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2009年8月 5日 (水)

煮ても焼いても食えない作品(テューレックのゴルトベルク)


Tureck


Bach
DISC 1
Goldberg Variations, BWV 988
DISC 2
Goldberg Variations, BWV 988 (cont. )
Aria and Ten Variations in the Italian Style BWV 989
Applicato in C Major, BWV 994
Chorale - Joy & Peace, BWV 512
Musette in D Major, BWV Anh. 126
Minuet in G Major, BWV Anh. 116
Minuet in G Major, BWV Anh. 115
March in D Major, BWV Anh. 122
March in E - flat Major, BWV Anh. 127
Polonaise in F Major, BWV Anh. 127
Invention in C Major, BWV 772a (1723 Version)
Invention in C Major, BWV 772 (1723 Version)
Fantasia in G Minor, BWV 917
Prelude & Fugue in A minor, BWV 895
Suite in F Minor, BWV 823
Italian Concerto in F Major, BWV 971
Rosalyn Tureck, harpsichord (CD 1, CD 2 tracks 1 - 17) / piano CD 2 track 18 - 36)
Recorded March 15, 16, 17, 23, 24 & 27, 1978 (CD 1, CD 2 tracks 1 - 17)
January 9th - 11th 1979 & April 13th - 16th 1981 (CD 2, tracks 18 - 36)
New York City
Performed on harpsichord by William Dowd, Boston
SONY

煮ても焼いても食えないゴルトベルク変奏曲が、食えた。

そもそも、私が、ゴルトベルク変奏曲を「煮ても焼いても食えない作品」とする理由は、ゴルトベルクを聴くとき途中で必ず退屈するからだ。必ず、全曲聞き終わるまえに疲労を感じ苦痛を感じる。緊張が切れる。途中で、用を足すか、煙草を吸うために(室内禁煙なので)部屋を出たくなる。音楽を中断したくなる。ところが、テューレックのゴルトベルクは、そうならない。汚い話だが、私は、テューレックのゴルトベルクを初めて聴いた時、DISC 1 を聴いている途中で、用を足したくなった。が、結局、最後まで、もれそうなのを我慢して聴いてしまった。エキサイトして、おしっこどころではなかった。

私の考えでは、バッハのゴルトベルク変奏曲は、32小節のテーマをもとに、32小節の変奏を30変奏もやるということに無理があると思う。その制約はバッハのスタイルにあわないと思うし、バッハを殺していると思う。ゴルトベルク変奏曲のいいたいことは、第30変奏のクオドリベトだと思う。しかし、私は第9変奏(3度のカノン)を聴くと「これはクオドリベトと同じ音楽じゃないか」と思ってしまう(勿論両者は全然違う音楽である)。その瞬間「ここで(ゴルトベルクは)終わっている。あとはもういらない」と思ってしまって、退屈する。

32小節のテーマをもとに、32小節の変奏を30変奏もやるということ。それはバッハを殺していると思うが、テューレックのゴルトベルク変奏曲の演奏では、音楽が死ぬ瞬間に、卵がかえり、ひよこが生まれる。第9変奏(3度のカノン)のあと、かすかな間(ま)が入る。その間(ま)に卵がかえる。第10変奏は、生まれたばかりのひよこである。そのような瞬間が随所にある。そういうトリックが、他の箇所にも聴ける(どこがそうであるかは、あえて書かない。ネタを明かさないためである)。彼女のゴルトベルクは、必ず退屈になりそうな音楽のあとに卵がかえる。そして、ひよこが、ぴよぴよ鳴きだす。かと思えば、鶏がまた卵を産む。それをゆで卵にして食べてるうちにまた、鶏がまた卵を産む。その卵がかえり、またひよこがぴよぴよ鳴きだす。

私には、あたかも、テューレック自身が、むしろ「ゴルトベルクは退屈な作品だ」と言っているかのように思える。そして、それを彼女が回避しているかのように聞こえる。

テューレックのゴルトベルクは、卵と鶏が同時に食べられる親子丼だ。そしてテューレックのゴルトベルクのトリックは《見える》。したがってそれは、実はトリックではない。それは、ある種のごまかしである。しかし、ごまかしであろうと、親子丼であろうと、彼女のゴルトベルクは《食える》。私は、つい最近まで、グールドの1955年盤の良さがわからなかった。しかし、いまはわかった。退屈させないゴルトベルクの弾き方は、グールドの1955年盤と上記テューレックのゴルトベルクしかないと思う。だから、もうこの曲は2度と買わないと思う。ちなみに私が購入したゴルトベルクは下記のとおり。

ゴルトベルク変奏曲(1955年),グールド (piano)
ゴルトベルク変奏曲(1961年),ヴァルヒャ (cembalo)
ゴルトベルク変奏曲(1976年),レオンハルト (cembalo)
ゴルトベルク変奏曲(1978年),Rosalyn Tureck (cembalo)
ゴルトベルク変奏曲(1981年),グールド (piano)
ゴルトベルク変奏曲(1988年),Huguette Dreyfus (cembalo)
ゴルトベルク変奏曲(1989年),Keith Jarrett (cembalo)
ゴルトベルク変奏曲(1989年),Lars Ulrik Mortensen (cembalo)
ゴルトベルク変奏曲(1991年),Vladimir Feltsman (piano)
ゴルトベルク変奏曲(1992年),Pierre Hantai (cembalo)
ゴルトベルク変奏曲(1998年),曽根麻矢子 (cembalo)
ゴルトベルク変奏曲(1999年),Angela Hewitt (piano)
ゴルトベルク変奏曲(1999年),Evgeni Koroliov (piano)
ゴルトベルク変奏曲(2003年),Pierre Hantai (cembalo)
ゴルトベルク変奏曲(2003年),Martin Stadtfeld (piano)
ゴルトベルク変奏曲(2004年),イサカーゼ Irma Issakadze
ゴルトベルク変奏曲(2005年),Richard Egarr (cembalo)
ゴルトベルク変奏曲(2005年),Simone Dinnerstein (piano)
ゴルトベルク変奏曲(2007年),藤原由紀乃 (piano)

テューレックのゴルトベルクを教えてくれた猫大好きさんに感謝します。どうもありがとうございました。

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コメント

うわー。テューレックのチェンバロゴルトベルク買ったんですね。

>退屈させないゴルトベルクの弾き方は、グールドの1955年盤と上記テューレックのゴルトベルクしかないと思う。だから、もうこの曲は2度と買わないと思う。

この気持ちはわかります。しかしこの前のコメントの後で恐ろしいゴルトベルクを知ってしまいました。ニコラーエワです。

http://www.amazon.com/Bach-Goldberg-Variations-Johann-Sebastian/dp/B000002ZR7/ref=sr_1_4?ie=UTF8&s=music&qid=1249484122&sr=1-4

海外アマゾンで視聴できますが、ぜひ視聴してみてください。

youtubeでは

http://www.youtube.com/user/tobe7

この人がたくさんアップしてくれますが、聞いてみてください。

ロマン派的なピアノ処理法を駆使した上で全ての変奏の性格が一つ一つはっきりと区別がつく形で弾き分けられています。少なくともあと一つ、これだけは買ってみてもいいのではないでしょうか(なぜかCDのセールスマン)。

ニコラーエワのゴルトベルク( Hyperion)は以前目を付けたことがありますが、平均律が、あまり良くなかったので、買いませんでした(というか彼女の平均律も1度しか聴いてない)。

猫大好きさんのおすすめとあらば、間違いはない。

買います。が、いますぐは無理。

とうとう私の財布も底をついています(^-^;(^-^;

>ニコラーエワのゴルトベルク( Hyperion)は以前目を付けたことがありますが、平均律が、あまり良くなかったので、買いませんでした(というか彼女の平均律も1度しか聴いてない)。

ごもっともです。僕もニコラーエワのバッハは以前から知ってていくつか聞いたけどあまり好きでなかった。ところが、ゴルトベルクを聞いてみたらこれがすごいwはっきりいって「意外」でした。どの変奏もはっきり性格を持って訴えかける演奏で、ほとんどの演奏がそうである「同じ気分のダラダラした繰り返し」では全くなく、それこそ退屈しない演奏です。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/49461

参考までにHMVのリンクはっときますね。これは絶対買って後悔しないはずなので、いつか買ってみてくださいー。

あと僕は基本いらないCDは売る派です。ある店だとHMVのマルチバイ価格の30パーセントで引き取ってくれるので、決して悪くない還元率です。見たところ、KMさんも僕と同じで「良い悪い」の判断をはっきりとするタイプなので、「悪い」CDは高く買い取ってくれるところで処分したらどうでしょうか。すっきりしますよ

確かに「悪いCD」は売ります。

バーンスタインのマーラー全集旧盤は、私のオーディオ装置ではノイジーだったので売りました。

以前は、よく売ってました。

ところが、

ある時期から

ガーディナーのマタイ、ガーディナーのクリスマスオラトリオ、その他、

売ったものを買い戻す(売ったものをまた買う)ことが多くなり、処分することに慎重になりました。

yahooで、売っても二束三文だし。売るの面倒。

>ある店だとHMVのマルチバイ価格の30パーセント

そういう店が、身近にあれば考えます。

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