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2015年1月16日 (金)

ソフィー・パチーニの「ショパン:ピアノ独奏曲集(幻想ポロネーズ 作品61)」

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Pacini

Frédéric Chopin (1810 - 1849)
Sophie Pacini, piano
Recording: XII 2013, Köln, Deutschlandfunk Kammermusiksaal
Cavi-music

01. Ballade No. 4 in F Minor, Op. 52 [10:51]
02. Nocturne in E-Flat Major, Op. 9, No. 2 [3:39]
03. Scherzo No. 2 in B-Flat Minor, Op. 31 [10:32]
04. Nocturne in B-Flat Minor, Op. 9, No. 1 [5:15]
05. Nocturne in D-Flat Major, Op. 27, No. 2 [5:58]
06. Fantasy Impromptu in C-Sharp Minor, Op. 66 [5:20]
07. Nocturne in C-Sharp Minor, Op. 27, No. 1 [4:51]
08. Nocturne in C Minor, Op. 48, No. 1 [5:54]
09. Polonaise No. 7 "Polonaise-Fantaisie" in A-Flat Major, Op. 61 [13:26]
10. Bach-Busoni: Ich ruf zu Dir, Herr Jesu Christ (BWV 639) [3:34]

Total Time 69:27

Publisher 1 / 3 /9: Henle, Ewald Zimmermann 2 / 4 - 8 : Wiener Urtext, Jan Ekier

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私の評価:辛いが、星3.5

ソフィー・パチーニのセカンドアルバム。このアルバムは《幻想ポロネーズ 作品61》が良くない。もしこのアルバムにおける《作品61》が良かったなら、私は、このアルバムに、最高の評価を与えていたかも知れない。私は、《作品61》はショパンの最高傑作だと思っている。そして、《作品61》は、ショパンの作品の中で私が最も好きな作品である。

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【ショパン:幻想ポロネーズ 変イ長調 作品61 楽曲解説】

作曲家別名曲解説ライブラリー ショパン」によると、この曲の、構成は、おおよそ、以下の通り:

「曲の構成は、アレグロ・マエストーソ、4つの重要な主題の上に構成されているものだが、その形式はきわめて自由である

 楽曲は長い序奏を持っている

・第1部
第1〜23小節、序奏、自由に転調する。

Chopin_61_00

第1小節は5オクターブ以上、上昇する(midi

【ブログ開設者の注】序奏にて、主題a(譜例1)の青色で示した音形が、右手>左手>右手>左手で計4回、ほのめかされる

Chopin_61_aa
【譜例1】主題a(midi) ※ソフィー・パチーニの演奏では、Track 9の2'15"

第24〜65小節、主題aの発展(変イ長調、多くの経過的転調をもって)
第66〜72小節、主題bの呈示(変イ長調。譜例2)

Chopin_61_bb
【譜例2】主題b(midi) ※ソフィー・パチーニの演奏では、Track 9の3'49"

第72〜93小節、主題bの展開(ヘ短調、ホ長調、嬰ヘ短調、嬰ト短調と転調を重ねる)
第94〜115小節、主題aの展開(変ホ長調より種々転調)
第116〜147小節、主題c(譜例3)の自由な展開(変ロ長調)

Chopin_61_c_1
【譜例3】主題c(midi) ※ソフィー・パチーニの演奏では、Track 9の5'28"

・第2部
第148〜152小節、コラール風の間奏(ロ長調)(midi

Chopin_49_9_2
(2016−5−13 譜例追加)

第152〜181小節、主題d(ロ長調。譜例4)

Chopin_61_dd_2
【譜例4】主題d(midi) ※ソフィー・パチーニの演奏では、Track 9の7'13"

第182〜213小節、主題cの変形c’(嬰ト短調、ロ長調。譜例5)

Chopin_61_c_2
【譜例5】主題cの変形c’(midi) ※ソフィー・パチーニの演奏では、Track 9の8'31"

・第3部
第214〜216小節、序奏の縮小された再現。
第216〜225小節、主題c’の縮小された再現(ヘ短調、譜例6)

Chopin_61_c_3
【譜例6】主題c’の縮小された再現(midi) ※ソフィー・パチーニの演奏では、Track 9の10'48"

第226〜241小節、自由なフィギュレーションによる主調変イ長調への移行
第242〜253小節、主題aの再現。ただし、高音部で強奏される(変イ長調)
第254〜268小節、主題dの再現(変イ長調)【注】ココが、この曲のクライマックス <--- アルゲリッチは、ココをマシンガンのように連打している。
コーダ、第268〜288小節」

(下に続く)

(上の続き)

まず、パチーニさんの「ショパン:ピアノ独奏曲集」は、音がいい。

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《幻想ポロネーズ 作品61》という作品は、ベルリオーズの《幻想交響曲》のように、クスリでラリったような、意識が朦朧(もうろう)とした、眩暈(めまい)がするような幻想性・・・その「幻想性」と「作品が持つ論理的・構造的美しさ」が・・・《ショパンの書いたおたまじゃくしと、その中に埋め込まれた音》《隠れた音》(複雑・難解な構成、転調の多さ、メロディアスではないメロディ、ポロネーズのリズム、多声、ポリフォニー)によって・・・むしろ、際立たされ・・・作品の幻想性が、作品の構造の美によって昇華され・・・その結果、繰り返して言えば、「幻想性」と「作品が持つ論理的・構造的美しさ」が、両立し調和した作品だと思う。<--- 私は、ホロヴィッツ、アルゲリッチ、アヴデーエワの《作品61》には、ソレを感じる。が、パチーニの《作品61》には、ソレを感じない。

パチーニさんのデビューアルバムの「リスト:ロ短調ソナタ」では、彼女の若さ故の「怪我の功名」があったと思う。しかし、ショパンの《作品61》は、リストの「ロ短調ソナタ」とは違うのだ。パチーニの若さと技巧は、《弾くのも聴くのも難しい幻想ポロネーズ 作品61》において、好い結果を生まなかった。

・アルゲリッチと比較して

パチーニさんの《作品61》は、彼女が、第254〜268小節、主題dの再現(変イ長調)をクライマックスとして盛り上げた点に着目すれば、アルゲリッチのパフォーマンスに似ている【注】。しかし、《作品61》のポロネーズのリズム感に着目すれば、その民族的リズム感は、アルゲリッチには聞こえるが、パチーニには聞こえない。ポロネーズという民族舞踊のリズムは、《作品61》に統一感を与えている・・・しかし、《幻想ポロネーズ》は、《英雄ポロネーズ》とは違って、「ポロネーズの画然たるリズム」は、遅い楽想でアルペジオに、速い楽想で三連符と付点のリズムに替えられ、溶けてしまう・・・「ポロネーズの画然たるリズムは主な主題にはっきり跡づけられるが、それはいろいろに変えられている」(作曲家別名曲解説ライブラリー ショパン 177ページより)・・・とは言え・・・しつこいが、ポロネーズという舞曲の民族的リズム感は、アルゲリッチには聞こえるが、パチーニの《作品61》には聞こえない・・・アルゲリッチは、若い頃、マズルカも上手かった。それに対し、パチーニさんは、このアルバムにて、マズルカを弾いてない。

【注】ところで、第254〜268小節の主題d再現のクライマックス、ソコを、《テンポを遅くして交響的に弾く》ほうがカッコいいのではないかと私は思うのだが、ソコを、《あえてテンポを遅くして交響的に弾いている》ピアニストは、私の知る限り、いない。ということは、やっぱり、あえて、ソコを、テンポを遅くして交響的に弾かない方がいいのだろう・・・か・・・(?)

・アヴデーエワと比較して

月刊ショパン平成23年1月増刊号 第16回ショパン国際ピアノコンクール 付録CD盤におけるアヴデーエワは、《作品61》の第1小節からして、ヤマハを巧く鳴らす・・・パチーニの《作品61》を聴いた後に、アヴデーエワの《作品61》を聴くと、第1小節を聴いただけで、アヴデーエワの「音」は、リスナーに安心感を与える。ホッとさせられる。つまり《安心して聴いて居られるアヴデーエワ》。パチーニの《作品61》は、変な言い方だが「平べったい演奏」であり(これまた変な言い方だが)「啓蒙的」で「人工的」。アヴデーエワの《作品61》は、《暗示》《ほのめかし》《それらの音からの盛り上がり》が・・・デュナーミク、「テンポの変化」において、自然だ。パチーニの「人工的」とアヴデーエワの「自然」。繰り返すが、パチーニさんの《作品61》を聴いた後に、アヴデーエワの《作品61》を聴くと、ホッとする・・・アヴデーエワは、第1小節からして、パチーニに差をつけている。そして、アヴデーエワの《作品61》のデュナーミク、テンポの変化の自然さを聴くと、「(アヴデーエワは)さすがに、ショパンコンクールの優勝者だ」と思わせられる。パチーニもアヴデーエワも、《作品61》において・・・楽想の変化に応じてテンポを変えている(速めるなどしている)・・・が、パチーニは、ソノ楽想の変化を生かしきれていない。アヴデーエワは、楽想の変化に機敏に対応する。

パチーニさんの《作品61》にも、良さはある。ストレートで豪快。パチーニの《作品61》において、最初に呈示される主題d(sempre sostenuto il canto / 常に音を保つ。歌。第152〜181小節、ロ長調。譜例4。Track 9の7'13" )は、アヴデーエワより美しい。ある意味で、パチーニさんは、《音、楽想の美しさだけで》勝負しているような気がする。さらに、パチーニさんの《作品61》第242〜253小節、主題aの再現(変イ長調)、第254〜268小節、主題dの再現(変イ長調)の「盛り上がり」は、ストレートで気持ち良い。

【最後に】

ソフィー・パチーニは1991年、ミュンヘン生まれのピアニスト。現在、23才。英語版ウィキペディアには「Sophie Pacini (born 1991 in Munich) is a German-Italian pianist」と、書いてある。「Sophie Pacini」という姓名から察するに、彼女の両親はドイツ人とイタリア人であり、彼女にはドイツ人とイタリア人の血が流れている。彼女のリストが良かったのは、彼女が、ドイツ系だったからか。また、パチーニが、ショパンの《作品61》で、外しているのは、彼女は、スラブ系の音楽が苦手だからか。

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