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2015年9月23日 (水)

Berg: Lyric Suite / Wellesz: Sonnets for Elizabeth Barrett Browning Op. 52 / Zeisl: Komm, süsser Tod performed by Emerson String Quartet & Renée Fleming

Emerson

ALBAN BERG
Lyric Suite

EGON WELLESZ
Sonnets for Elizabeth Barrett Browning Op. 52

ERIC ZEISL
Komm, süsser Tod

Emerson String Quartet
Eugene Drucker and Philip Setzer, violins
Lawrence Dutton, viola
Paul Watkins, cello

Renée Fleming, soprano

2014 / 15 年録音
DECCA


【収録情報】

Alban Berg (1885 - 1935)
Lyric Suite for String Quartet (1926)

1. I. Allegretto gioviale 3:10
2. II. Andante amoroso 5:45
3. III. Allegro misterioso - Trio estatico 3:19
4. IV. Adagio appassionato 5:35
5. V. Presto delirando - Tenebroso 4:40
6. VI. Largo desolato 5:35

7. VI. Largo desolato (Alternative version with Soprano) 5:58

Egon Wellesz (1885 - 1974)
Sonnets From The Portuguese, Op.52

8. I. Und es geschah mir einst, an Theokrit zu denken 5:05
9. II. Nur drei jedoch in Gottes ganzen All vernahmen es 3:43
10. III. Du bist da droben im Palast begehrt 3:09
11. IV. Ich denk an dich 3:13
12. V. Mir scheint, das Angesicht der Welt verging in einem andern 4:24

Eric Zeisl (1905 - 1959)

13. Komm, süsser Tod 2:52

Total Time: 56:25

--

1. ベルク:抒情組曲(弦楽四重奏版 全6曲)
2. ベルク:抒情組曲〜第6曲『悲嘆のラルゴ』(ソプラノ独唱付き)
3. ヴェレス:エリザベス・バレット・ブラウニングによるソネット Op.52
4. ツァイスル:来たれ、汝甘き死の時よ

 ルネ・フレミング(ソプラノ:2-4)
 エマーソン弦楽四重奏団

 録音時期:2015年2月(1)、2014年6月(2)、2014年8月(3,4)
 録音場所:ニューヨーク市立大学クイーンズ校(1,2) ドルー神学校(3,4)
 録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)

(HMV.co.jp より)

==

随分昔、《トロンボーン吹きによるクラシックの嗜好》さんと、シノーポリのベルクについて意見交換した時、彼は、「シノーポリのベルクは下手だと思う。ソレは、暗くて、ベルクの良さが伝わらない」という主旨の発言をなさっていましたが、私は、内心、「おら、シノーポリのベルクは、その根暗(ねくら)な激しさが好きだ」と、思っていた。

エマーソンSQのメンバーは、1951年〜1954年生まれであり(ウィキペディアより)、このアルバムの録音時、彼らは、既に、60歳を超えていると思われる(ただし、ポール・ワトキンス、1970年生まれ、は、2013−14年のシーズンに、エマーソン弦楽四重奏団を離れたチェリスト、デイヴィッド・フィンケルに代わり、同四重奏団に加入した。Paul Watkins (born 1970) ... Watkins joined the Emerson String Quartet in the 2013-14 season, replacing the departing cellist David Finckel. )。しかし、エマーソンSQのベルクは、そのアンサンブルにおいて、まったく衰えていない(それどころか、スリリングで迫力ありかつ明快なアンサンブル)。そして、彼らのベルクは、シノーポリと対照的に根明(ねあか)である(エマーソンSQのベルクの方が、シノーポリと違って、健康的でいいのだが、しかし、ソレは私がイメージするベルクと違う・・・しかし・・・それは私の好みの問題である、と思う)。

エマーソンSQの最高傑作は、疑いもなく、バルトーク:弦楽四重奏曲全集(1988年録音)である。そして、エマーソンSQのバルトーク:弦楽四重奏曲全集(1988年録音)を超える同曲全集の録音は、現在まで、他に存在しない(と思う!)。そして、今、エマーソンSQのバルトーク全集録音から、約26年後、(繰り返すが)エマーソンSQの演奏に、年齢による衰えはない。ただし、彼らが聴かせたバルトーク:弦楽四重奏曲全集での「アグレッシヴと精密な技巧」の完璧な同居、その完璧さは、やっぱり、後退していると思う。エマーソンSQは、角が取れたと思う(たとえば、1968年に録音されたラサールQの「ベルク:抒情組曲」の方がエマーソンSQのそれより精緻だと思う)。

当該アルバム(Berg / Wellesz / Zeisl)において、エマーソンSQの演奏は、上のバルトーク全集よりやや粗く、しかし、タフになったと思う・・・その「タフ」の意味:それは、彼らの、コノ新しいアルバムが、ベルクの傑作のみならず(ベルクにおいて彼らは既にタフであるが、さらに)、エゴン・ヴェレス(Egon Wellesz 1885 - 1974)という作曲家の力作「エリザベス・バレット・ブラウニングによるソネット Op.52」をも取り上げたこと・・・すなわち、彼らの、コノ新しいアルバムが、「旺盛な意欲」「高いテンション&モチベーション」を持つことだ。ヴェレスのその作品のテキストは「英国ビクトリア時代の詩人ブラウニングの詩をリルケがドイツ語に翻訳したもの(HMV.co.jp より)」つまり、リルケ自身の詩ではない。とは言え、そのテキストで、リルケの高尚なドイツ語を味わえる(私は、学生時代、ドイツ文学を学んだが、リルケの詩の高尚さには敬意を払っている)。

私は、このアルバムの国内盤(日本語歌詞対訳付)が出たら、買おうと思う(残念ながら、私の語学力では、このアルバムのすべての詩を理解できないから(汗)。

誤解を怖れずに言えば、このアルバムは、エマーソンSQより、ルネ・フレミングが良い。うまい。彼女が主役だ、と、思う。

==

【ベルク:抒情組曲〜第6曲:歌詞対訳(誤訳あり)】







Zu Dir, du einzig Teure, dringt mein Schrei
Aus tiefster Schlucht, darin mein Herz gefallen.
Dort ist die Gegend tot, die Luft wie Blei,
und in dem Finstern Fluch und Schrecken wallen.

Sechs Monde steht die Sonne ohne Warm. (熱がない)
In sechsen lagert Dunkel auf der Erde.
Sogar nicht das Polarland ist so arm,
Nicht einmal Bach und Baum noch Feld noch Herde.

Erreicht doch keine Schreckgeburt des Hirnes (頭脳のおぞましい産物?)
Das kalte Grausen dieses Eis-Gestirnes
und dieser Nacht: ein Chaos riesengross !

Ich neide des gemeinsten Tieres Los
Das tauchen kann in stumpfen Schlafes Schwindel...
So langsam rollt sich ab der Zeiten Spindel!


私が愛する唯一の女(ひと)よ、あなたへと私の叫びがほとばしる
とても深い深淵から、私の心が落ち込んだその深淵から。
そこは死の地、大気は鉛のようだ
そして、その暗闇には、呪いと恐怖が沸き立っている。

六月(むつき)は熱がない太陽が空にある。
残る六月は闇が地を覆う。
極地でさえ、こんなに不毛ではない。
小川もなく木もなく畑も獣の群れもない。

頭脳が産み出す、いかなるおぞましい(想像の)産物も、
この氷の星の冷たい恐怖、
この夜の恐怖に達することはない:その恐怖とは巨大なカオスなのだ!

私は、最も卑しい獣の運命をも、うらやむ
その獣は潜ることができる、鈍い眠りの眩暈の中に・・・
とてもゆっくり時間の糸巻き棒がほどける!

(深キ淵ヨリ我呼ビカケタリ/ボードレール 悪の華 30番)


==

【蛇足】

ところで、ボードレールが《深淵》と言っているのは、我々が住んでいるこの世の中のことだろう。つまり、21世紀の日本。

==

【2015−9−23 追加】

ベルク:抒情組曲〜第6曲:歌詞対訳については、
サイト:「梅丘歌曲会館 詩と音楽」にて、正確な訳を見ることができます。

==

【2015−9−27 追加】

発売されたばかりなのに、このアルバム「Berg: Lyric Suite / Wellesz: Sonnets for Elizabeth Barrett Browning Op. 52 / Zeisl: Komm, süsser Tod; Emerson String Quartet & Renée Fleming」も、Apple Music で、聴くことができます(2015年9月27日現在)。

・検索のためのキーワード:Berg Emerson

Berg_emerson
(C) Apple Music のウィンドウより

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コメント

リンクにてご紹介頂きありがとうございます。「正確な訳」とおっしゃって頂くのはかなり畏れ多いですが、この詩、ボードレールの難解な詩を、新ウィーン学派のひとたちが好んで取り上げたドイツの象徴派詩人シュテファン・ゲオルゲがドイツ語にしていますのでひたすら難しいというのがチャレンジしての印象です。多分正確に訳せたとしても意味はさっぱり分からないのではないでしょうか。この手の象徴詩の翻訳は何かしら訳者が腑に落ちようとする解釈が入ってくるような気がします。ヴェレスの作品のリルケの詩は興味深いですね。
訳してみたいような気もするのですがまずは先に音楽を聴いてみないと...

FUJII 様

コメント有難うございます
当ブログの開設者KMです。

すみません、いきなり、謝罪ですが、現在、私、私の家の火災(2009年12月)それに続く、現在における私の父の介護による疲労と心労で、精神的病を得(不眠症)、私の体力が衰えまして、(・・・当ブログの更新をすることはできますが、しかし、それ以外のことはできない・・・)、つまり、現在の私、あまり、難しいトピックについて、意見交換する体力が、ないのです。(中略)いま下に、コメントをちょっと書いてみましたが、途中で、書けなくなりました。(中略)ただ、不眠症である私には、ボードレールの「深き淵より」De Profundis clamavi には、癒されます(!)あ〜、ほんとに、死んだように眠りたい!

しかし、ベルク:「抒情組曲」は、体調がいい時にしか聴けません。

ゲオルゲについては、全く知りません。


いずれにしましても、FUJII 様は、ドイツ語だけではなく、フランス語も堪能であられるようで、すごいですね! 私は、フランス語学習に、3度ほど、チャレンジしましたが、3度とも挫折しました(3度目の挫折は、つい最近、父の介護のため、気力を失い挫折)。


<ーーー コメント始まり ーーー>

私は、大学で、カフカを2年間、学びました。その経験から、「或る作家を学ぶときは、その人の伝記的事実から学ぶのが一番手っ取り早い方法!」という教訓(?)を得ました。したがって、ベルクのコノ作品「抒情組曲〜第6曲」を解釈する時、FUJII 様の「深き淵より」De Profundis clamavi のページの解説が、まず、コノ詩の受容に不可欠かつ一番手っ取り早い「受容法」だと思います。

ボードレールのジャンヌ・デュヴァルへの思い
ベルクのハンナへの思い

※ ついでに、私は、かつて「日本聖書教会」から、聖書の『日課(つまり聖書のテキスト)』を、私のブログに引用することについて、その許可を得ていますので、「詩編130」をここに引用します:

【都に上る歌。】深い淵の底から、主よ、あなたを呼びます。
主よ、この声を聞き取ってください。
嘆き祈るわたしの声に耳を傾けてください。

主よ、あなたが罪をすべて心に留められるなら
主よ、誰が耐ええましょう。
しかし、赦しはあなたのもとにあり
人はあなたを畏れ敬うのです。

わたしは主に望みをおき
わたしの魂は望みをおき
御言葉を待ち望みます。
わたしの魂は主を待ち望みます
見張りが朝を待つにもまして
見張りが朝を待つにもまして。

イスラエルよ、主を待ち望め。
慈しみは主のもとに
豊かな贖いも主のもとに。
主は、イスラエルを
   すべての罪から贖ってくださる。

詩編130は、ごく一般的な赦しの祈り(←コレが日本文学でいうところのボードレール作「深き淵より」の「本歌(?)」ですね)。
で、私の解釈ですが、この詩を書いた人(ボードレール)は、宗教的赦しを祈るように、「彼自らの心の病」からの治癒を祈っている・・・私事ですが、私もうつや不眠症を患ったことがあります・・・この詩「深き淵より」を、安直にまたは現代的に解釈しますと、とにかく、獣(けもの)のように死んだように眠りたい!ということじゃないかと思います。

聖書詩編130→ボードレール→ゲオルゲ→ベルク→現在のリスナーたち

という図式で、私はこの詩を読み、また気に入ってます。また、私事ですが、不眠症という病気の苦しさという私の経験から、私はこの詩を好きなのです。が、私にとって、この詩の(完全な)文学的な受容・解釈は、いまのところ不要です。というか、それ(この詩の完全な文学的な受容)は、多分、もしかしたら、永遠に私に、不要なのかも知れません。

・FUJII 様の受容

>この手の象徴詩の翻訳は何かしら訳者が腑に落ちようとする解釈が入ってくるような気がします。

生意気なようですが、上記が、この詩「深き淵より」の翻訳を不可能にするということは、ないのではないかと思います・・・ゲオルゲ訳も含めて。

・私の受容

>>ボードレールが《深淵》と言っているのは、我々が住んでいるこの世の中のことだろう

<ーーー コメントおわり ーーー>

(尻切れとんぼですが・・・コレが限界(笑)

さて、今後。

FUJII 様から、私への「軽い乗りの」トピックであれば、私は受け入れることができると思います。よって、今後、FUJII 様からの、
私の体力が受け入れることができる・・・つまり、「軽い乗りの」トピックは大歓迎です。

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