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2016年6月13日 (月)

ユリアンナ・アヴデーエワ plays モーツァルト、ショパン、リスト

・ショパン:幻想曲 ヘ短調 作品49

譜例1の1 序奏(葬送行進曲風。「問いかけ・呼びかけ」と「応答」。midi

Chopin_49_1_2

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譜例1の2 序奏(後半、2分の2拍子の始まり。midi

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譜例2 第1主題(問いかけ・呼びかけ。シンコペーションが効いている。midi

Chopin_49_2_new_new

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譜例3 第2主題(応答。明るい。midi

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譜例4 第3主題(最初の2小節が「問いかけ・呼びかけ」、後の2小節が「応答」。midi

Chopin_49_4_new_new_new

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譜例5 第4主題(陽気な行進曲。midi

Chopin_49_5_new_new_2

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譜例6 レント・ソステヌート(midi

Chopin_49_6_new_new

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譜例7 アダージョ・ソステヌート(最後から13小節目以降。ショパンが言いたかったのは、これじゃないかと思う。midi

Chopin_49_8_new_2

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この曲は、作曲家とジョルジュ・サンドの間の喧嘩と仲直りを描いたものであるという逸話がある。それはリストが、有名なピアニストのヴラディミール・ドゥ・パッハマンに、ショパン自身から彼が聞いたものであるといって(ブログ開設者注:要するにリストが話した逸話)、語ったことによっている。それは、ある憂鬱な日が暮れかかるころ、突然だれかが彼(ブログ開設者注:ショパン)の部屋の扉をたたいた。幻想曲のはじめの2小節はその音を描いたもので第3、第4小節は、ショパンの、「お入りなさい、お入りなさい」という招きを表わしているという(譜例1)。扉が開かれると、リスト、ジョルジュ・サンド、カミーユ・プレイエル夫人などが、行進曲の厳粛な拍子に合わせて入ってくる。激しい3連音の伴奏に乗って、ショパンは不平をヘ短調の神秘的な歌で訴える(譜例2)。彼と争っていたサンドは彼の前にひざまづいて許しを乞い、旋律はただちに訴えるような変イ長調の部分になってくる(譜例3)。ハ短調に変わってから調子はしだいに荒れてゆき、頂点に達する。第2のマーチ(譜例5)によって闖入者(ちんにゅうしゃ)たちは、すみやかに退場する。ロ長調のレント・ソステヌートの部分(譜例6)でショパンのかき乱された気持ちが一時しずまるのである。リストは以上のようなことをショパン自身が語ったとしていい伝えているというが、真偽のほどは明らかでない。知られた逸話なので一応紹介したが、ショパンの音楽は本質的に描写的に捉えられるものではないし、音楽は聞き手のだれもが、自ら意味をくみ取るべきで、とくに純粋に美しいものでは、このような解説は、その真の鑑賞を妨げるのである。(作曲家名曲解説ライブラリー ショパン 243ページより)

上の逸話が、リスナーにとって「ショパン:幻想曲 ヘ短調 作品49(以下、Op. 49と略す)」の鑑賞に役に立つのは、同作品が、トリスタンとイゾルデの動機のように「問いかけ・呼びかけと応答」という統一性を持つことを表わしていること。すなわち、序奏の冒頭(譜例1)はもとより【注1】、第1主題と第2主題、それから、これは私の解釈だが、ユニークな楽想の第3主題(譜例4)・・・それでさえも、問答であると私には聞こえる。

結論を書く。「Op. 49」は「舟歌 Op.60」あるいは「子守歌 Op.57」、そして、《その幻想性において他に類をみない、前人未踏【注2】》の「幻想ポロネーズ Op. 61」などに対して独創性においてはショパンの作品中、過渡的な作品だと私は思う。「Op. 49」は(幻想曲なのに)ソナタ形式で書かれ【注3】、(幻想曲なのに)同じ主題が繰り返され、全曲のコンテキストは、あえて言えば「ワンパターン」(下記)。そして、「Op. 49」は(幻想曲なのに)明快さを持つように思える。

再現部 第235〜309小節。呈示部の4つの主題の再現だが、いずれもそれぞれ5度下の調に移されている。(作曲家名曲解説ライブラリー ショパン 243ページより)

さらに、誤解を怖れずに言えば、《幽玄》《夢幻》という点では、例えば(どの曲とは言えないが)ショパンの後期「ノクターン」あたりの方が、この「Op. 49」よりも勝っているような気がする。そして、むしろ「Op. 49」の魅力は(性差別的表現だが)その男性的力強さと「技巧」にあるような気がする。

「Op. 49」は、各主題の対照が、確かに、巧くつなぎ合わされてはいるが、序奏(譜例1の1)の行進曲は、そのリズムが「ショパン:ソナタ第2番《葬送》」の第3楽章のそれに似ているので、葬送行進曲を想起させる(つまり陰鬱)。が、第2の行進曲(譜例5)は、序奏の行進曲に比べ、その真逆の陽気さが「過ぎる」かも知れない・・・あるいは、まあ、同じことだが、第2の行進曲は、第1の行進曲とは、そのコントラストがあからさま過ぎるかも知れない【注4】。「レント・ソステヌート(譜例6)」は「幻想ポロネーズ」の第2部開始のコラール風間奏「ピウ・レント(譜例8)」に比べて弱いと私は思う。

ちなみに、序奏(後半)譜例1の2は、「Op. 49」の楽想の流れをつなぐ接着剤のような効果・役割を持っている・・・と同時に、それは、この「Op. 49」にて大活躍する重要なパッセージである・・・しかも、この作品のヴィルトゥオージティを自然に流すための効果・役割を持っていると思う。

・・・

譜例8 ピウ・レント(幻想ポロネーズ:第2部開始のコラール風間奏、midi

Chopin_49_9_2

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「Op. 49」は、ショパンにしては珍しく分厚い和音が、彼の他の傑作に比べて目立つような気がするのだが・・・どうだろうか。すなわち、「Op. 49」は、ある意味、技巧に走っていると私は受け止めた。

そして、結局、ショパンが、言いたかったのは、最後から13小節目以降のエンディング(譜例7)ではなかったか・・・ただし、それも、ショパンの音楽に聞かれる《幻想》の昇華されたエクスタシーとしては弱いし、出番が遅すぎる・・・と私は思う。

【注1】 譜例1は「主題を導くただのイントロ」&「主題」じゃないかと思う人もあると思うが、それは4回も奏されるのだから、そのしつこさは、やっぱり「問いかけ・呼びかけと応答」の「しつこさ」であろう。

【注2】 ショパンの「幻想ポロネーズ」が前人未踏の幻想曲なら、シューマンの「幻想曲 ハ長調 Op. 17」も前人未踏の幻想曲ではないかという人があるだろう。私は、それを否定しない。しかし、モーツァルトの「幻想曲 ニ短調 K. 397」「幻想曲 ハ短調 K. 475」を、幻想曲の《モデル》とするならば、確かに、前者も後者も、モーツァルトの「幻想曲」とは、かけ離れているが、後者はかけ離れ過ぎている。

【注3】 ただし、幻想曲だからといってソナタ形式で書かれないということはない。同時代に書かれた上記「シューマン:幻想曲 ハ長調 Op. 17」の第1、3楽章は「自由なソナタ形式」とある(作曲家名曲解説ライブラリー シューマンより)

【注4】 この第2の行進曲を、初めて聴いた時、マイスタージンガーの行進曲みたいに聞こえた。


<--- レビュー ココから --->

Yulianna

Chopin. Mozart. Liszt
Yulianna Avdeeva, piano
Recorded at the Reitstadel, Neumarkt (Germany) from 28 to 30 September 2015
Piano: Steinway D
(P) & (C) 2016 MIRARE, MIR 301

01. Chopin, Fantaisie in F minor op.49 12’39

Mozart, Piano sonata No.6 in D major K.284
02. Allegro 7’41
03. Rondeau en Polonaise. Andante 4’24
04. Tema con variazione 14’34

05. Liszt, Après une lecture du Dante - Fantasia quasi sonata 15’23

06. Liszt, Aida di Giuseppe Verdi - Danza sacra e duetto finale S.436 12’12

・・・

【収録情報】

● ショパン:幻想曲 ヘ短調 op.49
● モーツァルト:ピアノ・ソナタ第6番ニ長調 K.284
● リスト:『巡礼の年』第2年『イタリア』〜ダンテを読んで-ソナタ風幻想曲
● ヴェルディ/リスト編:『アイーダ』より神前の踊りと終幕の二重唱 S.436

ユリアンナ・アヴデーエワ(ピアノ)

録音時期:2015年
録音場所:ノイマルクト、ライツターデル
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
日本語解説付き

(HMV.co.jp より)

・・・

私の評価:ショパンが良くないので、星3つ

・・・

・ショパン:幻想曲 ヘ短調 作品49
2010年のショパンコンクールにて、ユリアンナが、第2次予選で弾いた曲。この曲は、彼女の十八番と言っていいだろう。そして、彼女は、「ショパン増刊 第16回ショパン国際ピアノコンクール 2011年01月号」の中で、次のように述べている:

「幻想曲の最初の2ページはこの作品の根幹です。曲が速いテンポになってからも最初のゆっくりの行進の部分が中心モチーフにあるのです。その提示には、深い意味づけが必要です。人間性や民族性といった何か普遍的な大切なものがあるはずなのです。」

ユリアンナの、おそらく適切な解釈(上記)にも関わらず、私は、彼女のこの演奏は、好きではない(面白くない)。彼女の演奏には、上に述べた「男性的力強さ」と「技巧」が足りない。その点(非常に古い録音だが)ホロヴィッツや、メジューエワ(ショパン・リサイタル 2010)や、マリラン・フランスコーヌ(展覧会の絵&ショパン)の演奏の方が良いと思う。確かに、ユリアンナの演奏にも、ヴィルトゥオージティはある。しかし、彼女は「技巧」より「解釈」を重視しているように聞こえる(私は、その逆が良いと思う)。

・モーツァルト:ピアノ・ソナタ第6番 ニ長調 K.284《デュルニッツ》
このモーツァルトはグレン・グールドのように、痛快(!)・・・グールドとユリアンナとはまったく芸風は異なるが・・・。

・リスト:ダンテを読んで - ソナタ風幻想曲
この演奏は、私は、好きです。
「音楽の悪魔」の異名を持つ三全音(序奏)、および、技巧的・複雑なリズムによるこれまた悪魔的第1主題(統一主題的第1主題の展開)の充溢。大音量で聴くと気持ち良い。

・リスト:ヴェルディ「アイーダ」より - 神前の踊りと終幕の二重奏
リストは、長寿だね。「アイーダ」の1871年初演・1878年出版まで、リスト(1811年10月22日 - 1886年7月31日、享年74才)が、生きていたとは知らなかった。

・・・

・リスト:ダンテを読んで:序奏(midi
Dante_sonata_1

・リスト:ダンテを読んで:第1主題(midi
Liszt_dante_sonata_2

<--- レビュー ココまで --->

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