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2014年1月27日 (月)

バックハウスの「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集」新旧盤聴き比べ!

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ヴィルヘルム・バックハウスの「ベートーベン:ピアノ・ソナタ全集(1950 - 1954録音)」

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同「ベートーベン:ピアノ・ソナタ全集(1958 - 1969録音)」

バックハウスの「ベートーヴェン:Pf ソナタ全集新旧盤聴き比べ」が完成したので、以下、作品番号順にまとめました。

カッコ内は録音年。

・第1番 ヘ短調(1953 / 1963)
「モーツァルトの《ト短調交響曲》としばしば比較される引き締まった(第1楽章)第1主題(ベートーヴェン (作曲家別名曲解説ライブラリー) 348ページより)」
旧盤は、第1楽章第1主題と第2主題の対照性(旋律線が反対)がよく聞こえる。各楽章の動機が生き生き聞こえる。右手と左手のバランスが良い。新盤は、バックハウスの筋力の衰えが聞こえる(多分、バックハウスは左手が衰えている)。
私の主観では、新旧盤とも、第4楽章プレスティッシモの第2主題が、美しく導入されていないように聞こえる。新盤は第4楽章のみならず全体的に粗いね。

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第1番 第4楽章 第2主題(midi

・第2番 イ長調(1953 / 1968)
旧盤、第1楽章は、音型の断片が対位法的にあまりきれいでないと聞こえるが気のせいだろうか。第2楽章ラルゴ以降で挽回している。第4楽章は明快でエクスタシーを感じる。ロンドの主題の鮮やかさ。
新盤の第1楽章のほうがきれいに聞こえる。第2楽章以降も悪くないと思う。第4楽章は旧盤より粗いがやはりテンションは維持されている。音が若干汚いが、これは録音のせいか?

・第3番 ハ長調(1952 / 1969)
旧盤は、非常に良い演奏だと思う。躍動的で生き生きした第1楽章(コン・ブリオ、生き生きと)。アルペジオ〜カデンツァを引きずっていないのも良いと思う。第1楽章から第2楽章(私の好きな幻想的な楽章)への流れも良い。スケルツォも生き生きしている。すなわち、各楽章のコントラストが気持ちいい。第4楽章は優美で、フィニッシュは、控えめながら伸び伸びとルバートして華やかに終わる(トリルから、calando、rallentando、Tempo I)。
新盤は、やはり、衰えている。旧盤に比べ新盤に不安定さを感じる(気力・体力の衰え)。その代わり、第1楽章のアルペジオ〜カデンツァを、バックハウスは旧盤より少しだけ盛り上げている。第4楽章は元気。

・第4番 変ホ長調(1953 / 1966)
新盤は、粗いし衰えているが良いと思う。新盤は第1楽章(コン・ブリオ、生き生きと)からして突進力があり、第2楽章は、文字通り「コン・グラン・エスプレッシオーネ(大いに表情豊かに)」。第2楽章は静かな楽章かと思っていたが、意外に粗く弾くといいね。第4楽章グラツィオーソ(優美に)は粗さと優美さが同居している(第4楽章ロンドのコーダ)。
旧盤は、新盤の粗さがなく精緻ではあるが、模範的すぎて(うますぎて)新盤に比べて面白くないかも・・・。
第4番については、新盤のほうが、新鮮かも・・・。

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第4楽章ロンドのコーダ(midi

・第5番 ハ短調(1951 / 1963)
旧盤は、ほぼ完璧に音楽がコントロールされている。しかし、第1楽章ハ短調コン・ブリオ(生き生きと)は、もっと強い演奏をしても良かったのではないかと思う。第2楽章アダージョ・モルトは風情がある。第3楽章ハ短調プレスティッシモは激しくて良い(挽回している)。
新盤は良くない。ただ、第2楽章には風情がある。
早い話が、バックハウスは、速い楽章やパッセージに衰えが見られ、遅い楽章は衰えが目立たない(当たり前か)。

・第6番 へ長調(1951 / 1963)
旧盤は、端正。だが、第1楽章は、気のせいか打鍵に力なく指が回ってないように聞こえる。第2楽章へ短調スケルツォは、第1楽章とは対照的にロマン的。第3楽章プレストは「魔笛」の序曲に似ている。第1楽章と第2楽章のコントラストには納得させられたが、第3楽章は付け足しに聞こえる。
新盤のほうが、おおらか、かつ丁寧で良い。第1楽章、もう少し指が鮮やかに動けば良かったと思う。第1楽章は楽想の切れ目が自然。第3楽章は旧盤より生き生きしている。ブラボー。

・第7番 ニ長調(1953 / 1963)
これは、大昔、NHK で放送された映像「幻のアーカイブ」におけるリヒテルが良かったと思う(録画したビデオは火事で焼失)。
バックハウス旧盤は、第1楽章ニ長調プレストを比較的緩めに(ゆるめに)に弾いて、第2楽章ニ短調メスト(悲しく)とのコントラストを図った。そして、それに続く第3楽章メヌエット、第4楽章ロンドはニ長調であり緊張感が緩む。

私の記憶では、上記映像においてリヒテルは・・・第1楽章は、余人を寄せ付けない技巧で強烈な印象をリスナーに与え、第2楽章メストは『これ以上落ち込むことができないほどのメスト』でリスナーに『戦慄』を与える・・・そういう演奏をリヒテルはしていたと思う。リヒテルは、全楽章を強烈な緊張感で弾いていた。バックハウス第7番新旧盤はリヒテルに負けると思う。

バックハウスの7番は、新盤のほうが良いかも知れない。この曲は歳を取ると、より深い演奏ができるようになるのかも(ナンセンスか)。第1楽章の演奏時間は、旧盤は4分56秒、新盤は4分52秒・・・ほとんど変わらない。しかし、新盤第1楽章は若干メリハリと元気があるように聞こえる。第2楽章メストの演奏は旧盤とほとんど変わりないが、若干悲愴感あるかも・・・しかし、新旧第2楽章の演奏時間もほとんど変わらない。新盤の第3、4楽章は、やはりリラックスしてしまっている。第4楽章に若干の盛り上がりを聞けるが、やはり物足りない。

・第8番 ハ短調《悲愴》(1954 / 1958)
私は、《悲愴》という曲が大好きなのだが、バックハウス旧盤は、最高!
バックハウス新盤の第2楽章カンタービレは、うっとりさせてくれない。

・第9番 ホ長調(1953 / 1968)
旧盤は、細やかな演奏(テンポ、デュナーミク)。旧盤は細やかだが、新盤より若干テンポが速く「動的」という印象を受ける(演奏時間に差はない)。新盤は繊細さに劣る。

・第10番 ト長調(1952 / 1968)
同上。第2楽章変奏曲の演奏時間に差がある(旧盤4分50秒、新盤5分28秒)。新盤は、解釈が粗い。旧盤は名演。

・第11番 変ロ長調《大ソナタ》(1953 / 1968)
旧盤はうまい。運指がきれい。ノーブルな第2楽章。第4楽章も技巧的かつノーブルだ。「第11番は、大きな音が出ることや、指が早く動かないとなかなか大変」というご意見に納得。旧盤は、第11番のベストかも・・・。
新盤は、旧盤に比べれば少し粗いが、美しく、かつ力強い、と・・・言いたいところだが、旧盤第2楽章が「エスプレッシオーネ(表情豊か)」であるのに対し、新盤第2楽章は、旧盤に比べると「エスプレッシオーネ」じゃないような気がする(ただし、第3、4楽章で挽回している)。

・第12番 変イ長調《葬送行進曲》(1950 / 1963)
これは、大昔、NHK で放送された「幻のアーカイブ」におけるリヒテルがうまかった。
バックハウスの第12番新盤は、第3、4楽章が力強いし、各楽章のバランスも悪くないが、リヒテルの個性と技巧、幻の名演には、負ける。リヒテルの演奏は、重々しさと緊張感で勝負していた。
バックハウスの第12番「旧盤」のほうが「新盤」より、やっぱり全体的に技巧的に充実しているような気がする(繊細さと明解さ)。演奏時間は、旧盤(7' 25 + 2' 53 + 5' 25 + 2' 50)、新盤(7' 05 + 2' 38 + 5' 11 + 2' 48)。

・第13番 変ホ長調(1952 / 1969)
新旧盤どちらも良い。
ユニークな解釈が聞ける。新盤も指がちゃんと動いていて、力強い。堂々たる幻想曲。これは、第13番のベストかも・・・。最終楽章で「アダージョ・コン・エスプレッシオーネ」が再現するが、それは自然であり、締めくくりのプレストも自然である。

・第14番 嬰ハ短調《月光》(1952 / 1958)
旧盤は美しい演奏なのだが、私は、シュナーベルの演奏のほうが好き。新盤の第3楽章は汚い(録音のせいか)。

・第15番 ニ長調《田園》(1953 / 1961)
旧盤は、指が回っている。巨匠の風格。第1楽章のソナタ形式からして終始、落ち着き払った演奏。スキがない。うまいね。新盤は、対照的に第1楽章から低音を響かせ、豪快にエキサイトしている。新盤は、旧盤との違いが生きていると思う。

・第16番 ト長調(1953 / 1969)
この作品は HJ Lim の派手な演奏のほうが間違いなく面白い。なぜなら、この作品は地味な作品だからである。バックハウスの演奏は新旧盤とも、うまいのだが、真面目すぎて退屈する。第2、3楽章の速いパッセージにバックハウスの衰えは聞かれない(新旧盤)。例によって、新盤は粗い。そしてやや豪快。

・第17番 ニ短調《テンペスト》(1952 / 1963)
私の主観では、旧盤は「うまい」の一言に尽きる。手堅い演奏。第1楽章は奇怪な(あるいは幻想的な)楽想なのに、きれいなソナタ形式を聞かせる。この作品は、3つの楽章がすべてソナタ形式でありベートーヴェン的論理性と、ベートーヴェンの後輩たちのロマン性を合わせ持つ作品だと思うのだが、バックハウス旧盤は、その点をクリアしている。
新盤は、衰えている。テンション高くないし、残念ながら良くない。音汚いし・・・。
《テンペスト》は、ポリーニ盤が良かったような気がするが、私はそれを火事で焼失したので、聴き比べることができない。

・第18番 変ホ長調(1954 / 1963)
新旧盤どちらも良い。
新盤の速い楽章は、指が回っており、堂々たる演奏。第3楽章は優美に(グラツィオーソ)歌っている。私の好きな第4楽章プレスト・コン・フオーコ(火のように)は、指が回っており、力強い。ソナタ形式がちゃんと聞こえて、素晴らしい(しかしグールドのコン・フオーコのほうが私は好きだ)。
旧盤は、バックハウスの癖を聞けると思う。

・第19番 ト短調(1952 / 1968)
旧盤は、お手本になる。
「この作品には発想標語がないので、かえって、演奏するのが難しいのではないか?」「第1楽章はメランコリックな慰めか?」「第2楽章ト長調は、ト短調(♭2つ)に転調された小節が長いね〜」
それらが旧盤において、表情豊か、かつ自然に解決(解釈)されていると思う。
新盤は、衰えが目立つ。たとえば、第1楽章のデュナーミクは、うるさく自然でない。

・第20番 ト長調(1953 / 1968)
第19番と同じことが言えると思う。

・第21番 ハ長調《ワルトシュタイン》(1950 / 1958)
アリス=紗良・オットが《ワルトシュタイン》は「冒頭からして、とても陰鬱」と言っている。私も、この作品は、後期ピアノ・ソナタにつながるユニークさ、ある意味グロテスクさを感じる(楽曲解説は省略)。
新盤、最終楽章への「導入部(Introduzione)」は、第28番最終楽章への「導入部」と同様にうまい。
旧盤の第1楽章と最終楽章、ベーゼンドルファー・インペリアルがほえている(それは聴き応えある)。楽想・調性の変化は旧盤のほうが面白い。
旧盤は最終楽章ロンドのテーマのあと少し音楽を止めているが、新盤は一気に弾いている。私は後者のほうが良いと思う。
だが新旧盤いずれもバックハウスの弾く最終楽章はだれる。旧盤最終楽章のほうは若干イレギュラな演奏だが、それも効果なく、やっぱりだれるというのが私の率直な感想(旧盤9分46秒、新盤9分41秒)。
《ワルトシュタイン》最終楽章ロンドは長いし(119小節)、第1楽章と最終楽章は大きく充実したコーダを持つ・・・それらを聴くとき、私は、私が好きなピアニスト、アリス=紗良・オットの演奏のほうを好む(最終楽章のしつこさ)。

・第22番 ヘ長調(1952 / 1969)
人気ないけど佳い作品です。
バックハウス旧盤より、HJ Lim の豪快な演奏のほうが面白い。なぜなら、これは、アヴァンギャルドな曲だから。
ただし、バックハウス新盤第1楽章に私は巨匠性(?)を感じた。新盤第2楽章は衰えているが、これも巨匠的かな?

・第23番 ヘ短調《熱情》(1952 / 1958)
旧盤は完璧な演奏だと思う。第1楽章の多分展開部の終わり(4分25秒あたり)、コーダ(8分00秒あたり)はすごいね。
新盤は、あまり衰えていない。

・第24番 嬰ヘ長調《テレーゼ》(1952 / 1969)
これは面白い作品だと思う。なぜなら、第1楽章も第2楽章も嬰ヘ長調、ソナタ形式。第1楽章(アダージョ・カンタービレ〜アレグロ・マ・ノン・トロッポ)、第2楽章(アレグロ・ヴィヴァーチェ)。
新旧盤ともに、第1、2楽章は、良い意味でも悪い意味でもソナタ形式に忠実な演奏(バックハウス旧盤第1楽章展開部リピートは少ししつこいと思う)。
新盤は伸びやかで自由。新盤は、ある意味、ベートーヴェン39才の完成された「美」を表していると思う。形式のユニークさを生かしつつ、ある種の耽美的な演奏をしていると言っていいかも知れない。
旧盤は、バックハウスの技巧に何ら問題ない。しかし、ある意味、楽譜のとおりの演奏で物足りないような気がする・・・が、気のせいか・・・。

・第25番 ト長調《かっこう》(1951 / 1963)
この作品は、メンデルゾーンの《ヴェネツィアの舟歌》を連想させるという第2楽章が魅力。
旧盤のほうがいい。生き生きした第1、3楽章。エスプレッシーヴォ(表情豊かに)かつロマン的な第2楽章。「急 - 緩 - 急」が生きている。
新盤は不安定。だが、第2楽章は良いと思う。

・第26番 変ホ長調《告別》(1953 / 1961)
旧盤は、ほぼ完璧、というか完璧な演奏だと思う。最初の3つの和音でうっとりさせられる。第1楽章アレグロに行って「シ」の音が1オクターヴ跳躍するところが私は大好きなのだが、その「1オクターヴ跳躍」を、バックハウスはリラックスして弾いているのがいい。第2楽章で少し退屈(不在なので退屈)させといて、第3楽章「ヴィヴァチッシマメンテ(非常に生き生きと)」は、まさに「再会」の喜び。ソナタ形式によるほぼ完璧な演奏を聞かせていると思う。
新盤のほうが、ある意味、良いかも知れない。旧盤と、同じ解釈なのだが、旧盤より、良い意味でモダンな演奏だと思う。全体的に衰えによる粗さが聞かれるが、その点において、新旧盤の差は微小であると思う。第1楽章の調性はきれいであり、第2楽章エスプレッシーヴォ(表情豊かに)から第3楽章への流れは旧盤よりストレート。全曲の見通しの良い演奏である・・・と、言ってもいいかも知れない。

・第27番 ホ短調(1954 / 1969)
新盤の第2楽章は、痛々しい。すなわち、私の好きな第2楽章カンタービレ(ドイツ語で、速すぎないように、そして十分歌うように)、バックハウスは最晩年の力を振り絞っていて余裕がない。
旧盤の第2楽章ロンドは、テーマとエピソードが織りなすテクスチュアが聞こえるが、もっと歌って欲しかった。第2楽章の演奏時間は旧盤が6分59秒、新盤が7分34秒。
旧盤の第1楽章は「生き生きと、そして終始感情と表情をもって」力強いソナタ形式を聞かせる。新盤第1楽章は、何を言いたいのか分からない。

・第28番 イ長調(1950 / 1963)
「旧盤最終楽章の4声フーガ」が良い・・・というか、「旧盤最終楽章」が良い。ブラボー。
旧盤のほうが、演奏時間が短く聞こえるので(テンポが速く聞こえるので)、演奏時間を見てみたら、旧盤が約17分11秒。新盤が約18分45秒・・・演奏時間にあまり差はない(意外)。私は、「第28番新盤」を、昔、LPレコードで聴き込んだので第28番は新録音のほうに思い入れがある・・・「第28番新盤」は安定感あるし、モチベーション高いし、フーガうまいし・・・しかし、やっぱりいま改めて聴いてみると私は「旧盤最終楽章」のほうが好きだ・・・模倣に次ぐ模倣、そしてフーガ・・・バックハウスの演奏は野暮ったく不器用に聞こえるかも知れない。だが、旧盤における彼の指は、まるで勝手に動いているように聞こえ、模倣とフーガはまるで生き物にように聞こえる。

・第29番 変ロ長調《ハンマークラヴィーア》(1952年旧録音のみ)
きじん(鬼神)の演奏。

・第30番 ホ長調(1950 / 1961)
旧盤第30、31、32番は圧巻だ。
旧盤第30番、第1楽章の展開部(第40小節、トラック1の1分07秒)のエクスタシーが素晴らしい。私はそのエクスタシーが大好きである。バックハウスは、最終楽章の第4変奏の「エトヴァス・ラングザーマー・アルス・ダス・テーマ(テーマよりやや遅く)」を、グールドと違って指示どおりに演奏している。私は、グールドの「ベートーヴェン:ソナタ第30、31、32番(1956年録音)」も大好きだ。だが、グールドの「背いた」エクスタシーが、バックハウスの「背かない」エクスタシーより良いと断言する人はいないだろう。
驚いたことに新盤は、旧盤のコピーのように似ていると私は思った(もっとも、最終楽章最終変奏は旧盤のほうが奇麗)。私は、ベーゼンドルファー・インペリアルを生演奏で聞いたことも、弾いたことも、触ったこともないが、このバックハウスのソナタ第30番新盤の最終楽章は、インペリアルの音をうまく拾っているのではないだろうか(低音)。

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ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番ホ長調作品109 第3楽章 第4変奏(midi

・第31番 変イ長調(1953 / 1963)
私は、旧盤のほうが、インペリアルの音に近いと思うのだが、この第31番新盤もインペリアルの音をうまく拾っていると思う。
旧盤の第1楽章はノーブル。最終楽章「嘆きの歌」と3声のフーガ、その難しさを易々と弾いている(鬼神だ)。
新盤の第1楽章(ソナタ形式および移調)および、最終楽章の3声のフーガは、旧盤に劣る(フーガは指がもつれて声が鮮明に聞こえないと言ったら言い過ぎだろうか)。

・第32番 ハ短調(1953 / 1961)
本家ともりんさんは、「カーネギー・ホール・リサイタル、1954」のほうが良いと書いてあるが、それを私は火事で失ってしまったので、今は聴き比べることができない。しかし、バックハウスの第32番「旧盤(1953年セッション録音)」と「カーネギー・ホール・リサイタル(1954年ライブ録音)」のいずれかの演奏が「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタの頂点」であることは間違いないと思う。
新盤は良くない・・・私は聴きたくない。

【まとめ】
私は、改めてバックハウスの「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集」新旧盤を聴いてみて、新盤に良い演奏があることを知った。もっとも、新盤はバックハウス70歳を過ぎてからの演奏であることを前提にすれば、その衰えを大目に見るし、この巨匠への尊敬の念が、新盤への評価を甘くさせるかも知れない。バックハウスのベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集「旧盤」と「新盤」を聴き比べるのは面白い。その理由は、バックハウスというピアニストは、意外に即興的な演奏家だったこと。モノーラル録音、ステレオ録音いずれも、ベーゼンドルファー・インペリアルを弾いていること。バックハウスが弾くその楽器の音が本当はどんな音だったのか? バックハウスは、その楽器を弾くピアニストとして最初にして最後の名手だったのか? もし彼が、現在、その楽器でベートーヴェンを演奏し、最新の技術で録音され再生されたら・・・と、想像しながら聴くことは面白かった。(グールドがコンサートをやめ、スタジオにこもったのは良かった。なぜなら、グールドは、彼の音をレコードでしか聴けなくしたことによって「本当はどんな音だったか」という問いを無にしたから)

【2014−3−25 追加】

・第32番 ハ短調
本家ともりんさんお薦めの「カーネギー・ホール・リサイタル、1954」を手に入れた。
第32番(1953年、セッション録音、1954年、ライヴ録音)を比較する。甲乙付けがたい。1954年ライヴはスリルに勝る。1953年セッションは後者のスリルに比較すれば、手堅いと思える。
「カーネギー・ホールでのライヴ録音第32番第2楽章」は、臨場感、おおらかさ、スコアをなぞるだけではない浮遊、自由なデュナーミク、速いが自然なテンポ、そのスピード感、速い演奏と「歌」を両立させるテクニック。そして何より、その「聞きやすさ」が魅力だと思う(1953年、セッション録音は完璧過ぎて聴くのが疲れる)。本家ともりんさんのご意見「『人間的な感情への沈潜』を徹底的に拒否」「人間的感傷を吹き飛ばして、一気に天の高みに飛翔する事」が、むしろ、私をして、「バックハウス第32番の第2楽章」に感情移入させる。

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