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2009年9月26日 (土)

ズイル・ベイリー&ディナースタインのベートーヴェン


Bailey


COMPLETE WORKS FOR PIANO AND CELLO
ZUILL BAILEY
SIMONE DINNERSTEIN
Recorded 2005, 2006
TELARC

DISC 1
Sonata No. 1 in F major, Op. 5 No. 1
Sonata No. 2 in G minor, Op. 5 No. 2
Sonata No. 3 in A major, Op. 69

DISC 2
12 Variations in G major on "See the conqu'ring hero comes" from Handel's Judas Maccabaeus, WoO 45
12 Variations in F major on "Ein Mädchen oder Weibchen" from Mozart's The Magic Flute, Op. 66
7 Variations in Eb major on "Bei Männern, welche Liebe fühlen" from Mozart's The Magic Flute, Op. 46
Sonata No. 4 in C major, Op. 102 No. 1
Sonata No. 5 in D major, Op. 102 No. 2


私は、ベートーヴェンの「チェロ・ソナタ全曲集」は、第5番第3楽章のフガートにしか興味ない。


第3楽章 アレグロ - アレグロ・フガート ニ長調 4分の3拍子。この楽章は、前第2楽章から休みなしにすぐに始まる。
 この楽章は、チェロ、ついでピアノで音階的に奏されるフーガ主題の断片で始まる。そして、それから初めて、フーガの主題(譜例6)が完全にチェロで示され、それをピアノの低音部が受け、こうして、4声部のフーガが繰り広げられてゆく。

Beethoven_1022_3_1
(譜例6、midi

そこでは、主題の回転も拡大もあり、力度も巧妙に変えながら、しだいに緊張感を高めてゆく。ff のクライマックスに達すると、チェロの保続音の上で、ピアノは崩れ落ちるようなアルペッジョで pp へとディミヌエンドし、フェルマータのある嬰ヘ音に落ちつく。すると今度はチェロが新しい第2の主題(譜例7)をだし、ピアノがこれに応える。

Beethoven_1022_3_2
(譜例7、midi

まもなく、これには譜例6の主題が加わり、壮大な2重フガートが展開される。しかし、このフガートはクレッシェンドして ff に達すると、ピアノの低音にトリルの長い保続音が現れて、この終楽章の結尾に接続する。結尾では、トリルの間断ない保続音上で、第1主題の音階風の動機がストレットで何回となく繰り返され、力度もそれにつれて波のように起伏し、全曲のクライマックスがきずかれる。そして、最後になると、2つの楽器は2拍子のようなリズムで大波のように動いて、歯切れよい力強い終止和音に達し、ここで全曲を結ぶ。(門馬直美)ベートーヴェン (作曲家別名曲解説ライブラリー)より

長い引用になったが、上記、門馬直美先生の解説どおりに演奏すれば、この第3楽章はうまくいくはずであるが、ロストロポーヴィチ&リヒテル(1961 - 63年録音)マイスキー&アルゲリッチ(1990, 92年)ジャクリーヌ・デュ・プレ EMI完全録音集(17枚組)に入っているデュ・プレ&コヴァセヴィチ(1965年)、デュ・プレ&バレンボイム(1970年ライヴ録音)のいずれも良くない。

カザルス&ゼルキン(1951 - 53年録音)のみが良い。

このズイル・ベイリー&ディナースタインの第5番第3楽章のフガートも、「程良い力加減」で、うまくまとめられていて、きれいなのだが、良くない。

なぜ、カザルス&ゼルキンの演奏だけが良いのか。

カザルスの、フラジオレット風の演奏は、なんだか、気合いが入っている。ゼルキンの「ピアノの低音にトリルの長い保続音」が「波のように起伏」に達するのが、効果的だと思う。

「波、大波(Woge)」はワーグナーが好んで使う言葉だが、このフーガもまたある種の大波であって(小さな波ではない)最後のトリルは、バッハのオルガン曲のフーガのクライマックスに聴かれるトリルのようであり、それは、おどろおどろしく気味悪いほど効果的であると思う。そのトリルが印象的なのは、カザルス&ゼルキンのみ。このフーガは、バッハのフーガ的巨匠性が求められると思う(抽象的で悪いが)。

音楽とは全然関係ないことだが、この CD の表表紙は味気ないが、中にズイル・ベイリー&ディナースタインのツーショット写真(下記)があって、ディナースタインの麗しい御姿が拝める。

ズイル・ベイリー&ディナースタインのベートーヴェン全曲集は、ディナースタインの麗しい御姿が拝めるし安いので買って損はしないと思う。演奏はマイスキー&アルゲリッチの乱暴な演奏とは違い「力加減」が程良い。

Bailey_1

Bailey_2

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