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2011年1月29日 (土)

ジャチント・シェルシの『やぎ座のうた』新盤

Scelsi

Giacinto Scelsi
Canti del Capricorno
Michiko Hirayama
Recorded: 2006

私は、カール・ベーム指揮のベートーヴェンおよびモーツァルト交響曲全集のアナログ盤(LPレコード)を火事で失ったわけだが、ベームのモーツァルトとベートーヴェンはコンパクトディスクで聴いても、彼の本当のうまさは聴けない。専門家(つまり、プロのレコーディング・エンジニア)に「なぜ、昔のアナログの音は、コンパクトディスクでは再現不可能なのか」を尋ねてみたことがある。その人いわく「オープンリールのアナログテープに録音されたアナログ音と、コンパクトディスクに複製されるデジタル音は、まったく異なる性質を持つ。よってアナログのオープンリールテープに記録されたアナログ音は、音を変えなければ、コンパクトディスク用のデジタル信号に成ることはできない。その変換の際に、音が変わる」という主旨のことを言っていた。

平山美智子の『やぎ座のうた』も、とうとうデジタル録音されるためにレコーディング・エンジニアによってスタジオのハードディスクに記録され(旧盤はプライベート・レコーディングだった)、コンパクトディスクという媒体に複製され、世に流通してしまった。しかし、それで良かったと思う。平山の歌唱は、デジタル録音の良い音で聴くと、アナログ録音の旧盤とは違う印象を受ける。旧盤は表現がきつく冷たく正直言って聴くのがつらかった。新盤は、音が良くなったことで平山の声が美しく豊かに聞こえるような気がする。そしてその表現は、より広く、より深いと思うし、齢80代にして彼女の歌唱力はまったく衰えていないと思う。

私は『やぎ座のうた』の前の記事で、平山の歌唱はヴィブラートやメリスマの原点であるとか、その他諸々の的外れなことを書いてしまった。

この人の歌は、21世紀から、100年後の22世紀にかけて聞き継がれていく音楽だと思う。そして、アナログから、デジタルへ、デジタルから、さらに未来の音楽のあり方を示唆していると思う(変な話が、彼女の歌はテープの逆回しのように聞こえることがある)。

どんなに技術が進歩しても、楽器も電子音も、どんなにすぐれた技術で加工された音も、人間の声の発声以上に革新的なものはないし、人間の声に戻ってしまう(人間の声は録音技術に依存しない)。平山美智子の『やぎ座のうた』を聴くと私はそう思う。私も、このコンパクトディスク『やぎ座のうた』を持ち歩くことにしよう。

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コメント

平山美智子は私の大叔母にあたります。
彼女の音楽をきちんと聴いてくださる方がいて嬉しいです。

今年、東京でコンサートをするようですので、
是非生でお聴きいただけるとよいかと。

TOMO さん、コメントありがとうございました。

私は福岡在住なので、平山氏の東京公演は聴きに行けません。しかし、この公演は、日本において、また世界において、意義が大きい。かつ重大なイヴェントになるでしょう。

私はまだ、シェルシの音楽は『やぎ座のうた』しか知りません。
それでも、この『やぎ座のうた』に私は、
大宇宙を感じることができるような気がします。

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