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2016年12月17日 (土)

シモーネ・ヤングの「ブルックナー:交響曲全集」を少しずつ聴く(第6番)

http://koshiro-m.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-41cd.html の続き

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Bruckner_2

Anton Bruckner (1824-1896)
Sinfonie Nr. 6 in A-Dur (1881) WAB 106
Philharmoniker Hamburg
Simone Young
2013年ライブ録音
2014年発売

・・・

【収録情報】

● ブルックナー:交響曲第6番イ長調 WAB106 (1881)

第1楽章:Majestoso [15:26]
第2楽章:Adagio: Sehr feierlich [16:08]
第3楽章:Scherzo: Nicht schnell - Trio. Langsam [8:36]
第4楽章:Finale: Bewegt, doch nicht zu schnell [14:24]
合計演奏時間 54:37

ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団
シモーネ・ヤング(指揮)

録音時期:2013年12月14-16日
録音場所:ハンブルク、ライスハレ
録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)
Recording Engineer: Jens Schunemann
SACD Authoring: Ingo Schmidt-Lucas, Cybele AV Studios
SACD Hybrid
CD STEREO/ SACD STEREO/ SACD SURROUND

(HMV.co.jp より)

・・・

以下の譜例などは、作曲家別名曲解説ライブラリー5「ブルックナー」より引用。(KM)

第1楽章 マエストーソ イ長調 2分の2拍子。ソナタ形式。ヴァイオリンが同音で特徴あるリズムをきざむなかで(譜例1)、低音弦が線のふとい気品のある第1主題をブルックナー開始の様式で呈示する(譜例2)。

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【譜例1】 第1楽章 開始のポリリズム(midi

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【譜例2】 第1楽章 第1主題(midi

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【譜例3】 第1楽章 第2主題(midi

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【譜例4】 第1楽章 第3主題 この主題(第2主題、譜例3)では、大きな音程の飛躍が特徴になっている。対位法的にこの主題を確保したのちに、短い経過句で力を増し、ff に達したところで、力強く第3主題(譜例4、midi)をだす。【当ブログ開設者より。私は、当初、このフォルティッシモの第3主題を好きでなかったが、いまは、ユニークで面白いと思っている】

・・・

第2楽章 アダージョ 「きわめて荘重に(Sehr feierlich)」 ヘ長調 4分の4拍子。ソナタ形式。ブルックナーの緩徐楽章としては、短い部類にぞくするが、気品のある柔和な光を持つ美しい楽章である。まず、ヴァイオリンが幅ひろく第1主題をだす(譜例5)。オーボエが、まもなくその上で美しい歌を奏する(譜例6)。このあたりの調性の変化はおもしろい。ff に達してから、木管とホルンが残る。するとまもなく、あかるいホ長調で、ヴァイオリンとチェロが対位法的に第2主題を示しだす(譜例7)。生ける者の幸福感をうたったともいう人もいる。

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【譜例5】 第2楽章 第1主題(midi

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【譜例6】 譜例5に続くオーボエの主題(midi

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【譜例7】 第2楽章 第2主題 この両声部の旋律は、つぎつぎといろいろな楽器にとられてゆく。速度がラールゴにおち、ゆったりとした気分をだしてゆく。すると第1ヴァイオリンが葬送行進曲ふうの第3主題を静かに示しだす(譜例8)(midi

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【譜例8】 第2楽章 第3主題(midi

第3楽章は省略します。

第4楽章 フィナーレ 「運動的に、速すぎずに(Bewegt, doch nicht zu schnell)」 イ短調 2分の2拍子。ソナタ形式。全曲の総括にあたり、情熱的である。第1主題で開始されるのではなく、序奏が先行している。ヴィオラのトレモロと、低音弦のピッツィカートの上で、ヴァイオリンがゆったりとなめらかな旋律(譜例9)をだす。この旋律をもう一度ニ短調で繰り返してから、ようやく第1主題がホルンで力強く呈示される(譜例10)。

Bruckner_6_4_0
【譜例9】 第4楽章 序奏(midi

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【譜例10】 第4楽章 第1主題(midi

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【譜例11】 第4楽章 第2主題 ヴァイオリンで対位法的に(第2ヴァイオリンが主役)第2主題が出る(譜例11、midi)。これに対位するヴィオラの動きも美しい。喜ばしげで幸福そうな主題である。もう一度繰り返されて確保されてから、曲の経過部へと導いてゆく(第1ヴァイオリン、midi)(第2ヴァイオリン、midi)。
(【当ブログ開設者より】第4楽章 第2主題のあとの旋律は、ワーグナーの「愛の死」に似ているような気がする)。この経過部は第2主題の第2ヴァイオリンの動機をとって力を増してゆく。その頂点で第3主題が出現する。

Bruckner_6_4_3_1_temp
【譜例12】 第4楽章 第3主題は、管によるおおらかなものと(譜例12)オーボエとクラリネットの奏する歯切れのいい軽やかなもの(譜例13)とからなる。(midi

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【譜例13】 第4楽章 第3主題(midi

・・・

結論から書くと、ブルックナー交響曲第6番は、難しい。私の理解力を超えている。

・・・

ブルックナー:交響曲第6番
ティントナー盤、ケント・ナガノ盤、シモーネ・ヤング盤を比べる。

演奏時間比較
17:07+18:54+9:00+14:44=59:47(ティントナー)
16:47+17:08+8:26+14:15=56:38(ナガノ)
15:26+16:08+8:36+14:24=54:37(ヤング)

・ティントナー盤
ティントナーのブル6が、おそらく、名演だと思う。ティントナーのブル6は「次々に現れるブルックナーの、雄弁過ぎない旋律の流れ」と「作品の楽想」が、よく聞こえ、よく見える。たとえば、第1楽章の展開部(第1主題回転、7分10秒)のたっぷりした演奏、同楽章再現部の第3主題の力強い再現(12分52秒)、第2楽章のゆったりした演奏などが、贅沢なリスナーの好みに合いその欲求を充たすだろう。そして、ティントナーの指揮によって、同交響曲の形式の美だけではなく、形式の面白さ、簡潔さ(!)が、聴けると思った・・・が・・・第4楽章だけは楽想が複雑過ぎて、ティントナーの指揮をもってしても、粗く聞こえる(?)

・ケント・ナガノ盤
悪い演奏ではないのだが、ナガノのスキルの割には退屈させられる。演奏は、手堅い。ティントナー盤に比べると、スピーディー、且つ、メリハリと切れがある。その反面、作品の性格、楽想の流れを捕らえきっていないのかも知れない。退屈する。

・シモーネ・ヤング盤について
HMV.co.jp の商品説明に「派手な効果にこそ欠けるものの、独特の質実剛健な味わいと深い情感を持つ内面性豊かな…」と書いてあったので、それは、このアルバム、すなわち「シモーネ・ヤング指揮 ブルックナー:交響曲第6番」に対する評価かと思ったら、そうではなくて、作品(ブル6)そのものについての説明だった。

上記のように、シモーネ・ヤングのブル6を「派手ではない」「質実剛健」「内面性豊か」と評価してもよかろう・・・また、その逆も真なり・・・すなわち、シモーネ・ヤングのブル6は「派手」であり、それ故「質実剛健とは言えない」そして「内面性豊か」というより「内面性だけではない」とも指摘できるかも知れない。

第2楽章が良い。
彼女の指揮する第2楽章の、おそらく展開部(8分19秒の休止から10分00秒あたりまで)のエクスタシーが美しい。さらに、その後の、第2楽章第2主題(譜例7)再現も美しい。そして、また、さらに、彼女は「ブルックナーの書いたスケルツォのなかで、最も美しいもののひとつにかぞえられる第3楽章(作曲家別名曲解説ライブラリー5「ブルックナー」87ページより)を、少しマーラーっぽく、のどかに歌っていて退屈させない。

ところが、第4楽章の後半、すなわち、第4楽章展開部以降は(ブルックナーの)高度な作曲技術(対位法)から成り・・・ごちゃごちゃしていて訳が分からない・・・ブルックナー:交響曲第6番の第4楽章は、上にも書いた通り、楽想が複雑過ぎて、私にはピンと来ない。←私の理解力を超えている。←シモーネ・ヤングのスキルをもってしても、ブル6の第4楽章の言いたいことは、私には分からなかった。

【追加1】

前言をひるがえすが、ブル6の第4楽章だけは、ナガノの演奏が、明晰、且つ、あっさりしていて、良いかも知れない。

・・・

【おまけ】

ブルックナーはこの前の第5番の交響曲で、きわめて凝った書法をおき、構成的にも入り組んだものをみせ、ここで外面的にある意味で交響曲のひとつのゆきつくところまで達したとし、《第6交響曲》ではもっと明快さや簡明な構成を狙ったもののようである。そして、新たにこうしたことからスタートして、第7番以後のいわゆる後期の交響曲へとすすんでいったのだった。その意味で、この《第6交響曲》は、転換期に立つ作品といっていいだろう。(作曲家別名曲解説ライブラリー5「ブルックナー」84ページより)

私見では《第6交響曲》から「第7番以後のいわゆる後期の交響曲(7、8、9番)」への飛躍は大きすぎる。その飛躍は「《第6交響曲》は、転換期に立つ作品」とするだけでは説明できないほど大きいと思う。すなわち、ブルックナーが、第6番から第7、8、9番へと飛躍した契機は《第6交響曲完成》だけではなくて、その他に何かあったんじゃないかな〜? たとえば「第6番作曲」と「第7番作曲」の間に、それらの作品以外に何か重要な作品を彼が作曲したとか・・・あるいは、その2つ作品(第6、7番)作曲の時期に重要なプロセスや出来事があったとか・・・新しい作曲技法を学んだとか?(ただし、上記「作曲家別名曲解説ライブラリー」によれば、作曲年は「第6番が、1879年8月ないし9月から、1881年9月3日まで」「第7番が、1881年9月23日から、1883年9月5日まで」←ほぼ連続している。)・・・否、上のように考えるのはやめよう。すなわち、ブルックナーは、彼の第00番から第6番までの8つの交響曲作曲の間に、長い時間かけて、第7番への語法(作曲技法)を見出したのだ・・・と考えられる。彼は悪いものは捨て、良いものは残し・・・それはプロセスというより、高みへの訓練と努力・・・あっ、そう言えば・・・第7番への契機として考えられることが、上記の外にもう一つあった。すなわち、ブルックナーは、旧作品を改訂する過程でも、新しい語法(作曲技法)を身につけたと考えられる。彼の交響曲第6番から第7番への飛躍は「超新星の爆発」のように突然に見えるが、実は、それは、幾重にも堆積された地層の底からの噴火だった? そして、ブルックナーという人のパーソナリティーは「風采の上がらない外見」の人であり、同様に、作曲家としても、身なりをつくろうこと(=作品改訂)に時間がかかる「のろま」であったように思える(本当は、そうじゃなかったかも知れませんが…)。彼は、ワーグナーやマーラー並みの「直感」「霊感」を持っていたが、いかんせん、典型的な大器晩成型だった。彼は、ベートーヴェンやマーラーに比べると、やっぱり、交響曲作曲家としては大成するのが遅かった。ブルックナーは1824年9月4日生、1896年10月11日没。享年72才。そして、彼の「第7番」の完成が1883年9月5日。すなわち、ブルックナーの交響曲第7番は、彼が59才の時の作品(単純に年齢を比較するとベートーヴェン享年56才。マーラー享年50才。2人とも59才になる前に死んでいる)。私は、ブルックナーの「7番より前の番号の交響曲に存する前衛性」に、大いに惹かれる・・・が、それらは「マイナーな作品たち」であることは否めないと思う(第4番を除いて)。(あ〜、また、変なことを書いてしまった(汗;;)

【追加2】

ブル6は、マーラーが取り上げたということは、マーラー的なのだろうか?

【追加3】

「見晴らしのいいブルックナー, 2015/7/8 投稿者 へいへいほう」さんが書いたレビューに一票入れました。

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