2017年12月13日 (水)

リスト:巡礼の年 第2年 《イタリア》 《ヴェネツィアとナポリ》/イリーナ・メジューエワ

Mejoueva

フランツ・リスト:
巡礼の年 第2年 《イタリア》 《ヴェネツィアとナポリ》
イリーナ・メジューエワ
2017年録音


私の評価:失敗作。単調:Stars2


フランツ・リストの巡礼の年 第2年 《イタリア》 は、ラファエロ、ミケランジェロ、ペトラルカ、ダンテなどの芸術・文学にインスパイアされた作品集。
しかし、メジューエワは、彼女のタッチを生かしながらも(「ダンテを読んで」「補遺」)
力づくで弾いている。
上記、芸術・文学のイメージが湧いてこない。
これはオススメしない。

追伸)第1曲「婚礼」の冒頭を聴いたときは、良い演奏だと思ったのだが・・・・。


【譜例】

Sposalizio_1
「婚礼」の冒頭(midi


Dante_sonata_1
「ダンテを読んで」 序奏(midi


Liszt_dante_sonata_2
「ダンテを読んで」 第1主題(midi


Dante_sonata_3
「ダンテを読んで」 第2主題(旋律と和音のみ。midi

2017年9月 4日 (月)

イリーナ・メジューエワのフランツ・リスト作曲《巡礼の年 第3年》&《聖ドロテア》

Liszt

フランツ・リスト作曲《巡礼の年 第3年》&《聖ドロテア》
イリーナ・メジューエワ
2017年録音


【収録情報】
リスト:
● 『巡礼の年』第3年 S.163(全7曲)
● 聖ドロテア S.187

 イリーナ・メジューエワ(ピアノ)

 録音時期:2017年4月8,9日
 録音場所:富山県魚津市、新川文化ホール
 録音方式:ステレオ(DSD/セッション)

(HMV.co.jp より)


私は、フランツ・リストの《巡礼の年 第3年》は苦手だったが、このアルバムを聴いてその全体像が初めて分かったような気がする。この演奏は、いかにもメジューエワらしく旋律優先・・・そして不安定な和声も効果的に聞こえる。彼女は楽想が変化するとき「間」を入れる(第1曲)←「それはやり過ぎではないか」と思われるリスナーもあると思うが、その「間」のお陰で私には楽曲の流れが見えた(!)。他方、激しくデモーニッシュな《技巧》も十分(第2曲)。

そもそも、このアルバムはメジューエワの最盛期を表すというより、瑞々しさを表す。そして、このアルバムは彼女の《技巧》よりも、リスナーの聴覚を捕らえる《自然な表現力》と《自由な解釈》が魅力なので「リストはかくあるべし」という先入観なしに聴くのが良いと思う。とは言うものの過去にフランツ・リストを超名演した巨匠たち(ホロヴィッツ、アルゲリッチ)の演奏に比べれば半歩譲るという意味で、このアルバムに対する私の評価は、辛いが星4.5。
でも気に入った^^

【ライナノートより】
「…低音のふとい和音から、こまかく繊細なパッセージまで、しっかりピアノを響かせ、鳴らしきっている。その歩みは作曲家の孤独な後姿さえ髣髴とさせる。とくに第6曲の後半、trionfare(勝利を告げるように)の神々しい昂揚感は圧巻だ。それはリストその人の苦悩と偉大を結晶化したかのような音楽だ」 國重 裕

上記は的を射ている。

2016年10月 8日 (土)

Sophie Pacini plays Beethoven and Liszt Solo Piano

Pacini

Sophie Pacini
Beethoven / Liszt
2016年3月録音
Piano: Steinway
Warner Calssics

Ludwig van Beethoven 1770-1827
Sonata No. 21 in C Major, Op. 53 "Waldstein"
01 I. Allegro con brio [11.04]
02 II. Introduzione. Adagio molto [4.05]
03 III. Rondo: Allegretto moderato - Prestissimo [9.53]

Franz Liszt 1811-1886
Consolations, S172
04 I. Andante con Moto - [1.37]
05 II. Un poco piú mosso [3.56]
06 Ouvertüre zu Tannhäuser von Richard Wagner, S442 [16.34]
07 Réminiscences de Don Juan, S418 [17.07]
08 Liebestraum No.3 in A-flat Major, S541/3 [5.03]
09 Hungarian Rhapsody No. 6 in D-flat Major, S244/6 [7.18]

Total Time [76.40]

・・・

【収録情報】
● ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第21番ハ長調 Op.53『ワルトシュタイン』
● リスト:コンソレーション第1番 S.172-1
● リスト:コンソレーション第2番 S.172-2
● リスト:ワーグナーの歌劇『タンホイザー』序曲によるコンサート用パラフレーズ
● リスト: 『ドン・ジョヴァンニ』の回想
● リスト:『愛の夢』第3番
● リスト:ハンガリー狂詩曲第6番

 ソフィー・パチーニ(ピアノ)

 録音時期:2016年3月21-24日
 録音場所:ブレーメン放送ホール
 録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)

(HMV.co.jp より)

・・・

私はこの人(ソフィー・パチーニ)を客観的に評価することができない。なぜなら、私は、この人を、ひいきし過ぎているからである。
彼女が過去に世に出したアルバムは三つある。一つ目はモーツァルトとシューマン(2011年録音、ONYX)だが、私は、それをほとんど聴いてない。二つ目は、シューマンとリスト:ロ短調ソナタ(2012年録音、Avi Music)←「(このアルバムのリスト:ロ短調ソナタは)ミハエル・シューマッハのように前のクルマをスイスイと追い越すテクニックと冷静さを持っていると思う」。三つ目は、ショパン:ピアノ独奏曲集(2013年録音、Avi Music)であるが、これは、バラード4番は良かったが、幻想ポロネーズは悪かった。

さて、今回のパチーニの「ベートーヴェン:ワルトシュタイン&リスト:ピアノ独奏曲集(2016年録音、Warner Calssics)」。←HMV のページに「ソフィー・パチーニ、ワーナー・クラシックス専属契約第1弾!」と書いてある・・・つまり、このアルバムは、パチーニの、おそらく「ONYX」「Avi Music」から「ワーナー・クラシックス」への移籍&メジャー・デビューなのだろう。

● ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第21番ハ長調 Op.53『ワルトシュタイン』について
アリス=紗良・オットが、「ピアノ・ソナタ第21番『ワルトシュタイン』ハ長調、第3番 ハ長調、アンダンテ・ファヴォリ」において、ベートーヴェンの2曲のハ長調ソナタを選曲し、そして、「『アンダンテ・ファヴォリ』はもともと『ワルトシュタイン』の第2楽章として作曲された作品…(HMV.co.jp の商品説明より)というコンセプトのうちに、そのアルバムをまとめたのは、立派だった。

アリス=紗良・オット(1988年8月1日生まれ)と、パチーニ(1991年12月12日生まれ)は、歳の差、約3年4ヶ月・・・あ〜、二人とも若い(2016年10月現在、前者が28才。後者が24才)。「ワルトシュタイン」録音時の年齢は、前者が22才の時、後者が24才(若い!)。この二人のそれぞれの「ワルトシュタイン」において、24才の時のパチーニの演奏が強烈(パチーニの第1楽章コーダ、9分56秒、デカい音がする)、且つ、粗いのに対し、22才の時のアリス・紗良・オットの演奏は「大人」だと思う。

アリス・紗良・オットとソフィー・パチーニの「ワルトシュタイン」は似てる。紗良・オットより、パチーニの「ワルトシュタイン」は、確かに、粗い。しかし、どちらも、基本的にドイツ人の演奏だ。すなわち「ワルトシュタイン」という曲はいかにもベートーヴェンらしいしつこさがあるが、この二人はそれを生かしている。ただし、パチーニの方はやや南国的な奔放も聞こえ、パチーニの「ワルトシュタイン」は、上記とは矛盾するが・・・壊れている。その点、紗良・オットの「ワルトシュタイン」のほうが上(!)

※ 例によって、この二人ともこのソナタの第3楽章のコーダ、第464小節にて「オシア」を鮮やかに弾いてる(下記)。

● 「リスト:ピアノ独奏曲集」について
パチーニのリスト独奏曲集も、全体的に粗い。その中で「ワーグナー/リスト編『タンホイザー』序曲」は、最高の演奏だろう。それは、グールドの「ベートーヴェン/リスト編:交響曲第5番」に比較しても負けない・・・否、やっぱり、グールドのほうがうまい! グールドのほうが格が上!・・・「パチーニがグールドに負けない」というのは、パチーニを過大評価!←パチーニには迷惑!←あらら〜、ひいきのひきだおしだ(汗;;

Beethoven_op_53_2_01_02_2
第464小節(midi)とオシア(もう一つの弾き方。midi

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【Apple Music】

Pacini_02_2
(C) Apple Music 検索キーワード:Beethoven Sophie Pacini
【注】 残念ながら、トラック10(Consolations, S172/3)は、私が購入したCDには、何故か入っていない。

・・・

追記)それにしても、このパチーニのニュー・アルバムは豪快で激しい!

2016年8月20日 (土)

【Apple Music】 発売前のアルバムは1曲しか試聴できない。参考にならない/不完全/しかし、それが当然か/ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル ザ・ビートルズ/ワンダーランド アリス=紗良・オット/ベートーヴェン、リスト:ピアノ作品集 ソフィー・パチーニ

Beatles
(C) Apple Music
ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル ザ・ビートルズ Live at the Hollywood Bowl the Beatles(9月発売予定)
白文字で強調された1曲目「Twist and Shout (Live)」のみ試聴可能。

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Sara_ott
(C) Apple Music
ワンダーランド アリス=紗良・オット Alice Sara Ott(9月発売予定)
黒文字で強調された「グリーグ:Pf 協奏曲 第2楽章」のみ試聴可能。

・・・

Pacini
(C) Apple Music
ベートーヴェン、リスト:ピアノ作品集 ソフィー・パチーニ Sophie Pacini(9月発売予定)
白文字で強調された9曲目「ハンガリー狂詩曲 S.244」のみ試聴可能。

2016年6月13日 (月)

ユリアンナ・アヴデーエワ plays モーツァルト、ショパン、リスト

・ショパン:幻想曲 ヘ短調 作品49

譜例1の1 序奏(葬送行進曲風。「問いかけ・呼びかけ」と「応答」。midi

Chopin_49_1_2

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譜例1の2 序奏(後半、2分の2拍子の始まり。midi

Chopin_49_7_2

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譜例2 第1主題(問いかけ・呼びかけ。シンコペーションが効いている。midi

Chopin_49_2_new_new

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譜例3 第2主題(応答。明るい。midi

Chopin_49_3_new_new

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譜例4 第3主題(最初の2小節が「問いかけ・呼びかけ」、後の2小節が「応答」。midi

Chopin_49_4_new_new_new

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譜例5 第4主題(陽気な行進曲。midi

Chopin_49_5_new_new_2

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譜例6 レント・ソステヌート(midi

Chopin_49_6_new_new

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譜例7 アダージョ・ソステヌート(最後から13小節目以降。ショパンが言いたかったのは、これじゃないかと思う。midi

Chopin_49_8_new_2

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この曲は、作曲家とジョルジュ・サンドの間の喧嘩と仲直りを描いたものであるという逸話がある。それはリストが、有名なピアニストのヴラディミール・ドゥ・パッハマンに、ショパン自身から彼が聞いたものであるといって(ブログ開設者注:要するにリストが話した逸話)、語ったことによっている。それは、ある憂鬱な日が暮れかかるころ、突然だれかが彼(ブログ開設者注:ショパン)の部屋の扉をたたいた。幻想曲のはじめの2小節はその音を描いたもので第3、第4小節は、ショパンの、「お入りなさい、お入りなさい」という招きを表わしているという(譜例1)。扉が開かれると、リスト、ジョルジュ・サンド、カミーユ・プレイエル夫人などが、行進曲の厳粛な拍子に合わせて入ってくる。激しい3連音の伴奏に乗って、ショパンは不平をヘ短調の神秘的な歌で訴える(譜例2)。彼と争っていたサンドは彼の前にひざまづいて許しを乞い、旋律はただちに訴えるような変イ長調の部分になってくる(譜例3)。ハ短調に変わってから調子はしだいに荒れてゆき、頂点に達する。第2のマーチ(譜例5)によって闖入者(ちんにゅうしゃ)たちは、すみやかに退場する。ロ長調のレント・ソステヌートの部分(譜例6)でショパンのかき乱された気持ちが一時しずまるのである。リストは以上のようなことをショパン自身が語ったとしていい伝えているというが、真偽のほどは明らかでない。知られた逸話なので一応紹介したが、ショパンの音楽は本質的に描写的に捉えられるものではないし、音楽は聞き手のだれもが、自ら意味をくみ取るべきで、とくに純粋に美しいものでは、このような解説は、その真の鑑賞を妨げるのである。(作曲家名曲解説ライブラリー ショパン 243ページより)

上の逸話が、リスナーにとって「ショパン:幻想曲 ヘ短調 作品49(以下、Op. 49と略す)」の鑑賞に役に立つのは、同作品が、トリスタンとイゾルデの動機のように「問いかけ・呼びかけと応答」という統一性を持つことを表わしていること。すなわち、序奏の冒頭(譜例1)はもとより【注1】、第1主題と第2主題、それから、これは私の解釈だが、ユニークな楽想の第3主題(譜例4)・・・それでさえも、問答であると私には聞こえる。

結論を書く。「Op. 49」は「舟歌 Op.60」あるいは「子守歌 Op.57」、そして、《その幻想性において他に類をみない、前人未踏【注2】》の「幻想ポロネーズ Op. 61」などに対して独創性においてはショパンの作品中、過渡的な作品だと私は思う。「Op. 49」は(幻想曲なのに)ソナタ形式で書かれ【注3】、(幻想曲なのに)同じ主題が繰り返され、全曲のコンテキストは、あえて言えば「ワンパターン」(下記)。そして、「Op. 49」は(幻想曲なのに)明快さを持つように思える。

再現部 第235〜309小節。呈示部の4つの主題の再現だが、いずれもそれぞれ5度下の調に移されている。(作曲家名曲解説ライブラリー ショパン 243ページより)

さらに、誤解を怖れずに言えば、《幽玄》《夢幻》という点では、例えば(どの曲とは言えないが)ショパンの後期「ノクターン」あたりの方が、この「Op. 49」よりも勝っているような気がする。そして、むしろ「Op. 49」の魅力は(性差別的表現だが)その男性的力強さと「技巧」にあるような気がする。

「Op. 49」は、各主題の対照が、確かに、巧くつなぎ合わされてはいるが、序奏(譜例1の1)の行進曲は、そのリズムが「ショパン:ソナタ第2番《葬送》」の第3楽章のそれに似ているので、葬送行進曲を想起させる(つまり陰鬱)。が、第2の行進曲(譜例5)は、序奏の行進曲に比べ、その真逆の陽気さが「過ぎる」かも知れない・・・あるいは、まあ、同じことだが、第2の行進曲は、第1の行進曲とは、そのコントラストがあからさま過ぎるかも知れない【注4】。「レント・ソステヌート(譜例6)」は「幻想ポロネーズ」の第2部開始のコラール風間奏「ピウ・レント(譜例8)」に比べて弱いと私は思う。

ちなみに、序奏(後半)譜例1の2は、「Op. 49」の楽想の流れをつなぐ接着剤のような効果・役割を持っている・・・と同時に、それは、この「Op. 49」にて大活躍する重要なパッセージである・・・しかも、この作品のヴィルトゥオージティを自然に流すための効果・役割を持っていると思う。

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譜例8 ピウ・レント(幻想ポロネーズ:第2部開始のコラール風間奏、midi

Chopin_49_9_2

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「Op. 49」は、ショパンにしては珍しく分厚い和音が、彼の他の傑作に比べて目立つような気がするのだが・・・どうだろうか。すなわち、「Op. 49」は、ある意味、技巧に走っていると私は受け止めた。

そして、結局、ショパンが、言いたかったのは、最後から13小節目以降のエンディング(譜例7)ではなかったか・・・ただし、それも、ショパンの音楽に聞かれる《幻想》の昇華されたエクスタシーとしては弱いし、出番が遅すぎる・・・と私は思う。

【注1】 譜例1は「主題を導くただのイントロ」&「主題」じゃないかと思う人もあると思うが、それは4回も奏されるのだから、そのしつこさは、やっぱり「問いかけ・呼びかけと応答」の「しつこさ」であろう。

【注2】 ショパンの「幻想ポロネーズ」が前人未踏の幻想曲なら、シューマンの「幻想曲 ハ長調 Op. 17」も前人未踏の幻想曲ではないかという人があるだろう。私は、それを否定しない。しかし、モーツァルトの「幻想曲 ニ短調 K. 397」「幻想曲 ハ短調 K. 475」を、幻想曲の《モデル》とするならば、確かに、前者も後者も、モーツァルトの「幻想曲」とは、かけ離れているが、後者はかけ離れ過ぎている。

【注3】 ただし、幻想曲だからといってソナタ形式で書かれないということはない。同時代に書かれた上記「シューマン:幻想曲 ハ長調 Op. 17」の第1、3楽章は「自由なソナタ形式」とある(作曲家名曲解説ライブラリー シューマンより)

【注4】 この第2の行進曲を、初めて聴いた時、マイスタージンガーの行進曲みたいに聞こえた。


<--- レビュー ココから --->

Yulianna

Chopin. Mozart. Liszt
Yulianna Avdeeva, piano
Recorded at the Reitstadel, Neumarkt (Germany) from 28 to 30 September 2015
Piano: Steinway D
(P) & (C) 2016 MIRARE, MIR 301

01. Chopin, Fantaisie in F minor op.49 12’39

Mozart, Piano sonata No.6 in D major K.284
02. Allegro 7’41
03. Rondeau en Polonaise. Andante 4’24
04. Tema con variazione 14’34

05. Liszt, Après une lecture du Dante - Fantasia quasi sonata 15’23

06. Liszt, Aida di Giuseppe Verdi - Danza sacra e duetto finale S.436 12’12

・・・

【収録情報】

● ショパン:幻想曲 ヘ短調 op.49
● モーツァルト:ピアノ・ソナタ第6番ニ長調 K.284
● リスト:『巡礼の年』第2年『イタリア』〜ダンテを読んで-ソナタ風幻想曲
● ヴェルディ/リスト編:『アイーダ』より神前の踊りと終幕の二重唱 S.436

ユリアンナ・アヴデーエワ(ピアノ)

録音時期:2015年
録音場所:ノイマルクト、ライツターデル
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
日本語解説付き

(HMV.co.jp より)

・・・

私の評価:ショパンが良くないので、星3つ

・・・

・ショパン:幻想曲 ヘ短調 作品49
2010年のショパンコンクールにて、ユリアンナが、第2次予選で弾いた曲。この曲は、彼女の十八番と言っていいだろう。そして、彼女は、「ショパン増刊 第16回ショパン国際ピアノコンクール 2011年01月号」の中で、次のように述べている:

「幻想曲の最初の2ページはこの作品の根幹です。曲が速いテンポになってからも最初のゆっくりの行進の部分が中心モチーフにあるのです。その提示には、深い意味づけが必要です。人間性や民族性といった何か普遍的な大切なものがあるはずなのです。」

ユリアンナの、おそらく適切な解釈(上記)にも関わらず、私は、彼女のこの演奏は、好きではない(面白くない)。彼女の演奏には、上に述べた「男性的力強さ」と「技巧」が足りない。その点(非常に古い録音だが)ホロヴィッツや、メジューエワ(ショパン・リサイタル 2010)や、マリラン・フランスコーヌ(展覧会の絵&ショパン)の演奏の方が良いと思う。確かに、ユリアンナの演奏にも、ヴィルトゥオージティはある。しかし、彼女は「技巧」より「解釈」を重視しているように聞こえる(私は、その逆が良いと思う)。

・モーツァルト:ピアノ・ソナタ第6番 ニ長調 K.284《デュルニッツ》
このモーツァルトはグレン・グールドのように、痛快(!)・・・グールドとユリアンナとはまったく芸風は異なるが・・・。

・リスト:ダンテを読んで - ソナタ風幻想曲
この演奏は、私は、好きです。
「音楽の悪魔」の異名を持つ三全音(序奏)、および、技巧的・複雑なリズムによるこれまた悪魔的第1主題(統一主題的第1主題の展開)の充溢。大音量で聴くと気持ち良い。

・リスト:ヴェルディ「アイーダ」より - 神前の踊りと終幕の二重奏
リストは、長寿だね。「アイーダ」の1871年初演・1878年出版まで、リスト(1811年10月22日 - 1886年7月31日、享年74才)が、生きていたとは知らなかった。

・・・

・リスト:ダンテを読んで:序奏(midi
Dante_sonata_1

・リスト:ダンテを読んで:第1主題(midi
Liszt_dante_sonata_2

<--- レビュー ココまで --->

2016年3月22日 (火)

クラシック音楽に、嗜好や思想などを超えた《客観的評価》というものが存在するのか?/アンジェラ・ヒューイットの「ダンテを読んで」/クレール=マリ・ル・ゲの「ペトルーシュカからの3楽章」

Hewitt

Franz Liszt (1811-1886)
Piano Sonata
Dante Sonata
Petrarch Sonnets
Angela Hewitt (piano)
Recorded in Jesus-Christus-Kirche, Berlin, on 19-22 May 2014
Piano FAZIOLI
Hyperion Records

--

私は、エントリー http://koshiro-m.cocolog-nifty.com/blog/2015/03/post-db13.html にて、

「とにかく、ヒューイットの(リスト:)「ダンテを読んで」は、《カッコイイ》」

と、書いた。そして、私は、そのエントリー(記事)と同一文章を、アマゾンJP にカスタマーレビューした(下記)。

>1 人中、0人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています(2016年3月22日現在)。
>5つ星のうち 4.0 「ロ短調ソナタ」はイマイチ。「巡礼の年第2年」は良い(特に「ダンテを読んで」が良い), 2015/3/13
>投稿者 KM

そして、よく見たら、某投稿者さんも、同商品のカスタマーレヴューで、リスト「ロ短調ソナタ」を貶しているが「ダンテを読んで」だけは褒めている:

「ただし、唯一の救いは、ソナタと共に併録されたソナタ風幻想曲「ダンテを読んで」の演奏が聴き映えがすることだけである」

これは、偶然の一致か? 必然か?

--

当ブログ前エントリーにおけるル・ゲの『ペトルーシュカからの3楽章』においても、私の評価と、アマゾンJP カスタマーレビューアーさんの評価に、上記と同様の評価の一致を見ている。すなわち、私の評価:

「ブニアティシヴィリより、ル・ゲの『ペトルーシュカからの3楽章』のほうがベター」

と、アマゾンJP のカスタマーレビューアー the Cat さんのレビューにおける同曲同演奏に対する評価:「ダフニスとクロエ」ピアノ独奏版を貶しているのに:

「ペトルーシュカからの3楽章」は(中略)なかなかどうして、かなり良い出来なのではないかと思います」

は、(完全ではないが)一致した。←クラシック音楽に、嗜好や思想などを超えた《客観的評価》というものが存在するのだろうか?

==

【余計なこと】

ヒューイットは、技巧が衰えないうちに、リスト:ロ短調ソナタを録音したのか?

==

【なお、ヒューイットのリスト:「ダンテを読んで」は、Apple Music にない】

2015年3月13日 (金)

アンジェラ・ヒューイットの「フランツ・リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調、ペトラルカのソネット第47、104、123番、ソナタ風幻想曲《ダンテを読んで》」

Hewitt

Franz Liszt (1811-1886)
Piano Sonata
Dante Sonata
Petrarch Sonnets
Angela Hewitt (piano)
Recorded in Jesus-Christus-Kirche, Berlin, on 19-22 May 2014
Piano FAZIOLI
Hyperion Records

Piano Sonata in B minor S178 [34'23]
01. Lento assai [13'20]
02. Andante sostenuto [7'52]
03. Allegro energico [1'55]
04. Allegro energico - Più mosso [6'16]
05. Andante sostenuto [4'56]

06. Sonetto 47 del Petrarca S161/4 [6'24]

07. Sonetto 104 del Petrarca S161/5 [7'35]

08. Sonetto 123 del Petrarca S161/6 [7'58]

09. Après une lecture du Dante - Fantasia quasi Sonata S161/7 [18'15]


【収録情報】

フランツ・リスト:

● ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178
● 巡礼の年第2年『イタリア』より〜ペトラルカのソネット第47番 S.161-4
● 巡礼の年第2年『イタリア』より〜ペトラルカのソネット第104番 S.161-5
● 巡礼の年第2年『イタリア』より〜ペトラルカのソネット第123番 S.161-6
● 巡礼の年第2年『イタリア』より〜ソナタ風幻想曲《ダンテを読んで》S.161-7

 アンジェラ・ヒューイット(ピアノ/ファツィオーリ)

 録音時期:2014年5月19-22日
 録音場所:ベルリン、イエス・キリスト教会
 録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)

(HMV.co.jp より)

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私の評価:★★★★☆

私の評価は、このアルバムの「ロ短調ソナタ」が決定版ではないので、星4つ。すなわち、「ロ短調ソナタ」はイマイチ。「巡礼の年第2年」は良い(特に「ダンテを読んで」が良い)。

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忘れないで書いておこう。このアルバムは、音が良い。

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・「ロ短調ソナタ」について(アルゲリッチ、カティア・ブニアティシヴィリ、ヒューイットの演奏を比較して)

アルゲリッチ、カティア・ブニアティシヴィリ、ヒューイットの「ロ短調ソナタ」を比較した場合、ブニアティシヴィリの演奏は、楽想の変化、すなわち、リストが指示した発想標語や転調による楽想の変化において、音楽の流れが「切れる」。それに対して、アルゲリッチの演奏は「切れない(アルゲリッチは楽想の変化にうまく対応している)」。すなわち、アルゲリッチの演奏は、音楽の流れが「切れない」で突っ走っていく。アルゲリッチの「流れ」は自然だ。リストの「ロ短調ソナタ」は、複雑な作品であるが、決して停滞するような音楽ではない。アルゲリッチの演奏は《ソナタ全体が自然に切れ目なく流れる》。その方が、ブニアティシヴィリの恣意的な演奏より良いに決まっている。

ヒューイットの演奏は、論理的であるが、コノ作品が持つ《情緒の起伏》への対応に弱いと思う。すなわち、ファツィオリを弾くヒューイットは、スタインウェイを弾くアルゲリッチに比べて「ロ短調ソナタ」の音楽的な変化への対応に弱いと思う。

ヒューイットの「ロ短調ソナタ」について書く前に、この作品のアナリシス(作品分析)を、おさらいしておこう。

1 - 7:枠
8 - 13:跳躍動機
13 - 17:(ピアノの)ハンマー音
18 - 29:跳躍動機成分
30 - 39:跳躍動機成分とハンマー音(拍子を交替させながら)
40 - 44:跳躍動機成分
45 - 54:自由な上昇音形
55 - 81:継続を伴う跳躍動機
82 - 104:枠(バスにて)

上記から傍系主題が始まる

105 - 119:グランディオーソ(壮大に)の動機(2分の3拍子、傍系楽章の第1動機)
120 - 140:跳躍動機(再び4分の4拍子で)
141 - 152:ハンマー音
153 - 170:ハンマー音(音価2倍)(傍系主題の第2動機)
170 - 190:跳躍動機成分(バスに)
190 - 196:ハンマー音(音価2倍)と枠
197 - 204:短いソロカデンツァ
205 - 231:跳躍動機と反行
232 - 238:ソロカデンツァ
239 - 254:カデンツァ 伴奏付
255 - 269:ハンマー音成分(カデンツァ成分を伴って)
270 - 277:跳躍
278 - 286:枠
286 - 296:継続を伴う跳躍動機
297 - 300:グランディオーソの動機(2分の3拍子)
301:レチタティーヴォ(自由な拍子で)
302 - 305:グランディオーソの動機(2分の3拍子)
306 - 310:レチタティーヴォ
310 - 314:ハンマー音
315 - 318:跳躍動機成分
319 - 330:ハンマー音 拡大された音価の跳躍動機(右手)を伴って

ここからテンポが遅い中間楽章が始まる

331 - 348:叙情的なアンダンテ・ソステヌート - 旋律主題(4分の3拍子)
349 - 362:ハンマー音(音価2倍)カデンツァ成分を伴って
363 - 380:グランディオーソの動機(音価半分)
381 - 384:跳躍動機への接近
385 - 394:跳躍動機
395 - 415:変奏されたアンダンテ・ソステヌート - 旋律主題
415 - 432:パッセージ 枠成分(バスの下降音形)を伴って
433 - 445:ハンマー音(音価2倍)
446 - 459:枠

ここから再現部が始まる

460 - 523:跳躍動機とハンマー音によるフガート
524 - 530:跳躍動機(16分音符の技巧的な走句が続く)
531 - 540:跳躍動機(ハンマー音と交替しながら・その後、16分音符が続く)
541 - 554:16分音符
555 - 569:和音と16分音符
569 - 581:跳躍動機(バスにて下降音階と交替しながら)
582 - 599:パッセージとハンマー音
600 - 615:グランディオーソの動機の再現(600小節以降はこの動機はロ長調で演奏)
616 - 650:ハンマー音(音価2倍)ソロカデンツァが続く

ここからコーダであると分離することができる、すべての重要な動機が逆の順番で現れる

650 - 672:ストレッタ:ハンマー音(音価2倍)、跳躍動機成分
673 - 681:プレスト:4分音符の下降音形
682 - 699:プレスティッシモ:和音と8分音符
700 - 710:グランディオーソの動機(2分の3拍子)変奏を伴う(伴奏は1拍に8分音符4つではなく、4分3連符で)
711 - 728:叙情的なアンダンテ・ソステヌート - 旋律主題が再現する(4分の4拍子)
728 - 736:オリジナルのハンマー音(バスにて、ロ長調)
737 - 743:跳躍動機(両手に分担されて演奏、パラレルの8分音符を伴わずに)
743 - 749:和音
750 - 754:枠
755 - 760:終結和音

(ドイツ語版ウィキペディアより)

NHK の「らららクラシック」という番組で、「ショパンには弱点があった」ということが話題になったが、私は、その弱点とは、「(ショパンの)手が大きくなかったこと」ではないかと思った。←やはり私の想像が当たっていた。それに対して、リストは手が大きかったんだろう。←「ロ短調ソナタ」のスコアを見てそう思う(←コノ曲はオクターブ・ユニゾンが多いし、和音も力づくという感じがする)。
ヒューイットもまた、手が大きいんじゃないかと思う。そして指から腕にかけての強い筋力がないと、リストの「ロ短調ソナタ」は弾けないと思う。が、ヒューイットは、ある意味、ソレを余裕をもって弾いているように聞こえる。
ヒューイットの演奏について結論を言うと、彼女は、「331 - 348小節:叙情的なアンダンテ・ソステヌート - 旋律主題(嬰ヘ長調、4分の3拍子)(下記)」を、この作品の中心に据えて、全曲を構成している。←その知的な構成力が、ヒューイットによる「ロ短調ソナタ」の魅力であると思う。
「叙情的なアンダンテ・ソステヌート」は、ヒューイット盤では、トラック2、5で仕切られている。さらに、ヒューイットの演奏では、トラック2の3分43秒あたりで、音楽はクライマックスに達する。←ソコを頂点とすることによって、彼女は、この作品を論理的に聴かせることに成功していると思う。彼女の「ロ短調ソナタ」は、コノ作品の論理性を改めて認識させる演奏だと思う。

【追加】

「ロ短調ソナタ」の上記「叙情的なアンダンテ・ソステヌート」は、アルゲリッチ盤では、トラック5と11に、ブニアティシヴィリ盤では、トラック3にて、仕切られている。

Lisztandantesostenuto
(ドイツ語版ウィキペディアより、midi

・ヒューイットの「巡礼の年第2年」

「まったく大儀なこと」 --- クラーラ・シューマン(ウィキペディアより)

ヒューイットの「ロ短調ソナタ」を聴いて私も、そう思わなくもなかった(すなわち、クラーラ・シューマンが言ったことにうなづける)。

しかし、ヒューイットの「巡礼の年第2年」からの4曲は違う。

「ペトラルカのソネット」において叙情性が生きている。そして、今まで私は、ヒューイットが弾くファツィオリの音を何度も聴いたことがあったが、今回、彼女が弾く「ペトラルカのソネット」を聴いて、初めて、私は、ファツィオリが美しい音を出せるピアノであることを、知ったような気がする。

ヒューイットの「ダンテを読んで」を聴いて、コノ曲は、交響詩のような楽曲だということに気づかされた。ヒューイットの演奏を聴いて思ったこと:「神曲」を読みたくなる。コノ曲は「神曲」を読まないと分からないのかも知れない。
とにかく、ヒューイットの「ダンテを読んで」は、《カッコイイ》。

このアルバムのジャケットの絵は、アリ・シェーフェル(Ary Scheffer)が描いた「神曲」の登場人物フランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタ。

【関連記事】

リストの「ダンテを読んで」聴き比べ(1)

【2016−3−22 余計なこと】

ヒューイットは、技巧が衰えないうちに、リスト:ロ短調ソナタを録音したのか?

2013年7月26日 (金)

リストの「巡礼の年 第2年」聴き比べ(第1曲「婚礼」の謎)

Berman
巡礼の年(全曲)
ラーザリ(ラザール)・ベルマン
1977年録音

Bolet
巡礼の年(1、2年)
ホルヘ・ボレット
1982/83年録音

巡礼の年第2年は、ベルマンとホルヘ・ボレットが気に入った。

私は約30年前に、フランス・クリダの「巡礼の年第2年」を購入した。そして、第1曲「婚礼」を聴いたとき、その美しさに魅せられた。「婚礼」と題する曲が、それまで私が知っていたリストの作品(超絶技巧練習曲、ロ短調ソナタ)とはかけ離れた曲であったのは驚きであり、それを教えてくれた「クリダの演奏がベスト」だと信じた。クリダの「巡礼の年第2年」アナログレコードは火事で焼失した。

それから30年、いま改めて聴くと、ベルマンとボレットが、フランス・クリダおよびラグナ・シルマーを打ち負かしていると思う(私の主観)。

リストの「婚礼」という曲は、どんな言葉を用いても形容できない。
厳粛、厳か、最高の時、時が止まる、宗教的、清らか(聖)、華やか、いずれの形容もピンと来ない。

ラグナ・シルマーの「巡礼の年全曲」のリーフレット(旅日記)には、彼女は題材となったラファエロの「婚礼(Sposalizio)」を間近に見た時、「柔軟さ(tenderness)」「内気さ(shyness)」「もろさ(fragilely)」を感じたと書いている。それは「予期しなかったことだった(I had not expected)」とシルマーは旅日記に書いている・・・。しかし、私には、ラファエロの「婚礼」という絵は遠近法と複雑な構造を駆使した空間にしか見えない(こんな幾何学的な絵が、柔軟で内気でもろいのだろうか?・・・ I had not expected ・・・・・・シルマーもまた戸惑った。つまりシルマーもまたこの絵は柔軟で内気でもろくはないと思っていたのだ)。

ラファエロの「婚礼」は、本当は「聖母」の婚礼ではない(聖母を祝福する天使はいない。聖母に後光が差してない。この聖母は少し老けてる。服装もルネサンス時代風)。背景の建物はおそらく古代ローマの時代のものではない。つまりキリストの時代のものではない。ルネサンス時代のものでもないように見える?(とってつけたような建物だ)。新郎新婦を囲む人々は、まるでエキストラだ(多分、新郎新婦の親戚連中だろう)。新郎新婦を囲む人々と遠方の建物の間に描かれた人々は、この絵の構成するためだけに配置された人間。この絵のモデルは、多分、ラファエロにこの絵を依頼した依頼主(新郎新婦)だろう。

下記は、この絵の構図を表したものである(原画はココ)。

Raffaello_sposalizio_2
(赤線が・・・聖母の上半身を貫く・・・左足を一歩踏み出すヨゼフの重心・・・司祭の身体のほぼ中央を走る・・・3人の視線と指輪に交わる)

私見を書こう。リストは「婚礼」を音楽にしたのではなく、「婚礼」という絵と自分との空間あるいは空気を音楽にしたのだと思う(簡単に言えば、この曲は婚礼の音楽ではなく、婚礼を描いた絵の音楽)。「婚礼」という絵は、論理的かつ斬新な芸術価値と依頼主を満足させる実用的価値を合わせ持つ。そのような両立に、リストは霊感を得、触発されたのだと思う(私の主観)。

この絵の主人公は新郎新婦であるが、もう一人の主人公はラファエロだ。リストの「婚礼」もその主題は婚礼であるが、もう一人の主人公は音楽そのものだと思う。下記「婚礼」の冒頭は、リストが、ラファエロから得たアイデアであり、この曲の中間部の盛り上がりは、リスト自身の精神の高揚だと思う。

Sposalizio_1
「婚礼」の冒頭、単純すぎじゃないか?!(midi

(つづく)

(2013−8−2 更新)

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2013年7月23日 (火)

リストの「巡礼の年 第1年」聴き比べ(オーベルマンの谷)

Vladimir Horowitz 1966 年録音
France Clidat 1968/73
Lazar Berman 1977
Jorge Bolet 1982/83
Alfred Brendel 1986
Leslie Howard 1996
Ragna Schirmer 2010/11
桑原怜子 2011

「オーベルマンの谷」に、はまってしまった。

・ホロヴィッツ
私が一番好きな演奏。
中間部とコーダの爆発的演奏。
しかしこの演奏は強烈なだけではない。ホロヴィッツの左手の伴奏はさすがにうまい。例えば下記(コーダの手前)の左手のアルペジオを美しく弾いている(midi)。

Obermann_7
これは、第1主題の反行形か?

そもそもこの曲は冒頭から、左手が旋律で、右手が伴奏。しかも曖昧な調性(下記参照)。

Obermann_6
冒頭(この和音はジャズのコードで言えば、Am7 か?)

ピティナのホームページに「冒頭の主題の変容から全体が構成されている。主題変容の技法は、彼の革新的な和声法とともにリスト独自の様式を形作っている」と書いてあるが、この曲の和声法は美しくないと思う。テーマがハ長調、ホ長調に行ったと思ったら、次の激しい楽想では不協和音が聞こえるような気がする。

・ラグナ・シルマー
速いテンポ。第25小節目の前の休止が長い。シルマーの演奏は、他の箇所の休止も長いような気がする。全体的になんとなく堅い。リストのイレギュラな形式に対する解釈が中途半端か? しかし、本人は確信をもって演奏しているようだ。お手本にならない演奏であるのが良い。

・桑原怜子
つぼみ。または花を咲かせないつぼみに終わるかも・・・。彼女は、経歴にふさわしい技巧を持っている(経歴参照)。しかし、彼女と同世代のピアニストは、うまい人が多い(アリス=紗良・オット、ソフィー・パチーニ)。その人たちに比べると力不足が見える。
このCDは売っぱらおうかと思った。
だが、「オーベルマンの谷」が良かった。「オーベルマンの谷」という曲は巨匠が演奏するより未完成なピアニストが演奏するほうが面白いのかも知れない。桑原怜子が奏する「オーベルマンの谷」中間部のクライマックスはホロヴィッツの演奏に少し似ているのが気に入ったし・・・(中略)・・・スペイン狂詩曲はこの人の十八番か? 指がよく回っている。

Kuwahara
リスト:「巡礼の年(巡礼の年報)・第1年<スイス>(S.160)」全曲/桑原怜子

2013年7月16日 (火)

リストの「巡礼の年 第1年」聴き比べ(2)

Berman

巡礼の年(全曲)
ラーザリ(ラザール)・ベルマン
1977年録音

・第1年
荘重な曲は荘重に、牧歌的な曲は牧歌的に演奏している。
第1曲の荘重な「ウィリアムテル」と、第2〜4曲の対比がある。
たしかに、「ル・マル・デュ・ペイ」はうまい。そして、「ジュネーヴの鐘」でうまく締めくくっている。
模範的な演奏。しかしまとまりはない。基本的に技巧で演奏している。題材がイメージできない。魅力ない。

--

France_clidat

リスト:ピアノ作品集(14CD)
フランス・クリダ
1968/73 年録音

・第1年
多分、クリダが35才ぐらいの時の演奏。若々しい演奏。
ベルマンに比べれば粗いが、彼女の演奏を「粗い」と言うと、リストは弾けないと思う。「ル・マル・デュ・ペイ」でやっと盛り上がるベルマンの演奏は大人しすぎる。乱れるべき時は乱れないと面白くない。たとえば、クリダの第5曲「嵐」は強烈であり、第6曲「オーベルマンの谷」も激しい(ホロヴィッツと解釈が似ているかも)。この第1年は、若干不安定で散漫かも知れないが、この第1年は、作品に「対応」した演奏であり、彼女は題材に応じた演奏をしていると思う。

(つづく)

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