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2011年3月12日 (土)

ベンジャミン・ブリテン作曲「戦争レクイエム」(1)

War_requiem_1

ブリテン:戦争レクイエム
ベンジャミン・ブリテン指揮
ロンドン交響楽団
録音:1963 年
演奏時間:81' 25

War_requiem_2

ブリテン:戦争レクイエム
Arthur Bliss: Morning Heros
サイモン・ラトル指揮
バーミンガム市交響楽団
録音:1983 年
演奏時間:84' 25

War_requiem_3

ブリテン:戦争レクイエム
ペンデレツキ:広島の犠牲者に捧げる哀歌
ベルク:ヴァイオリン協奏曲
ヘルベルト・ケーゲル指揮
ドレスデン・フィル
録音:1989 年
演奏時間:89' 55

War_requiem_5

ブリテン:戦争レクイエム
Arthur Bliss: Morning Heros
ロビン・エンゲレン(室内オケ指揮)
ヘルムート・リリング(総指揮、合唱指揮)
シュトゥットガルト祝祭アンサンブル
録音:2007 年
演奏時間:82' 40

War_requiem_4

ブリテン:戦争レクイエム
小澤征爾指揮
サイトウ・キネン・オーケストラ
録音:2009 年
演奏時間:78' 50

私にとって、ペンデレツキの「ポーランド・レクイエム」は衝撃的な作品であったが、ブリテンの「戦争レクイエム」は、さらにショッキングな内容であった。なぜなら、ブリテンの「戦争レクイエム」は、死者のための作品であると同時に「黙示録」の様相があるからである。

Now men will go content with what we spoiled.
「いま、人間は、自らが滅ぼしたものに満足するだろう、
Or, discontent, boil boldly, and be spilled.
「さもなくば、満足せずに、血まみれの怒りで、人間は滅び去るだろう。
(『奇妙な会合』より)

Quando coeli movendi sunt et terra,
天と地が揺れ動き、
Dum veneris judicare saeculum per ignem.
主が炎をもってこの世を裁く日
(『リベラ・メ』より)

Dies irae, dies illa
怒りの日、その日
Solvet saeculum in favilla
この世は灰となってしまうだろう
(『ディエス・イレ』より)

ウィルフレッド・オーウェン(Wilfred Owen)の詩は、レクイエムのテキストが本来持つ「最後の審判」「終末」というキリスト教の終末思想を、補完している。

Nor my titanic tears, the sea, be dried.
無量の涙は、海となり、乾くことはない
(『終末(東方から、稲妻が、トランペットの爆音を轟かせ)』より)

ブリテンは、この作品において、宗教音楽を恣意的に擬古的に付曲し、作品にパロディの要素を、盛り込んでいる。そして、そのパロディが「戦争レクイエム」の魅力でもある。たとえば、奉献唱(Offertorium)のボーイソプラノは、古いキリスト教音楽を思わせるし、サンクトゥスは、東方キリスト教音楽、グバイドゥーリナに似た打楽器に始まる。サンクトゥスにおけるヴィシネフスカヤの歌唱は誇張された歌唱であり、アナクロニズムに聞こえるが、それが効果的である。

そして、奉献唱にて歌われるオーウェンの詩『アブラハムとイサクの寓話』は聖書のパロディである。

この作品のクライマックスは『リベラ・メ』とそれに続くオーウェンの『奇妙な会合』である。このクライマックスを聴くとき、私は深い感銘を受ける。そして、上記の演奏の中では、ブリテン自身の指揮による演奏よりも、むしろ、ヘルムート・リリング盤に私は強い感動を覚えた。リリング盤は、ラテン語のテキストの部分と、オーウェンのテキストの部分を二人の指揮者が分担したのが有効だと思う。

>ロビン・エンゲレン(室内オケ指揮)
>ヘルムート・リリング(総指揮、合唱指揮)

リリングという指揮者は、バッハを演奏する時も、古楽器にこだわることなくモダン楽器で演奏するし、派手な演奏はしない。ヘルムート・リリングの「戦争レクイエム」は、CD 1 の「奉献唱」までは冴えない。ところが、リリング指揮の『リベラ・メ』は強い震撼を私に味わわせ『奇妙な会合』は衝撃と絶望を私に与える。

われわれは、この作品から、終末的絶望感を聴き取る。

われわれは、戦争においても災害においても、それらの地獄の中で冷静さを失う。われわれは、災害に遭った時「パニック、混沌に対し、冷静であることが大事である」と言われるが、それは無理である。

戦争においても災害においても、われわれは感情をコントロールすることはできない・・・むしろ、われわれは、悲しみ、嘆き、怒り、そして、感情を爆発させることによってのみ、行動し思考することができる。人間は、絶望と希望に翻弄される。しかし、人間の本能と生命感は、人間を後ずさりさせない。人間は、生きている限り、後ずさりできない。

「しかし私たちは止めよう! この行進を! 後ずさりする世界の行進を!」
(『奇妙な会合』より)

ベンジャミン・ブリテン作曲「戦争レクイエム」歌詞対訳

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