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2011年11月24日 (木)

チャールズ・アイヴズ作曲 ヴァイオリン・ソナタ聴き比べ(3)

第3ソナタ第3楽章はなんとなく音楽がエクスタシーに達するのをヴァイオリンとピアノが互いに抑制し合っているかのように聞こえる。

第3楽章は、ピアノ・ソナタのようにピアノ・パートが雄弁である。第3楽章の最後の7小節はピアノが非常に美しい。その最後の7小節は、カート・トンプソン&ロドニー・ウォーターズ盤のウォーターズによるピアノ演奏のほうが、ハーン&リシッツァ盤のリシッツァの演奏より美しい(譜例1、midi)。

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譜例1

第3楽章の最後のクライマックスを盛り上げるのは、最後から46小節目から始まるバスのオスティナートである(譜例2、midi)。それは、ヒラリー・ハーン盤では、6分29秒あたりから始まる。

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譜例2

譜例2のバスのオスティナートは、次第に音程を上げ、次には、付点8分音符になる(譜例3、midi)。

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譜例3

第3楽章の最後の27小節にはオリジナルと Sol Babitz 編集によるオシア(ossia)がある。ヒラリー・ハーンはオシアを弾いているが、カート・トンプソン&ロドニー・ウォーターズ盤のトンプソン、および、Hansheinz Schneeberger violin Daniel Cholette piano はオリジナルを演奏している。オシアでは、最後から27小節目で「I need Thee, O I need Thee」の旋律が1オクターブ高くなり、さらに重音で奏される。私は、オリジナルのほうが良いと思う(譜例4、midi)。【注】

Ives_vn_sonata_3_3_41
譜例4

しかし、この長い第3楽章は、フィニッシュに持っていくまでのプロセスが難しいと思う。この楽章は、精緻に書かれてはいるが、つかみどころがない。たとえば、そもそも、この楽章のピアノによる開始はつかみどころがない。さらにヴァイオリンのアインガングは不気味だ(譜例5、midi)。

Ives_vn_sonata_3_3_02
譜例5

ヒラリー・ハーン盤における1分21秒から、ヴァイオリンが持続音を発音する。すなわちヴァイオリンのG線の開放音が5小節持続する。そしてその後、音楽はクライマックスに行くが、それは乱暴に聞こえる。

--

第3楽章の前半(2分27秒)に、譜例2のオスティナートに似た箇所がある(譜例6、midi)。

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譜例6

その後に、ヴァイオリンの下降音階が現れる(譜例7、midi)。私は、その下降音階によって音楽が一旦収束していると思う(3分26秒)。

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譜例7

ハーンとリシッツァの第3ソナタ第3楽章は、激しくぶつかり合うように掛け合うのが良い。それは複雑怪奇な音楽と格闘しているかのように聞こえる。

カート・トンプソン、ロドニー・ウォーターズの演奏はアンサンブルが若干悪い。

Gregory Fulkerson violin はソナタ全4曲をよく歌っているし、Robert Shannon piano はピアノを丁寧に弾いており、作品を勉強するための良い素材だと思う。

Hansheinz Schneeberger violin Daniel Cholette piano の演奏は恣意的に感じる。

【注】 第3ソナタ第3楽章のエンディングでは、オシアではなく、オリジナルを演奏する方が、譜例1のピアノ伴奏が生きるのではないかと思う。オリジナルを演奏しているカート・トンプソン&ロドニー・ウォーターズ盤、および、Hansheinz Schneeberger violin Daniel Cholette piano 盤は、譜例1が生きていると思う。
(続く)

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コメント

今回は音楽の記事にお邪魔します。

アイヴズのヴァイオリン・ソナタは、かつてフルカーソンの Bridge盤を持っていたことがあり、DENONの安価CDPでもたいへん美しいヴァイオリンの音色を聴かせてくれましたが、音楽はどうもピンと来ず、手放しました。トムソン(トンプソン)の弾くNAXOS盤を聴いても、いまいち退屈します。
そんなところへ貴記事でハーン/リシッツァ盤を知り、手許不如意ながら欲しくなっております。

ところで、LP時代の終わりに、米Nonsuchレーベルで、ポール・ズーコフスキーとギルバート・カリッシュによる録音がありました。
デジタル録音なのになぜかCD化されなかったのが不審でしたが、現在、別レーベルで復刻されているようです。ただし、2枚バラ売りのようです。

へうたむさん。ふたたびコメントありがとうございます。

アイヴズの Vn ソナタは、アメリカ音楽を好きな人ではないと、好きになれないかも知れません。私は、カントリー・ミュージックが好きです。それは、私がビートルズを好きだからだと思います(初期のビートルズはカントリーの雰囲気がある)。私は、ジョージ・ガーシュインやグレン・ミラーなどのジャズも好きですし・・・。

もう一つ、欧米の賛美歌。
第3番には、BEULAH LAND, I NEED THEE EVERY HOUR が引用されています。アイヴズの作品にはアメリカ人の宗教・信仰・コミュニティーがバックグラウンドにあると感じられます。

http://koshiro-m.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-033f.html
参照のこと

アイヴズの Vn ソナタは、どこからどこまでが、アイヴズの音楽でどこが引用なのか分かりにくいですが、私にその点について気になりません。しかし、それを「純音楽」ではないとして嫌う人があると思います。

ハーンは、アイヴズのスコアをよく研究していて、引用の効果、グロテスク、狂乱、美がうまくミックスされていて、これは彼女のアルバムの中では、久々の名演だと思います。ただし、このアルバムにおいてハーンのバイオリンの音色は美しくないです。

ハーン盤のジャケットをみると、若草物語の姉妹を思わせるカットがあります(プロモーションビデオで着ている衣装が古くさい)。
http://youtu.be/TzvC424Z_P4
ハーンの演奏は、そのアメリカ臭さも魅力だと思います。

南北戦争前のアメリカ北部の時空(Piano Sonata No. 2 の題名にもなっている "Concord, Mass., 1840-60")が、アイヴズの音楽の思想のもとなのでしょうね。それは単なるノスタルジーではなく、思想だと思います。

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