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2014年5月17日 (土)

小菅優の「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ Nos.4, 15, 19, 20, 21, 25, 26」

Kosuge

ベートーヴェン

Disc 1
ピアノ・ソナタ 第15番 ニ長調 作品28「田園」
ピアノ・ソナタ 第25番 ト長調 作品79
ピアノ・ソナタ 第21番 ハ長調 作品53「ワルトシュタイン」

Disc 2
ピアノ・ソナタ 第19番 ト短調 作品49-1
ピアノ・ソナタ 第20番 ト長調 作品49-2
ピアノ・ソナタ 第4番 変ホ長調 作品7
ピアノ・ソナタ 第26番 変ホ長調 作品81a「告別」

小菅 優
2013 年録音

第4番、第15番、第19番、第20番、第25番が良い。

・第15番「田園」
第1楽章
非常に、良いと思う。
例によって、若干アクが強いが、よく歌っており、美しい「ソナタ形式」。
第2、3楽章
適度にメリハリがあり、そのメリハリが輪郭を描く。
第4楽章
つぼを押さえている。

下記メジューエワと同じことが言えると思う。第15番は、メジューエワと、いい勝負していると思う。

【参考】
メジューエワの『田園』はスティーヴン・コヴァセヴィチの『田園』と正反対の演奏である。メジューエワの『田園』は、まず、第1楽章のソナタ形式に味がある。第1楽章の展開部から再現部に行くところの「間」がよい(そこは、「フェルマータ付き4分休符2つ」が2回。adagio から tempo I )。コヴァセヴィチの『田園』第1楽章において繰り返し奏されるテーマは「またか」と思わせられるように味気ないが、メジューエワの第1楽章はその反対。コヴァセヴィチの第1楽章は、いまどこを演奏しているのか分からなくなるが、メジューエワの第1楽章は、これまたその反対。そして、メジューエワの第4楽章、ロンドのエピソードを聴いて「えっ、このロンドはこんなに面白い音楽だったのか」と私は思った。メジューエワの『田園』は、それぞれの楽章の味を存分に味わわせ、この作品の形式を私に改めて見出させてくれた。

・第25番
第25番第1楽章は、面白くない楽章と思っていたが、小菅の第25番第1楽章は気に入った。比較的テンポが遅い。表情がある。丁寧な演奏。「絶妙」と言っていいかも知れない。
メンデルゾーンの《ヴェネツィアの舟歌》を連想させるという第2楽章は、もうちょっと、歌ってもよかった・・・と思う。

・第21番「ワルトシュタイン」
「ワルトシュタイン」は、私の好きなピアノ・ソナタである。そして、ピアノ・ソナタ「ワルトシュタイン」において、アリス=紗良・オットのほうが小菅より、したたかであり、私の好みに合う(アリス=紗良の第3楽章のほうが美しい)。小菅の「ワルトシュタイン」は余裕がなく、うるさい。

イレギュラなことに、「ワルトシュタイン」第1楽章の第2主題は、再現部にてイ長調、コーダにてハ長調で再現される。
第3楽章のコーダ(プレスティッシモ、2分2拍子)では、ロンドの主題が短調(多分、ハ長調 ==>ハ短調)にうつろいながら3声で奏される(それは、ベートーヴェンの後期ピアノ・ソナタを思い出させる)。第3楽章のコーダは、そろそろ終わるだろうと、思わせながら、なかなか、終わらない。第3楽章のコーダのしつこさ・・・。
このソナタの「同じ音型・リズム」を移調しながら繰り返すしつこさ(特に第3楽章)・・・それらのしつこさが、ピアノ・ソナタ「ワルトシュタイン」の特徴だと思う。アリス=紗良・オットは、「ワルトシュタイン」が「しつこく」「イレギュラ」な性格を持つこと・・・そのことを含めて、このソナタを『(第1楽章)冒頭からして、とても陰鬱』という言葉で言い表したのかも知れない。

第1楽章
コーダを強調するためか、コーダの始めを、小菅は乱暴に弾いている(8分51秒あたり)。
第2楽章、冷静さが聞かれるのは、良いと思う。
第3楽章
小菅は、第2のエピソード(あるいは、第3主題。ハ短調。下記譜例)を豪快に弾いている(3分16秒あたり)。そして、「ロンド」の主題が回帰するところ(4分5秒、および、5分45秒あたり)は乱暴。コーダの開始(7分27秒)も乱暴。その乱暴さ、打鍵の強さに、私は、小菅の「余裕のなさ」と「粗さ」を感じる。
アリス=紗良・オットと小菅の「ワルトシュタイン」第3楽章を比較した場合、両者の違いは、アリス=紗良には、小菅より「余裕」がある・・・そして「したたかさ」がある。アリス=紗良の「ワルトシュタイン」第3楽章は、その楽章の特徴であるところの「しつこさ」が生かされていると思う。一方、小菅には、「ワルトシュタイン」第3楽章の「しつこさ」を生かす余裕がない。第3楽章のコーダ(プレスティッシモ、2分2拍子)は、そもそも、技巧的で華やかだが、しつこい・・・その「しつこさ」を、アリス=紗良は、「したたか」に・・・余裕をもって・・・生かしていると思う・・・アリス=紗良の「ワルトシュタイン」は「しつこさ」が心地よい(第3楽章コーダにおける「3声のロンド主題」から最後の和音にいたるまで!)。

Beethoven_op_53_3
「ワルトシュタイン」第3楽章、第2のエピソード(あるいは、第3主題。ハ短調) midi

・第19、20番
すべてのピアニストにとって良いお手本になる演奏だと思う。第19番の第2楽章は鮮やか。

・第4番
この第4番は、非常に気に入った。
第1楽章
荒々しいが、きれいなソナタ形式である。
第2楽章
ラルゴ、コン・グラン・エスプレッシオーネ(非常に表情豊かに)という指示通りの、たっぷりゆったりした演奏が良い。
第3楽章は、さりげなくうまい。
第4楽章
これまた、ロンド、ポーコ・アレグレット・エ・グラツィオーソ(やや速く、優雅に)という指示通りの演奏。
遅めのテンポで、たっぷり。優雅で優美。そして、彼女は、コーダ(下記譜例)の最後の一音まで、緊張感と美を保っている。

Beethoven_op_7_4
第4番 第4楽章のコーダ、midi

・第26番「告別」
第1楽章の冒頭の「Le-be-wohl」が非常に美しいので、期待させるが、小菅の「告別」は「恣意的」「自然体でない」「技巧に走っている」と思う。その結果、「告別」の物語性が伝わって来ない。前作の「ソナタ第28番」と同じく期待はずれ。
『ベートーヴェンの後期ソナタ』は、小菅にとって、鬼門(?)じゃないだろうか?

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