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2009年8月21日 (金)

シノーポリのマーラー第5番(2)

フィナーレにおける2度目のエピソードが終わる辺りで、下記のような下降旋律が現れる(譜例1、midi)。これは、ブリュンヒルデがヴォータンに眠らされるときの音楽(魔の眠りの音楽、譜例2、midi)に少し似ている。

Mahler_5_5_38
譜例1

Brunhildes_schlaf
譜例2

マーラーの交響曲第5番は、大きな流れとして(楽典的に正確な言い方はできないが)半音階的下降旋律から全音階的上昇旋律へと収束する音楽のように思える。

譜例1は、第1楽章のコーダの前で音楽が瓦解する(なだれ落ちる)ように聞こえる音楽と結びつけても良いのではないかと思う(譜例3、midi)。そしてマーラーは、そういう半音階的下降音形を他でも使っていると思う(第4交響曲)。そしてそれらを、あえてワーグナーのライトモチーフに例を求めれば、ワーグナーの下降音階的音形、旋律(愛の断念の動機、契約またはヴォータンの槍の動機、神々の危急の動機)であり、それらは否定的な意味を持つ。他方、ワーグナーの全音階的跳躍的モチーフ(例えばノートゥングのモチーフ)は肯定的な意味を持つ。その両者はマーラーに存在すると思う(両者の対比が存在すると思う)。したがって、マーラー第5番の全楽章は、悲痛な半音階的下降音形から、歓びに満ちた全音階的ワーグナー的音形への収束・解決という構図でとらえても、大きく間違えているとは言えないと思う。そういうとらえ方は(たとえマーラーの音楽の的外れなとらえ方であったとしても)ワグネリアンである私にとって、とらえやすいし、わかりやすい。すなわち、マーラーの交響曲は第5番以降、複雑化し難解になるので、私は解釈を思い切って簡単化した(というか、この作品は一部ワーグナー的に聞こえるときがある)。

Mahler_5_1_9
譜例3

Minne_maecht_entsagt
愛の断念の動機(midi

Wotans_speer
契約またはヴォータンの槍の動機(midi

Goetter_gefahr
神々の危急の動機(midi

Notung
ノートゥングの動機(midi

私は、シノーポリの指揮するマーラー第5番フィナーレは、テンポが遅いと書いたが、実は、遅くない。シャイーのと比較すれば、シノーポリのフィナーレは、15分10秒であり、シャイーのは15分27秒である。にもかかわらず、シノーポリの方が、遅い演奏に聞こえるのは、彼の指揮が緻密であるからであろう。たとえば、「Rondo - Finale」の最初のエピソードのフーガの演奏について、シノーポリ盤とシャイー盤を聴き比べれば、そこで、両者の勝負がついていると思う(実は最終楽章の第1小節目で勝負がついていると思うのだが、それは言い過ぎか(笑)。

さらに、ダメを押せば、

マーラー第5番フィナーレは、2回ほどクライマックスに行きかけて、なかなか行かない。このフィナーレはクライマックスをお膳立てする最後のエピソードとして、第4交響曲的楽想を回想していると思うのだが(譜例4、midi)、その部分も、シノーポリ盤のほうが、よく聞こえると思う。

シノーポリのマーラー5番は、この作品が持つ緻密さの最も理想的な具現の一つだと思う。(つづく)

Mahler_5_5_39
譜例4

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マーラー:交響曲第5番/シノーポリ&フィルハーモニア管弦楽団

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