Prelude 0.54
27 Impromptu à la mazur 1.32

ETUDES OP. 8
28 No. 12: Patetico 2.18

KARLHEINZ STOCKHAUSEN (1928 - 2007)
KLAVIERSTÜCK XII: EXAMINATION FROM “THURSDAY FROM LIGHT”
29 1. Examen 7.55
30 2. Examen 2.58
31 3. Examen 10.37

・・・

【収録情報】
● スクリャービン:24の前奏曲 Op.11
● スクリャービン:3つの小品 Op.2
● スクリャービン:練習曲 嬰ニ短調 Op.8-12
● シュトックハウゼン:クラヴィーア曲 XII『試験』(歌劇『光の木曜日』より)

ヴァネッサ・ベネリ・モーゼル(ピアノ)
録音方式:ステレオ(デジタル)

(HMV.co.jp より)

・・・・・・・・・・

【前置き】
私は、もともと、ヴァネッサ・ベネリ・モーゼルのデビュー以来、彼女の技巧や(良い意味での)器用さに、期待していなかった。彼女の《健康的な》パフォーマンスを、私は、気に入っていた。

・・・・・・・・・・

・ヴァネッサ・ベネリ・モーゼルのスクリャービンについて
「スクリャービン:24の前奏曲 Op.11」は、1888年〜1896年(スクリャービン、16才から24才頃)に書かれた作品。当然のことながら、ショパンの「24の前奏曲」に比べると、聴き応えない。

アルゲリッチも小林愛実も腕が太い。ヴァネッサ・ベネリ・モーゼルの腕は、細くはないが、例えば、ヴァレンティナ・リシッツァに比べれば細い。また、リシッツァに比べれば、ヴァネッサ・ベネリの手は大きくない。そのような体形・筋力の人が、スクリャービンを弾く時、その人には、ホロヴィッツのような豪快、かつ、繊細な「スクリャービン」を演奏するのはきついだろう(繊細な音を出すにも筋力は要ると思う)。そして、ヴァネッサは、それを補う裏技を、おそらく持っていない。つまり、辛口の評価だが、彼女には、スクリャービンの詩情を《豊かに流す》表現力が、おそらく、ないのだ(私は、スクリャービンという作曲家は、よく知らないが、ヴァネッサの弾くスクリャービンは、悪く言えば、焦点が合ってないような気がする。彼女は、スクリャービンなど、ロシアの巨匠たちの作品を弾くために、感覚と体力を鍛えねばならないだろう。彼女のスクリャービンは物足りない)。

・シュトックハウゼンについて
全曲演奏にはワーグナーの「ニーベルングの指輪」の倍、約28時間かかる長大な筋書きのないオペラ:「光(ドイツ語: Licht)」の「光の木曜日」から引用されたピアノ独奏ヴァージョン(ウィキペディア参照のこと)

これは、水を得た魚。彼女は、シュトックハウゼンを難無く弾いている。彼女は、シュトックハウゼンを弾くのに十分な腕力を持つ(シュトックハウゼンのこの作品もまた、技巧的だと思うのだが)。
「シュトックハウゼンを弾くヴァネッサ」は「モートン・フェルドマンを弾く高橋アキ」のようだと言えば、それは言い過ぎだが「シュトックハウゼンを弾くヴァネッサ」は、例によって健康的であり、彼女はまるで女子高生のように《はしゃぐ》。それが良い。とにかく、シュトックハウゼンから、御墨付きをいただいた彼女(英語版ウィキペディアには、シュトックハウゼンのモーゼルへの賛辞が紹介されている:『私の音楽をリスナーに正しく理解させる力を持つ "(she) has the power to let people appreciate my music"』)。その演奏に間違いはないのだろう。私は「シュトックハウゼンを弾くヴァネッサ」に、完全に惚れてしまった。


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ヴァネッサ・ベネリ(ベネッリ)・モーゼル、デッカからメジャーデビュー(?!) plays シュトックハウゼン、カロル・ベッファ (1973 - ) 、ストラヴィンスキー


【Apple Music にて試聴するには】

検索キーワード:Vanessa Benelli Mosell


【英語版ウィキペディアへのリンク】

Stockhausen: Klavierstücke XII


【2016−6−13 追加】

>>Producer: Vanessa Benelli Mosell

ヴァネッサは、セルフプロデュースしている。

2015年7月28日 (火)

Apple Music、驚いたことに、私の好きな Vanessa Benelli Mosell もある

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ヴァネッサ・ベネリ(ベネッリ)・モーゼル、デッカからメジャーデビュー(?!) plays シュトックハウゼン、カロル・ベッファ (1973 - ) 、ストラヴィンスキー


2015年7月 5日 (日)

ヴァネッサ・ベネリ(ベネッリ)・モーゼル、デッカからメジャーデビュー(?!) plays シュトックハウゼン、カロル・ベッファ (1973 - ) 、ストラヴィンスキー

Mosell

[R]evolution:

Karlheinz Stockhausen (1928 - 2007)
8 Klavierstücke

Karol Beffa (1973 - )
Suite

Igor Fyodorovich Stravinsky (1882 - 1971)
Trois mouvements de Petrouchka

Vanessa Benelli Mosell, piano
2014年録音
DECCA

【収録情報】

Karlheinz Stockhausen (1928 - 2007)

01. Klavierstück I [3.04]
02. Klavierstück II [1.52]
03. Klavierstück III [0.38]
04. Klavierstück IV [2.08]
05. Klavierstück V [5.31]
06. Klavierstück VII [6.55]
07. Klavierstück VIII [2.16]
08. Klavierstück IX [10.46]

Karol Beffa (1973 - )

Suite pour Piano ou Clavecin (2008)
09. "La volubile"(おしゃべりの、早口の)[1.52]
10. "La ténébreuse"(暗い、陰鬱な)[3.15]
11. "La déjantée"(はずれる、乱れる)[4.01]

Igor Fyodorovich Stravinsky (1882 - 1971)

Trois mouvements de Petrouchka
12. Danse Russe「ロシアの踊り」[2.28]
13. Chez Petrouchka「ペトルーシュカの部屋」[4.30]
14. La Semaine Grasse「謝肉祭」[8.33]

Total time 58.06

【私の評価】

星4つ。

【前置き】

2枚のアルバム(ハイドン、リスト、スクリャービン、プロコフィエフおよびリスト:ピアノ独奏曲集)を「Brilliant Classics」より発売後、ヴァネッサ・ベネリ(ベネッリ)・モーゼルが、デッカからメジャーデビュー(?!)。
このアルバムを、私はとても気に入った。ただし、私が気に入ったのは、シュトックハウゼンのみ。

【感想】

・シュトックハウゼン「8つのピアノ曲集」

このアルバムのメインは、シュトックハウゼンだと思う。
作品群、シュトックハウゼン:「8つのピアノ曲集 Klavierstück I - V, VII - IX」
これは、モーゼルが、晩年のシュトックハウゼンに招かれ、彼女が、シュトックハウゼンのもとで、ドイツにて学んだ作品群であり、その際、彼女が弾いた「Klavierstücke」は、批評家の高い評価を得た【注1】。それだけに、このアルバムにおいて、モーゼルが弾く「シュトックハウゼン」からは、彼女の自信と確信がうかがえる。彼女の打鍵は強い。この作品群を大音量で聴くと快い。多分、故意にそうしたのだろうが、この作品群の録音は若干オンマイク気味。そして、曲の終わりの持続音がえらく長い曲がある!←たとえば第1曲。

彼女の強烈な打鍵を大音量で聴くと、私は、マゾヒスティックな快感を覚える。その理由は、おそらく、彼女の《強烈》かつ《的確》な打鍵に、また、彼女の明快さ、若さ、良い意味での未完成さに、私の鈍感な感性でさえも触発され、いや、えぐられ、彼女の「技」に飲み込まれてしまうから、だろう。

シュトックハウゼン:「8つのピアノ曲集 Klavierstück I - V, VII - IX」の作風は、シェーンベルクのピアノ独奏曲に、少し似ていると思う(無調。特殊奏法は無い)。ただし、「シェーンベルク」と「シュトックハウゼン」を比較すると、前者が、後者に比して、より情緒的であるのに対し、後者は技巧に走っていると感じる(そして、後者は前者よりアグレッシヴ)。しかし、「シュトックハウゼン Klavierstück I - V, VII - IX」の魅力は、勿論「技巧」だけではない。この作品群には味がある。それは、たとえば、ハーディ・リットナーの弾くシェーンベルクが《美しく端正》であるとすれば【注2】、モーゼルのシュトックハウゼンには、《力(りき)》があり《元気》がある。彼女の演奏の特長は、ストレートであることと、「生きのよさ」であろう(←デュナーミク・アーティキュレーションにおいて)。そして、彼女の「シュトックハウゼン」における、デュナーミクやアーティキュレーションは、彼女が作曲者シュトックハウゼンから教授された「音」だけではなく、その「生きのよさ」において、「彼女自身の自己主張・解釈」を含むかも知れない。

HMV.co.jp の商品レビューに、「彼女らしいポジティブなプログラムによって、推進力のある音楽を体感いただけます。(ユニバーサルIMS)」とあるが、それは、このアルバムを批評するに、的を射ていると思う。すなわち、モーゼルは、プログラムのオープニングに、アグレッシヴ・難解・技巧的なシュトックハウゼンの作品を持ってきて、それを、真正面から、ストレートに弾くことによって、その演奏を成功させ、それを、このアルバムの「推進力」にした。

英語版ウィキペディアの詳細な記事によると、シュトックハウゼン:「8つのピアノ曲集(この曲集は、本来、全部で19曲、あるいは、21曲書かれた。ココに取り上げられた「Klavierstück I - V, VII - IX」は、主に、1950 - 60年代頃に書かれた作品のようだ)」は、論理的に難解で複雑な作品群である。だから、私は、この作品群をアナリーゼできない・・・にもかかわらず、私が、モーゼルのパフォーマンスは、「シュトックハウゼン:Klavierstück I - V, VII - IX」の魅力を引き出していると感じる理由・・・それは、この作品群が持つ魅力の一つである楽想の変化、そして、その変化の「面白さ」「奇麗さ」または「クールさ」を、モーゼルが、作品から引き出しているからだろう。

モーゼルの弾く「シュトックハウゼン Klavierstück I - V, VII - IX」は、「難しく聴くより、難しく聴かないほうが良い」と思う。なぜなら、モーゼルの演奏は、(変な表現だが)初心者向きであり、新鮮であり、聴く者に、容易に満足感と快感を与える、ある種のシュトックハウゼン入門盤だからである。やっぱり彼女は、うまい。ただ者じゃない。

【注1】英語版ウィキペディアには、シュトックハウゼンのモーゼルへの賛辞が紹介されている:「私の音楽をリスナーに正しく理解させる力を持つ "(she) has the power to let people appreciate my music"」

【注2】ハーディ・リットナーのシェーンベルク:ピアノ独奏曲全集を、聴き直してみたら、コレは、必ずしも悪い演奏ではないと私は感じた。

・フランスの若い作曲家カロル・ベッファ (1973 - ) の「ピアノまたはクラヴサン(チェンバロ)のための組曲」

ベッファのこの作品は、シュトックハウゼンやストラヴィンスキーの作品のような巨匠的マスターピースではないが、この作品は、第3曲にジャズを取り入れたりした聞きやすい佳作である(←例によって、モーゼルの健康的な表現と技巧が聞ける)。「この作品は、2008年に作曲された作品であり、エレガント、かつ、インターラプトされないアルペジオのシークエンスに基づいている。His Suite for piano or harpsichord was composed in 2008 and is based on an elegant, uninterrupted sequence of arpeggios.」とリーフレットに書いてあるが、そのアルペジオは、第1曲のみに聞こえる?!

・ストラヴィンスキー「ペトルーシュカからの3楽章」

私は、ストラヴィンスキーは苦手なので、よく分からないが、たとえば、ポリーニとモーゼルの「ペトルーシュカからの3楽章」を比較した場合、前者のほうに、「古いタイプのヴィルトゥオージティ」が聞こえるが、両者の演奏は、そのポリーニのヴィルトゥオージティによって、ポリーニに軍配が上がると思う。

モーゼルの演奏は技巧的に余裕がなく、散漫な演奏と言ってしまっていいかも知れない。ポリーニの演奏は、(変な言い方だが)アルゲリッチ的メリハリやスリルに富む。そして、主題もテクチュアもよく聞こえる。モーゼルの「ペトルーシュカ」は、たとえば、第3楽章は盛り上がるが、その楽章において、彼女は、おそらく全てを語り尽くすことなく、あっけなく終わる。つまり、モーゼルも、なかなか技巧を聞かせているが、ポリーニに比べれば、テクスチュアが見えにくく、原曲の主題・旋律が聞こえづらいと思う。

モーゼルは、「ペトルーシュカ」において「外した」つまり「失敗した」と思う。これは、選曲ミスだ。彼女は、もう少し「ペトルーシュカ」を研究・練習して、そして、弾き込んでから、この曲にチャレンジすべきだったと思う。このアルバムにおいて、「ペトルーシュカ」は、オマケだと思う。すなわち、「ペトルーシュカからの3楽章」の収録の理由は、「誰でも知っている有名曲を1曲収録しないとこの商品は売れない」というレコード会社の要求に応じて取り上げられた、という感アリ。繰り返すが、このオマケは、選曲が悪かった。モーゼルは、もうちょっと易しい曲を選曲すべきだったと思う。

・最後に

それにしても、DECCA は、モーゼルに、(ショパンやシューマンじゃなく)シュトックハウゼンやカロル・ベッファというマイナーな(?)選曲・録音を、よくも許したもんだ・・・と思う・・・(←はっきり言って、このアルバムは、あまり売れないと思うよ)

・おまけ

例によって、モーゼルは、美人なので、リーフレットに彼女を被写体とした写真が複数掲載されている。

【追加】

モーゼルのシュトックハウゼンを聴いて「途中で退屈する」と思う人があるかも知れない。私も、これを、万人に薦められない。しかし、作曲者のシュトックハウゼン自身が、ヴァネッサ・ベネリ・モーゼルの弾くシュトックハウゼンの作品を、良いと言ってるのだから、やっぱり、これは良いのだろう。

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Vanessa Benelli Mosell - STOCKHAUSEN: KLAVIERSTÜCKE
(C) VEVO(ヴィーヴォ)

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【2015−7−8 追加】

この人は、ラストネーム(Mosell)は、ドイツ系だし、下記動画では、彼女はロシア語を話している。彼女は、どんな生い立ちなのだろうか?

https://youtu.be/A0UgQfgbfTc

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【2015−8−20 追加】

上の動画を見る限り、Vanessa Benelli Mosell は、思ったより小柄で、手は大きくないし、腕の筋肉も発達していないようだ。すなわち、いわゆる、ヴィルトゥオーザではないようだ。そんな彼女が、今後、何をやってくれるか、期待したい・・・否、期待半分、心配半分である。

2015年5月17日 (日)

カールハインツ・シュトックハウゼン:『クラング』3時間目『自然の持続時間』ウド・ファルクナー(ピアノ)

Stockhausen

カールハインツ・シュトックハウゼン(1928-2007)
『クラング』3時間目『自然の持続時間』
ウド・ファルクナー(ピアノ)
2011年録音

Karlheinz Stockhausen
Natürliche Dauern - 3. Stunde aus Klang
Udo Falkner, piano

CD 1

01. Natürliche Dauern 1 [12:21]
02. Natürliche Dauern 2 [12:58]
03. Natürliche Dauern 3 [09:56]
04. Natürliche Dauern 4 [07:23]
05. Natürliche Dauern 5 [08:06]
06. Natürliche Dauern 6 [04:21]
07. Natürliche Dauern 7 [04:40]
08. Natürliche Dauern 8 [03:53]
09. Natürliche Dauern 9 [02:28]

CD 2

01. Natürliche Dauern 10 [08:04]
02. Natürliche Dauern 11 [01:13]
03. Natürliche Dauern 12 [02:37]
04. Natürliche Dauern 13 [02:54]
05. Natürliche Dauern 14 [00:57]
06. Natürliche Dauern 15 [06:25]
07. Natürliche Dauern 16 [03:15]
08. Natürliche Dauern 17 [00:37]
09. Natürliche Dauern 18 [03:16]
10. Natürliche Dauern 19 [02:45]
11. Natürliche Dauern 20 [03:44]
12. Natürliche Dauern 21 [02:01]
13. Natürliche Dauern 22 [07:43]
14. Natürliche Dauern 23 [05:01]
15. Natürliche Dauern 24 [16:35]

Total Time 133:20

【楽曲解説】

第五期(2004-2007)

「光」を2003年に完成させたシュトックハウゼンは、2004年から2008年の没年まで、1日の24時間を音楽化しようとする24作品からなる連作「クラング - 1日の24時間」(2004-07)の作曲に専念した。1970年代以来のフォルメル技法に代わり、2オクターヴの24音からなるセリーがこの連作の基礎となっている。

オペラ劇場で演奏されることを前提として作曲された「光」に対して、「クラング」はそのような制約を一切設けずに作曲されているため、基本的に演劇的な演出はなされていない。ただし、1人の打楽器奏者と少女のための4時間目「天国への扉」(2005)では、例外的に演劇性が採り入れられている。この作品は特製のドアを打楽器奏者が叩き続ける作品である。このほか、2人のハープ奏者のための2時間目「喜び」(2005)や24のピアノ音楽集である3時間目「自然な演奏時間(自然の持続時間と訳されることがあるが、ドイツ語でDAUERは総演奏時間のことを指す)」(2005/06)など、それまでのシュトックハウゼンの作風からはかなり離れた伝統的で室内楽風な編成のものも含まれている。(以下略)(ウィキペディアより)

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シュトックハウゼン、晩年の傑作クラングより 3時間目 「自然の持続時間」 名手、ファルクナーによる的確な解釈

[商品番号 : TLS-130] [2CD] [DDD] [Import CD] [Telos Music]

現代音楽を積極的に演奏・録音をしているウド・ファルクナーによる最新アルバムはシュトックハウゼン晩年の傑作「クラング」から3時間目''自然の持続時間''です。この''自然の持続時間''は全24曲からなるピアノ曲集で題名は音の減衰時間や演奏者の呼吸などの自然現象を意味します。一部の楽曲には内部奏法や演奏者の発声、補助楽器が登場し、シュトックハウゼン独特の世界で表現されています。名手、ファルクナーによる的確な解釈での録音は嬉しい限りです。

演奏 : ウド・ファルクナー (ピアノ)

(アマゾンJPの商品の説明より)

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モートン・フェルドマンやジョン・ケージに比べると、シュトックハウゼンの(ピアノ)音楽は、彼特有の「無機質さ」が、リスナーを「退屈させるか」「面白ろがらせるか」のどちらかだと思う。私も、このアルバムを最初に聴いた時、退屈したので、コレを、売っぱらおうと思った。しかし、その後、たまたま、このアルバムを、夜中に聴いてみると、その静謐に私は美を感じた。そして、さらに、その後、改めて、私は、このアルバム全曲を昼間に大音量で一気に聴く。←文字通り「音の持続(ピアノの持続音)」は私を楽しませてくれた。このアルバムは、ある種の緊張感、「フォルテ」と「ピアノ」のぶつかり合い、そして、《音楽的文脈》が、リスナーを楽しませると思う(ただし、残念ながら、第14曲以降は《普通の現代音楽っぽくて》面白くないと思う。そして、第24曲は、先行する23の楽曲を結合した曲である)。

このアルバム(商品)のリーフレットに「カールハインツ・シュトックハウゼンによる『自然の持続時間』への演奏指示(Spielanweisungen zu Natürliche Dauern von Karlheinz Stockhausen)」というのが掲載されてある(下記)。それには、第1曲から第24曲(ただし、第19、23、24曲を除く)について、個々に演奏指示が短く記されてある。たとえば、『自然の持続時間』第1曲:「1. Natürliche Dauern / Jeden einzelnen Ton nahezu ausklingen lassen, jedes Intervall bzw. jeden Akkord proportional zur Zeichnung anschlagen.」これの意味は、私には、よく分からない。Jeden einzelnen Ton nahezu ausklingen lassen というのは、多分、「すべての個々の音を、(ペダルを使うことなく)ほとんど鳴り止むまで鳴らすこと」という意味か? jedes Intervall bzw. jeden Akkord proportional zur Zeichnung anschlagen というのは、多分、「すべてのインターバル、および、和音を、スケッチ(スコア)に基づき均斉に鳴らすこと」という意味か? 『自然の持続時間』第2曲:「2. Natürliche Dauern / Notierte Dauern, Viertel = 60, jeden einzelnen Ton nahezu ausklingen lassen, (Abstand zwischen Akkord und Einzelton vergrößert sich kontinuierlich um 1 Sechzehntel).」これは「記譜された演奏時間で弾くこと、四分音符=60、すべての個々の音を、(ペダルを使うことなく)ほとんど鳴り止むまで鳴らすこと、(和音と単音の間隔を継続的に16分音符ずつ広げること)」(第3曲以降は、下記画像参照のこと)

Naturliche_dauern_small_2
Karlheinz Stockhausen Natürliche Dauern - 3. Stunde aus Klang (Spielanweisungen zu Natürliche Dauern von Karlheinz Stockhausen)
画像をクリックすると拡大します

(続く)

(続き)

【2015−5−19 追加】

ついでなので、「カールハインツ・シュトックハウゼンによる『自然の持続時間』への演奏指示(Spielanweisungen zu Natürliche Dauern von Karlheinz Stockhausen)」全訳します(ただし、よく分からない箇所あり。それから、おそらく、誤訳あり)。

第1曲 すべての個々の音を、(ペダルを使うことなく)ほとんど鳴り止むまで鳴らすこと、すべてのインターバル、および、和音を、スケッチ(スコア)に基づき均斉に鳴らすこと。
第2曲 記譜された演奏時間で弾くこと、四分音符=60、すべての個々の音を、(ペダルを使うことなく)ほとんど鳴り止むまで鳴らすこと、(和音と単音の間隔を継続的に16分音符ずつ広げること)。
第3曲 四分音符=60、すべてのフォルテ音を、(ペダルを使うことなく)ほとんど鳴り止むまで鳴らすこと。
第4曲 右手は四分音符=72、左手は四分音符=60(そして、逆に演奏すること)、すべてのフォルティッシモ=スタッカートは、多少の残響をもって。
第5曲 レガートしないこと(一音一音)、四分音符=71、すべてのフェルマータを、ほとんど鳴り止むまで鳴らすこと、(右手の個々の音を、フォルテ、メゾフォッルテ、ピアノ、織り交ぜて弾くこと)。
第6曲 速く、軽く不規則に、3つの音のグループ(?)を両手で弾くこと、約10回繰り返し、それから、5回リタルランド、非常に遅くなるまで(滴り落ちるように?)、それから、約5回アッチェレランド、速くなるまで、それから、1回リタルランド、極端に遅くなるまで。
第7曲 フェルマータを、ほとんど鳴り止むまで鳴らすこと。
第8曲 左手の動きは適度に速く、右手は四分音符=60。
第9曲 (ピアニストは)最後にはっきりと「3時間目(ORA TERZA)」と「発声」すること。
第10曲 小さなインドの鈴を右手の指に固定すること、5音からなる速い音形(スピールフィギュア Spielfigur)を、多少、狂ったように etwas IRR(?)繰り返すこと、バスの音が、ほとんど鳴り止むまで。
第11曲 クラスターを完全に鳴り止むまで鳴らすこと、そして、「断片(右手は四分音符=63.5、左手の四分音符=75)」を、それが「クラスターの残響」の鳴り止む時と同時に鳴り止むように弾き始めること。
第12曲 静かな呼吸の時間(吐く、吸う)が、音響の時間を決定する、息が切れるまで繰り返す(有声の呼吸音は、はっきり聞こえる)
第13曲 和音ごとに1度、静かに息を吐き、息を吸う、最高音域の音を大音量で弾かないこと、最低音域をやや強調すること。
第14曲 (最初のフェルマータを、ほとんど鳴り止むまで鳴らすこと)それから、《呼吸》が2分の2拍子の演奏時間を決定する(?)。
第15曲 ゆっくり、フェルマータの和音の際、はっきりと「上昇(Aufstieg)」と「発声」すること。クラスターグリッサンドを、指先を切断した柔らかい手袋で弾くこと。
第16曲 四分音符=71、トレモロと外に落ちる音(?)の間隔(?)を変化させること(びっくりさせるように)。
第17曲 付点四分音符=120(最高音から最低音までのアクセントのずれを伴う半音階的下降パッセージ)。
第18曲 16分音符は常にスタッカートで、7度が、常に保たれること、8音の音形(テンポの保たれた音階? Tempo-Skala)を八分音符=120〜36の間で常にルバートすること。
第19曲 (個別の指示なし)
第20曲 リピート音はより弱く(およそ、フォルテで)、過激な音はより強く。
第21曲 四分音符=約88、パウゼの前の最後の打鍵を強調すること(ほぼ例外なく)。
第22曲 記譜された演奏時間を一拍ごとに分割し、鈴(りん RIN)の音が、ほとんど覆われるように弾くこと(その日本の鈴は、「ホーホ=ツァイテン(HOCH-ZEITEN)」の動機(作品「光」の「日曜日」第5場)のト音、変イ音、ニ音を用いる、また、『クラング』1時間目「昇天(HIMMELFAHRT)」の動機のホ音、イ音を用いる(下記画像参照のこと)。
第23曲 (個別の指示なし)
第24曲 (個別の指示なし。第24曲(約17分)は『自然の持続時間』における先行する23の楽曲を結合したものである)

Falkner
シュトックハウゼン:『クラング』3時間目『自然の持続時間』ウド・ファルクナー(ピアノ)リーフレットより

2011年6月21日 (火)

シュトックハウゼン:ティアクライス(オルガン版)ドミニク・シュステック

Zodiac

シュトックハウゼン:『ティアクライス(黄道十二宮)』星座のための12のメロディー(オルガン版)ドミニク・シュステック

1. Wassermann みずがめ座 2' 12
2. Fische うお座 2' 48
3. Widder おひつじ座 2' 30
4. Improvisation I 即興 I 5' 40
5. Stier おうし座 1' 43
6. Zwillinge ふたご座 2' 32
7. Krebs かに座 2' 38
8. Improvisation II 即興 II 4' 43
9. Löwe しし座 1' 59
10. Jungfrau おとめ座 1' 45
11. Waage てんびん座 1' 37
12. Improvisation III 即興 III 4' 27
13. Skorpion さそり座 2' 25
14. Schütze いて座 2' 24
15. Steinbock やぎ座 3' 54
16. Improvisation IV 即興 IV 5' 13

Total Time 48' 30

Dominik Susteck, organ
Live recording 30. September 2008
Die Kunst - Station Sankt Peter Köln
WERGO

これは、ドミニク・シュステックが、現代曲のためのオルガンを演奏した演奏技法と即興を聴くべきもの。

シュトックハウゼンの作品としては、面白くない。

Die Kunst - Station Sankt Peter Köln このオルガンは、金属的な打楽器音のような音とか、電子音のような音が出せる楽器だ。

録音は、必ずしも良くないと思う。全体にオルガンに空気を送るための送風のようなノイズがある。

【参考】
http://www.wergo.de/shop/de_DE/3/show,281206.html

【Amazon.co.jp へのリンク】
Stockhausen: Zodiac for Organ Dominik Susteck

2011年4月25日 (月)

Stockhausen: Kontra-Punkte / Refrain / Zeitmasze / Schlagtrio

Stockhausen

Karlheinz Stockhausen
Dirigent: Rupert Huber (1, 3)
Orchester/Ensemble: ensemble recherche
Inhalt:
1. KONTRA-PUNKTE für zehn Instrumente (1952 - 53) [11' 51]
2. REFRAIN für Klavier, Celesta und Schlagzeug (1959) [11' 52]
3. ZEITMASZE für fünf Holzbläser (1955 - 56) [12' 47]
4. SCHLAGTRIO für Klavier und Schlagzeug (1952) [15' 11]
Total Time [52' 12]
Recording: 2008 / 2009

WERGO のこのアルバムは、若いころのシュトックハウゼンの、まともな作品群であり、録音も新しいし、聴きやすい。Rupert Huber & ensemble recherche の演奏は、ブーレーズ(Ensemble intercontemporain)に比べたら格下かも知れないが、ブーレーズと違って退屈させない。

【HMV.co jp へのリンク】
シュトックハウゼン:『コントラ・プンクテ』、『ルフラン』、『ツァイトマッセ』、『シュラーク・トリオ』 フーバー&アンサンブル・レシェルシェ

2011年1月 8日 (土)

シュトックハウゼンのシュティムング(再掲)

Stimmung

Stockhausen
Stimmung
The premiere 1968, Copenhagen version 2006
Theatre of Voices, direction Paul Hillier
Elsa Torp, soprano I
Louise Skovbaech, soprano II
Clara Sanabros, mezzo - soprano
Wolodymyr Smishkewych, tenor I
Kasper Eliassen, tenor II
Andrew Hendricks, bass
Recorded: 2006
Hybrid SACD

ペーター・エトヴェシュ(Péter Eötvös)の音楽劇 「As I Crossed a Bridge of Dreams」を買ったのだが、劇中、何をしゃべっているのか解らないので、その題材となった古典文学「更級日記」の英語版と日本語版を注文した。

一昨日、更級日記日本語版が英語版より先に届いた。文庫本更級日記日本語版を読んでいると、久しぶりに、シュトックハウゼンの「シュティムング」を聴きたくなった。そこで「シュティムング」を更級日記読書の BGM として聴いた。

そして思った。シュトックハウゼンの「シュティムング」は、電子音も使ってないし「ヘリコプター・カルテット」のような非音楽的手法もないし、彼の作品としては、レヴェルが高い・・・代表作と言っていいのではないかと・・・。

特に、上記の Theatre of Voices による SACD 盤は、録音が新しいし、音も良いので聴いてて気持ちがよい。

【HMV.co.jp へのリンク】
シュトックハウゼン:シュティムング ヒリアー&シアター・オブ・ヴォイシズ

2010年12月21日 (火)

Stockhausen: Spiral 1 & 2, Pole, Wach, Japan, Zyklus, Tierkreis, In Freundschaft

Stockhausen

Stockhausen: Spiral 1 & 2, Pole, Wach, Japan, Zyklus, Tierkreis, In Freundschaft

Stockhausen
DISC 1
Zyklus [12' 53]
Tristan Fly, percussion
Recorded: 1974 / 75
Spiral I [15' 07]
Harald Bojé, electromium and short - wave radio
Pole [21' 56]
Harald Bojé, electromium and short - wave radio
Peter Eötvös, electrochord and short - wave radio
Spiral II [16' 08]
Peter Eötvös, zither, bamboo flute, reed pipe, synthesiser and short - wave radio

DISC 2
Japan [11' 41]
Harald Bojé, electronium and woodblock
Christoph Caskel, percussion
Peter Eötvös, electronium and woodblock
Wach [19' 57]
Harald Bojé, electronium
Christoph Caskel, percussion
Peter Eötvös, electrochord
Recorded: 1971

Tierkreis
Markus Stockhausen, trumpet
Margarete Hurholz, organ
Recorded: 1992

In Freundschaft for E flat trumpet with fourth - step valve (1977 / 97)
Markus Stockhausen, trumpet
Recorded: 1997

DISC 1 の全曲および DISC 2 の「Wach(眠らずに)」までは、ウルトラマンかウルトラQの効果音と、それほど変わらないような気がした。「Tierkreis(十二宮)」「In Freundschaft(友情をこめて)」も、さして名曲ではないような気がする。


2010年12月20日 (月)

シュトックハウゼンのシュティムング

Stimmung

Stockhausen
Stimmung
The premiere 1968, Copenhagen version 2006
Theatre of Voices, direction Paul Hillier
Elsa Torp, soprano I
Louise Skovbaech, soprano II
Clara Sanabros, mezzo - soprano
Wolodymyr Smishkewych, tenor I
Kasper Eliassen, tenor II
Andrew Hendricks, bass
Recorded: 2006
Hybrid SACD

「Stimmung」というドイツ語を辞書で引くといろいろ出てくる。気分、機嫌、調子、色調、調律。シュトックハウゼンは、英語の「tuning (調律)」の意味で使っているようである。

「『Stimmung』とは、英語に訳すと『tuning (チューニング)』。楽器や声の調子を合わせる意味ですが、ここでは、声の調子のみならず、人の魂をもチューニングする、という内的な意味合いも含まれています。(キングインターナショナル)」

人間の声の中で最も原始的なものは、赤ちゃんの泣き声だろう。そして、最も人工的なものは、カストラートのソプラノの歌声だろう。シュトックハウゼンの「シュティムング」にて発声される声は、後者だと思う。

この作品において言葉や歌を排した人工的な声は、人間の肉声を楽器のように鳴らしているに過ぎないと思う(シュトックハウゼンはなぜ叫び声を使わなかったのか)。私見では、この作品が意味するのは、様々な神々の名前が作品の中に登場するのとは裏腹に、人間の声にひそむ「性的ニュアンス」ではないかと思う(意味も歌もない人間の声。そしてそれが他者により強いられた声であり、しかもそれが聞く者を high にするとすれば、それは性的あえぎ声に共通する)。

この作品で聞かれる人間の声は物理的効果だけだ(この CD はスピーカの試聴に結構適していると思う)。その声を、78 分も聴かされた私は、その帰結として「性的エクスタシー」にしか至らなかった(おそらくそれは作曲者の意図ではない)。ただし、この作品は、作品としては面白い。録音もよいし、一度ならず二度三度聴きたくなる。

シュトックハウゼンのシュティムング(再掲)に続く

2010年12月 8日 (水)

Karlheinz Stockhausen: Helikopter - Streichquartett

Helikopter

Karlheinz Stockhausen
Helikopter - Streichquartett
Arditti Quartet & Grasshoppers show team, Helikopter
Recorded: 1995 / 96

start der trubinen - einsatz der instrument - erster formel-durchgang [9' 54]
2. formel-durchgang - 2nd formula-cycle [9' 17]
3. formel-durchgang - 3rd formula-cycle [7' 37]
abstieg - schluss - descent - silence at the end [5' 00]
Total [31' 51]

ウチの近所には、空港がある。以前、私が住んでいた部屋は、部屋の遮音・防音効果のない部屋だったので、クラシック音楽を聴いていると、飛行機やヘリコプターの騒音に音楽がかき消されることが多かった。そういう意味では、ヘリコプターの騒音と音楽の融合という発想は、数十年遅れているのではないだろうか・・・それにヘリコプターカルテットよりも電気掃除機カルテットや洗濯機カルテットのほうが、もっと私たちに身近なコンセプトだと思うし低予算で実演できるので良いと思った・・・。とはいうものの、この作品は騒音と音楽がうまく解け合っているのは見事だ。

【追加 2010-12-15】
私たちは、音楽を聴く時に、騒音・ノイズ(エアコンの音など)に邪魔されることが少なくはない(ヘッドホンで音楽を聴いてもノイズは皆無とは言えないだろう)。もしあなたが、音楽を聴く時、絶対に騒音に邪魔されたくなかったら、この作品「ヘリコプター・カルテット」を聴くとよい。なぜなら、この曲はもともと、ヘリコプターのうるさすぎる轟音にかき消される音楽だからである。そもそも、ヘリコプター・カルテットは、シュトックハウゼンが彼の「夢」から着想を得た作品であり、音楽におけるシュールレアリズムだと思う。彼は、ハイドンやモーツァルトがヘリコプターに乗って、弦楽四重奏曲を演奏している夢を見たのかも知れない。

私たちが、オーディオで(LP レコードやコンパクト・ディスクで)アコースティックな音楽、すなわちクラシック音楽を聴くとき、私たちは、あたかも「目の前で生身の人間が演奏してる」と感じることに、何ら疑念を抱かない。しかし、それは仮想現実である(ただし、本来オーディオで聴かれることを前提に発展した音楽。例えばジャズやビートルズは別である)。そしてその仮想現実は「ヘリコプターに乗った演奏者が弦楽四重奏曲を演奏しているのを、電気信号を介して聴くこと」と、それほど変わらないのかも知れない。シュトックハウゼンはそれを言いたかったのかも知れない。が、この作品を聴いていると、彼は、本当に、ヘリコプターを楽器とみなしたのかも、と思えてくる。それが、この作品のすごさだと思う。

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