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2015年3月13日 (金)

アンジェラ・ヒューイットの「フランツ・リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調、ペトラルカのソネット第47、104、123番、ソナタ風幻想曲《ダンテを読んで》」

Hewitt

Franz Liszt (1811-1886)
Piano Sonata
Dante Sonata
Petrarch Sonnets
Angela Hewitt (piano)
Recorded in Jesus-Christus-Kirche, Berlin, on 19-22 May 2014
Piano FAZIOLI
Hyperion Records

Piano Sonata in B minor S178 [34'23]
01. Lento assai [13'20]
02. Andante sostenuto [7'52]
03. Allegro energico [1'55]
04. Allegro energico - Più mosso [6'16]
05. Andante sostenuto [4'56]

06. Sonetto 47 del Petrarca S161/4 [6'24]

07. Sonetto 104 del Petrarca S161/5 [7'35]

08. Sonetto 123 del Petrarca S161/6 [7'58]

09. Après une lecture du Dante - Fantasia quasi Sonata S161/7 [18'15]


【収録情報】

フランツ・リスト:

● ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178
● 巡礼の年第2年『イタリア』より〜ペトラルカのソネット第47番 S.161-4
● 巡礼の年第2年『イタリア』より〜ペトラルカのソネット第104番 S.161-5
● 巡礼の年第2年『イタリア』より〜ペトラルカのソネット第123番 S.161-6
● 巡礼の年第2年『イタリア』より〜ソナタ風幻想曲《ダンテを読んで》S.161-7

 アンジェラ・ヒューイット(ピアノ/ファツィオーリ)

 録音時期:2014年5月19-22日
 録音場所:ベルリン、イエス・キリスト教会
 録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)

(HMV.co.jp より)

--

私の評価:★★★★☆

私の評価は、このアルバムの「ロ短調ソナタ」が決定版ではないので、星4つ。すなわち、「ロ短調ソナタ」はイマイチ。「巡礼の年第2年」は良い(特に「ダンテを読んで」が良い)。

--

忘れないで書いておこう。このアルバムは、音が良い。

--

・「ロ短調ソナタ」について(アルゲリッチ、カティア・ブニアティシヴィリ、ヒューイットの演奏を比較して)

アルゲリッチ、カティア・ブニアティシヴィリ、ヒューイットの「ロ短調ソナタ」を比較した場合、ブニアティシヴィリの演奏は、楽想の変化、すなわち、リストが指示した発想標語や転調による楽想の変化において、音楽の流れが「切れる」。それに対して、アルゲリッチの演奏は「切れない(アルゲリッチは楽想の変化にうまく対応している)」。すなわち、アルゲリッチの演奏は、音楽の流れが「切れない」で突っ走っていく。アルゲリッチの「流れ」は自然だ。リストの「ロ短調ソナタ」は、複雑な作品であるが、決して停滞するような音楽ではない。アルゲリッチの演奏は《ソナタ全体が自然に切れ目なく流れる》。その方が、ブニアティシヴィリの恣意的な演奏より良いに決まっている。

ヒューイットの演奏は、論理的であるが、コノ作品が持つ《情緒の起伏》への対応に弱いと思う。すなわち、ファツィオリを弾くヒューイットは、スタインウェイを弾くアルゲリッチに比べて「ロ短調ソナタ」の音楽的な変化への対応に弱いと思う。

ヒューイットの「ロ短調ソナタ」について書く前に、この作品のアナリシス(作品分析)を、おさらいしておこう。

1 - 7:枠
8 - 13:跳躍動機
13 - 17:(ピアノの)ハンマー音
18 - 29:跳躍動機成分
30 - 39:跳躍動機成分とハンマー音(拍子を交替させながら)
40 - 44:跳躍動機成分
45 - 54:自由な上昇音形
55 - 81:継続を伴う跳躍動機
82 - 104:枠(バスにて)

上記から傍系主題が始まる

105 - 119:グランディオーソ(壮大に)の動機(2分の3拍子、傍系楽章の第1動機)
120 - 140:跳躍動機(再び4分の4拍子で)
141 - 152:ハンマー音
153 - 170:ハンマー音(音価2倍)(傍系主題の第2動機)
170 - 190:跳躍動機成分(バスに)
190 - 196:ハンマー音(音価2倍)と枠
197 - 204:短いソロカデンツァ
205 - 231:跳躍動機と反行
232 - 238:ソロカデンツァ
239 - 254:カデンツァ 伴奏付
255 - 269:ハンマー音成分(カデンツァ成分を伴って)
270 - 277:跳躍
278 - 286:枠
286 - 296:継続を伴う跳躍動機
297 - 300:グランディオーソの動機(2分の3拍子)
301:レチタティーヴォ(自由な拍子で)
302 - 305:グランディオーソの動機(2分の3拍子)
306 - 310:レチタティーヴォ
310 - 314:ハンマー音
315 - 318:跳躍動機成分
319 - 330:ハンマー音 拡大された音価の跳躍動機(右手)を伴って

ここからテンポが遅い中間楽章が始まる

331 - 348:叙情的なアンダンテ・ソステヌート - 旋律主題(4分の3拍子)
349 - 362:ハンマー音(音価2倍)カデンツァ成分を伴って
363 - 380:グランディオーソの動機(音価半分)
381 - 384:跳躍動機への接近
385 - 394:跳躍動機
395 - 415:変奏されたアンダンテ・ソステヌート - 旋律主題
415 - 432:パッセージ 枠成分(バスの下降音形)を伴って
433 - 445:ハンマー音(音価2倍)
446 - 459:枠

ここから再現部が始まる

460 - 523:跳躍動機とハンマー音によるフガート
524 - 530:跳躍動機(16分音符の技巧的な走句が続く)
531 - 540:跳躍動機(ハンマー音と交替しながら・その後、16分音符が続く)
541 - 554:16分音符
555 - 569:和音と16分音符
569 - 581:跳躍動機(バスにて下降音階と交替しながら)
582 - 599:パッセージとハンマー音
600 - 615:グランディオーソの動機の再現(600小節以降はこの動機はロ長調で演奏)
616 - 650:ハンマー音(音価2倍)ソロカデンツァが続く

ここからコーダであると分離することができる、すべての重要な動機が逆の順番で現れる

650 - 672:ストレッタ:ハンマー音(音価2倍)、跳躍動機成分
673 - 681:プレスト:4分音符の下降音形
682 - 699:プレスティッシモ:和音と8分音符
700 - 710:グランディオーソの動機(2分の3拍子)変奏を伴う(伴奏は1拍に8分音符4つではなく、4分3連符で)
711 - 728:叙情的なアンダンテ・ソステヌート - 旋律主題が再現する(4分の4拍子)
728 - 736:オリジナルのハンマー音(バスにて、ロ長調)
737 - 743:跳躍動機(両手に分担されて演奏、パラレルの8分音符を伴わずに)
743 - 749:和音
750 - 754:枠
755 - 760:終結和音

(ドイツ語版ウィキペディアより)

NHK の「らららクラシック」という番組で、「ショパンには弱点があった」ということが話題になったが、私は、その弱点とは、「(ショパンの)手が大きくなかったこと」ではないかと思った。←やはり私の想像が当たっていた。それに対して、リストは手が大きかったんだろう。←「ロ短調ソナタ」のスコアを見てそう思う(←コノ曲はオクターブ・ユニゾンが多いし、和音も力づくという感じがする)。
ヒューイットもまた、手が大きいんじゃないかと思う。そして指から腕にかけての強い筋力がないと、リストの「ロ短調ソナタ」は弾けないと思う。が、ヒューイットは、ある意味、ソレを余裕をもって弾いているように聞こえる。
ヒューイットの演奏について結論を言うと、彼女は、「331 - 348小節:叙情的なアンダンテ・ソステヌート - 旋律主題(嬰ヘ長調、4分の3拍子)(下記)」を、この作品の中心に据えて、全曲を構成している。←その知的な構成力が、ヒューイットによる「ロ短調ソナタ」の魅力であると思う。
「叙情的なアンダンテ・ソステヌート」は、ヒューイット盤では、トラック2、5で仕切られている。さらに、ヒューイットの演奏では、トラック2の3分43秒あたりで、音楽はクライマックスに達する。←ソコを頂点とすることによって、彼女は、この作品を論理的に聴かせることに成功していると思う。彼女の「ロ短調ソナタ」は、コノ作品の論理性を改めて認識させる演奏だと思う。

【追加】

「ロ短調ソナタ」の上記「叙情的なアンダンテ・ソステヌート」は、アルゲリッチ盤では、トラック5と11に、ブニアティシヴィリ盤では、トラック3にて、仕切られている。

Lisztandantesostenuto
(ドイツ語版ウィキペディアより、midi

・ヒューイットの「巡礼の年第2年」

「まったく大儀なこと」 --- クラーラ・シューマン(ウィキペディアより)

ヒューイットの「ロ短調ソナタ」を聴いて私も、そう思わなくもなかった(すなわち、クラーラ・シューマンが言ったことにうなづける)。

しかし、ヒューイットの「巡礼の年第2年」からの4曲は違う。

「ペトラルカのソネット」において叙情性が生きている。そして、今まで私は、ヒューイットが弾くファツィオリの音を何度も聴いたことがあったが、今回、彼女が弾く「ペトラルカのソネット」を聴いて、初めて、私は、ファツィオリが美しい音を出せるピアノであることを、知ったような気がする。

ヒューイットの「ダンテを読んで」を聴いて、コノ曲は、交響詩のような楽曲だということに気づかされた。ヒューイットの演奏を聴いて思ったこと:「神曲」を読みたくなる。コノ曲は「神曲」を読まないと分からないのかも知れない。
とにかく、ヒューイットの「ダンテを読んで」は、《カッコイイ》。

このアルバムのジャケットの絵は、アリ・シェーフェル(Ary Scheffer)が描いた「神曲」の登場人物フランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタ。

【関連記事】

リストの「ダンテを読んで」聴き比べ(1)

【2016−3−22 余計なこと】

ヒューイットは、技巧が衰えないうちに、リスト:ロ短調ソナタを録音したのか?

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