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2011年12月24日 (土)

アイヴズ作曲「ピアノ・ソナタ 第2番」の決定盤を求めて(5)

Ives_pf_sonata_2_2_00
Copyright 1947 by Associated Music Publishers, Inc., New York

作品について

・第2楽章「ホーソーン」

アイヴズという作曲家を好きな私でも、この楽章は少し「やり過ぎ」ではないかと思う。この楽章は「a scherzo supposed to reflect a lighter quality which is often found in the fantastic side of Hawthorne. ホーソーンの幻想的な側面にしばしば見られるやや軽い資質を反映すべきスケルツォ(ウィキペディアより)」であり、アイヴズの前書きによると「an extended fragment trying to suggest some of his wilder, fantastical adventures into the half-childlike, half-fairylike phantasmal realms(拡張された断片。ホーソーンのやや野性的で幻想的な冒険物語 --- それは半分子ども半分妖精の妖怪の世界へと通じる --- を表そうとするもの)」である。私の考えでは、第2楽章「ホーソーン」は、諧謔、遊び、いたずら、茶目っ気、即興の音楽であるが、それはグロテスクというより、クレイジーだと思う。

この楽章は、「ショパンのピアノ・ソナタ第2番の第2楽章(スケルツォ)」を思わせる軽快できらびやかな(ただし、ショパンのソナタ2番のスケルツォよりはるかに幻想的な)音楽で始まる(上記画像参照)。

カリッシュ盤の1分23秒あたりで、例の14と3/4インチの板で鍵盤を同時に押す特殊奏法が現れる。それは下の動画で見ることができる。

その特殊奏法は、14と3/4インチ、すなわち 37. 4 cm の棒さえあれば誰にでも演奏できるむしろ簡単な奏法である。私も試しに、竹性の30センチ物差しで、我が家の電子ピアノの黒鍵を押さえてみた。そうすると、同じような音が出た。この特殊奏法は、カリッシュ盤の1分23秒から2分54秒あたりまで、計32回(上の動画では省略されている)の打鍵で奏される(譜例9、アイヴズの注釈には「たたいてはいけない without striking 」とある)。

Ives_pf_sonata_2_2_01
譜例9

--

さて、第2楽章「ホーソーン」は、上記の特殊奏法の部分までは、むしろ美しい音楽だと思う。

だがそのあと、奇怪な音楽になると思う(特殊奏法のあと、音楽がどの方向に向かうのかわからない)。

以下、箇条書きで

・カリッシュ盤の4分29秒あたり
「運命の動機(オールコッツの旋律)」が現れる。

・カリッシュ盤の4分55秒あたり
賛美歌「Jesus, Lover of My Soul」らしき旋律が現れるが、それは荒々しいノイズでインターラプトされる。

・カリッシュ盤の6分35秒あたり
明るい行進曲(出典不明)になる(譜例10、midi)。

Ives_pf_sonata_2_2_03
譜例10

・カリッシュ盤の7分13秒あたり
一旦、短調になる。

そのあと、音楽はジャズ的、即興的な激しい部分を経過し、

カリッシュ盤の8分43秒あたりでフェルマータが入る。そのあと、静かで美しい音楽が短く挿入される。

・カリッシュ盤の9分28秒あたり
「O Columbia, the Gem of the Ocean(下記参照)」が最初はグロテスクに引用され次第にテンポを速める。

10分34秒あたりで、一旦、休止する。

そのあと、第2楽章の終わりまで、音楽は「roller coaster ride(ジェットコースター)」のように展開する(roller coaster ride という言葉は、René Eckhardt 盤のリーフレットの書かれてある言葉である)。

--

第2楽章「ホーソーン」を通して私が思うことは、

・アイヴズのピアノ・ソナタ第2番もまた大衆的であること(讃美歌・行進曲の引用、ジャズ的要素によって)。

「O Columbia, the Gem of the Ocean」は、グレン・ミラーの「アメリカン・パトロール」に引用された音楽であり、誰でも聴いたり演奏したりする大衆の音楽である。

・その意味で、アイヴズのピアノ・ソナタ第2番は、ベートーヴェンの後期ピアノ・ソナタのように聴かれるべきではなく、また、弾かれるべきではない。すなわち、繰り返すが、アイヴズのピアノ・ソナタ第2番は、ベートーヴェンの後期ピアノ・ソナタ(=同時代、すなわち、ベートーヴェンが生きていた時代の一般大衆には難しすぎたベートーヴェンの後期ピアノ・ソナタ)のように聴かれるべきではなく、また、弾かれるべきではないこと。

・繰り返すが、アイヴズのピアノ・ソナタ第2番は、崇高な世界の音楽であるベートーヴェンのピアノ・ソナタとは異なること。アイヴズの音楽は大衆に根ざした音楽であること。
(第3楽章「オールコッツ」に続く)

Columbia_the_gem_of_the_ocean

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