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2016年9月20日 (火)

オットー・フリードリック著「グレン・グールドの生涯」に書いてある、私の好きな逸話など(4)グールドとテクノロジー/録音テープを重ね継ぎすることによって、ブルーノ・ワルターとクレンペラーの演奏をつなげる/「レコーディングの将来(1966年の論文)」より

Gould_friedrich

オットー・フリードリック著「グレン・グールドの生涯」

 グールド自身もかなりの夢想家だった。音楽におけるこのテクノロジーの革命が絶頂に達すると、聴き手の解放が、いやもっと正確に言えば、受動的な立場から積極的な参加者へと聴き手の変身が起こるだろう、と信じていた。「つまみをいじるのも、限られた形ではあるが、一個の解釈行為である」と「レコーディングの将来(注:1966年発表の論文)」で書いている。「四十年前、聴き手の選択の自由は『オン』や『オフ』の印のついたスイッチを入れたり切ったりすることに限られ、最新の機器でも、ヴォリュームを少し調整するくらいだったかもしれない。だが今日、さまざまなコントロールが可能となり、聴き手は分析的な判断が求められている。だが、これらのコントロールはごく初歩的で、微調整をしているにすぎない。というのは、現在研究段階にある技術がひとたび家庭の再生装置に組み込まれたならば、聴き手の参加度はいっそう拡大するからだ。」
 この「新しい種類の聴き手」が、自分の膨大なコレクションのあらゆるテープを再編集できるようになれば、グールドはたいへん満足しただろう。「例えば、ベートーヴェンの第五交響曲第一楽章は、呈示部と再現部はブルーノ・ワルターの演奏が好きで、展開部はテンポの大きく異なるクレンペラーの指揮がいいとする。……ピッチと速度の相互関係はひとまず置いておくが、クレンペラーの録音から該当箇所の小節を切り取って、ワルターの演奏の途中にスプライシング(注:録音テープを重ね継ぎすること)によってはさみ込めるのである。その際に、テンポが変わったり、ピッチが上下することもない。……」
 パラダイスの夢想は、どんなものであれ、それを夢想した人間が自分のために望んだものになってしまうことはまず避けられない。口には出さないが、他人も同じことを望んでいるのだと決めてかかっている。《ヴァルキューレ》第二幕で、ブリュンヒルデは戦士ジークムントに対して、死んだ勇者の行くヴァルハルの殿堂がいかに素晴らしい場所かを約束する。「見事な肉体をもった死せる勇者たちがあなたを抱き締め、厳かに歓迎してくれる」のである。一方、T・S・エリオットは、河馬が最終的に聖人に列せられ、「黄金の竪琴を奏で」、雪のように白く洗われ、「殉教した乙女たちの接吻を受ける」と『河馬』という詩の中で予言している。そしてグールドはといえば、音楽ファンが会社で一日懸命に働いたあと家に帰り、ただちにグールド的スタジオに向かい、テープ編集をして夕べを費やすようになる日を夢見ていたのである。グールドは言った。「究極的には、聴き手は自分自身のための作曲家になるのである。」
(オットー・フリードリック著「グレン・グールドの生涯」204ページより)

クラシック音楽の聴き手がテープを継ぎ合わせてブルーノ・ワルターとクレンペラーの演奏をつなげることは「許されること」であるばかりか「聴き手とは逆の立場」=「演奏者という立場」にあったグールドにとって、それは「夢」であった(勿論、グールドは、聴き手でもあった)。

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