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2014年3月17日 (月)

ジョン・ケージの『南のエチュード』聴き比べ(1)

Etudes_australes_sultan

John Cage:
Etudes Australes (1974) (complete)
Grete Sultan, piano
1978/82年録音

CD 1 [72:13]
Book 1 [34:12]
Etude #1 [3:45]
Etude #2 [4:23]
Etude #3 [3:54]
Etude #4 [4:04]
Etude #5 [4:19]
Etude #6 [4:01]
Etude #7 [4:56]
Etude #8 [3:49]

Book 2 [37:53]
Etude #9 [4:59]
Etude #10 [4:24]
Etude #11 [4:30]
Etude #12 [3:46]
Etude #13 [4:05]
Etude #14 [5:09]
Etude #15 [4:19]
Etude #16 [5:36]

CD 2
Book 3 [45:13]
Etude #17 [5:04]
Etude #18 [5:12]
Etude #19 [4:56]
Etude #20 [5:00]
Etude #21 [5:22]
Etude #22 [6:50]
Etude #23 [6:07]
Etude #24 [6:26]

CD 3
Book 4 [52:14]
Etude #25 [6:22]
Etude #26 [6:40]
Etude #27 [5:29]
Etude #28 [6:48]
Etude #29 [7:04]
Etude #30 [7:03]
Etude #31 [7:18]
Etude #32 [4:47]

Grete Sultan, piano
Recorded: 1978 (CD 1) 1982 (CD 2, 3)
WERGO

--

Etudes_australes_liebner

ジョン・ケージ:
『南のエチュード』全曲(4CD)
ザビーネ・リープナー(ピアノ)
2011年録音

CD 1
第1巻
・Etude Nr. 1 [8:19]
・Etude Nr. 2 [8:01]
・Etude Nr. 3 [8:06]
・Etude Nr. 4 [7:58]
・Etude Nr. 5 [8:15]
・Etude Nr. 6 [8:19]
・Etude Nr. 7 [8:19]
・Etude Nr. 8 [8:11]

CD 2
第2巻
・Etude Nr. 9 [8:17]
・Etude Nr. 10 [8:12]
・Etude Nr. 11 [7:50]
・Etude Nr. 12 [8:19]
・Etude Nr. 13 [7:50]
・Etude Nr. 14 [8:19]
・Etude Nr. 15 [8:18]
・Etude Nr. 16 [7:51]

CD 3
第3巻
・Etude Nr. 17 [8:14]
・Etude Nr. 18 [8:05]
・Etude Nr. 19 [8:04]
・Etude Nr. 20 [8:12]
・Etude Nr. 21 [8:08]
・Etude Nr. 22 [8:07]
・Etude Nr. 23 [8:22]
・Etude Nr. 24 [7:57]

CD 4
第4巻
・Etude Nr. 25 [8:17]
・Etude Nr. 26 [8:21]
・Etude Nr. 27 [8:14]
・Etude Nr. 28 [8:14]
・Etude Nr. 29 [8:07]
・Etude Nr. 30 [7:55]
・Etude Nr. 31 [7:48]
・Etude Nr. 32 [8:08]

ザビーネ・リープナー(ピアノ)

録音時期:2011年
録音場所:ドイチュラントフンク・カンマームジークザール
録音方式:デジタル(セッション)
WERGO

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グレーテ・スルタン(Grete Sultan)盤は、Amazon.co.jp にて中古で購入(1,840円)。
英国アマゾンでは、おそらく最後の1セット(新品)が、32.26ポンドで売ってます(2014−3−18 現在)

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この作品の感想文を書くために、日記にメモして来たこと。その中で「忘れる前に書いて置いたほうがいい」と思うことを書く。

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グレーテ・スルタン(Grete Sultan)とザビーネ・リープナー(Sabine Liebner)の演奏を比較したとき、まずはじめに目につくのは、演奏時間の違いである(上記)。前者が全曲演奏時間、約3時間30分であるのに対し、後者は約4時間20分。リープナー盤がスルタン盤より約50分も長い。いずれにしても、長尺である。

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この作品は、もともと、グレーテ・スルタンのために書かれたものである(英語版ウィキペディア参照。これ全部読めたらいいのだが英語なので読めない)。
そのことからして、ケージは、グレーテ・スルタンが演奏したテンポを、否定しなかっただろう。
上記で「否定しなかっただろう」という変な言葉を使った理由は以下である。
つまり、「作品」が作曲者ケージの手を離れる。そしてそれは解釈者スルタンに委ねられる。すると「作品」は解釈者スルタンのものになり、「作品」における作曲者の思惑が外れることもあろう。ゆえに、このアルバムで「スルタンが弾いたテンポ」はスルタンのものであり、ケージがイメージしたテンポとは違うかも知れない。
もちろん、その逆に、スルタンは、ケージに忠実なテンポで弾いているかも知れない。
また、もしかして、ジョン・ケージ(1912 - 1992)の死後、2011年に録音されたリープナーの『南のエチュード』の遅いテンポのほうも、案外、ケージは、よしとするかも知れない。

ちなみに、フェルドマンにおいても、リープナーのテンポは遅い演奏時間は長い(「トライアディック・メモリーズ」の高橋アキ盤60分17秒とリープナー盤124分09秒)。

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そもそもこの作品には、テンポ指示が(多分)無い(上記英語版ウィキペディア掲載のスコアの一部参照のこと)。何故、ケージはテンポを指示しないのか(それはフェルマンにも言える)。♪=120 というテンポ指示を何故彼らは嫌うのか。
(たとえば、「トライアディック・メモリーズ/ユニバーサル・エディション」には、冒頭、「四分音符=63-66」と記載されてあるが、「テンポ指示は手書きのスコアには無い(No tempo indication in manuscript.)」と注釈がある)

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私は、上に「長尺である」と書いたが、本当は長尺ではない。『南のエチュード』は、全4巻、全32曲のエチュードからなる。そして、その一つ一つの楽曲は、紛れもなく「エチュード(練習曲)」である。それはこの作品において重要なこと、また、この作品を聴く上でも重要なことだ。一つ一つの曲を独立した練習曲として聴くことができる。しかも、演奏技術を鍛えるための文字通り「練習曲」の性格を持つと思う。そういう点で、フェルドマンの長尺ピアノ曲とは性格が違う。

上記ウィキペディアに「The etudes, conceived as duets for two independent hands, are extremely difficult to play.(このエチュード集は、独立した両手のデュエットとみなされ、演奏するのが極めて難しい)」とある。

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スルタン盤は、1978/1982録音なので、ジョン・ケージとモートン・フェルドマンの存命中の録音であり、スルタンの演奏は、ケージら二人が「アメリカ・ニューヨークから楽壇を変える『ニューヨーク楽派』の果敢な挑戦(ウィキペディアより)」のまっただ中に録音されたもの・・・その意味で、時代の音がすると思う(ただし「時代の音」というのは抽象的!)。

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私は、グレーテ・スルタンというピアニストの演奏を、上記アルバムで、初めて聴いたが、技巧は優れている。
また、スルタンの『南のエチュード』は録音は古いが(アナログ録音)、その録音の「古さ」は、大音量で聴いても、さほど気にならない。。

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リープナーの演奏は、暴力的・・・と言っていいほど強烈。
スタッカートというよりも、時折、あたかも鍵盤をひっぱたくような音・・・すぐにダンパーで消音・・・しかしピアノの胴体(?)から長い残響が聞こえる(私は最初、リープナーの第1曲目を「Amazon.co.jp MP3ダウンロード」で試聴したが、その1分40秒のフォルテッシモがカッコよかったので、このアルバムを購入した)。

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リープナーの演奏は、どの曲も、8分前後であるのは、時計で計って演奏した? それから、リープナーの演奏は、時々、休止が入る(曲の途中で)。

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スルタンは、この作品を、やや旋律的に弾いている。

この作品は、無調で書かれているが、時々調性を持つ和音が聞こえる(リープナーの第1巻第5曲の6分46秒など)。

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スルタンとリープナーは、スコアから異なるテクスチュアを読み取った・・・(なんて、カッコいいこと言っているが)それが具体的に、どの曲のどの音にあらわれているか、指摘することは、私にはできない。だがあえて言えば、スルタンは、音の連続性を生かしている(スタッカートして音を切るが、音はうまくつながっているし、うまく混ざって聞こえる)。
リープナーも同じことをやっている。しかし、リープナーは、時折現れる持続音などの「音の持続性を、あくまで音の不連続性を生かすために」使っていると聞こえる。概して、スルタンの演奏は古い奏法であり、リープナーの演奏は新しい奏法。

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スルタンの演奏は熱い。熱いだけでなく、激しい。南半球の星座や銀河の神秘的で強烈なまぶしさ、ダイナミックな宇宙(宇宙は決して静的はない)の像を見ているようだ。

リープナーの演奏は知的だが、第4巻(CD 4)はなかなか熱いと思う。
リープナーの鋭い音と録音の迫力は、どちらかというと、白色矮星のような高温の恒星を連想させる。また、超新星爆発(恒星の最後の輝き)、20世紀に発見され今日も観測されているニュートリノ、さらにヒッグス粒子など素粒子やビッグバン直後の宇宙の不思議、また、星間の暗さを想像させる。

満天の南の星空。どちらも、美しく輝かしい・・・。どちらも名演。

・おまけ
ジョン・ケージの作品に、こんなまともなものがあるとは思わなかった。

【2014−3−27 追加】

大事なことなので、もう一度書きます。この作品は、ジョン・ケージが、グレーテ・スルタンのために作曲した作品です。

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