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2009年7月23日 (木)

煮ても焼いても食えない作品 コンヴィチュニーのブルックナー8番


Konwitschny


Anton Bruckner
Sinfonie Nr. 8 c-Moll (Originalfassung)
Rundfunk-Sinfonieorchester Berlin
Franz Konwitschny
18, 19, 21/Dezember/1959 Funkhaus Nalepastraße Saal 1 Berlin
WELTBLICK SSS0012-2
MONO

1. Allegro moderato 15' 23
2. Scherzo 13' 57
3. Adagio 27' 11
4. Finale 24' 42

Total 81' 24

ブルックナー8番は、1887年版の方が改訂版よりよい。ブルックナー8番の1887年版と改訂版は、映画のディレクターズカット版と劇場公開版のような関係ではないと思う。改訂版は、たとえば海外ドラマを時間的制約のためカットして放送したもののように思える。1887年版は第1楽章をハ長調で終わらせていること、第3楽章のクライマックスがハ長調(改訂版では変ホ長調)であることは、第4楽章への伏線として効いていると思う。1887年版を聞き慣れてしまうと、改訂版は、ある箇所で唐突に音楽が進んでしまうように聞こえる。ブルックナーが改訂でカットした箇所は、この作品の全体を俯瞰した場合、全曲の統一性を図るために「必要」な箇所だったのではないだろうか。エレガントな改訂版は、第3楽章の耽美性が第3楽章の独立性(全曲の不統一性)を招いているような気もする。ブルックナーは全曲を、よりすっきりとまとめようとして逆に統一性を弱くしたと思う。私は、1887年版のスコアを取り寄せて、スコアを見ながらシモーネ・ヤング盤を聴いてみたが、この作品は意外に全楽章に共通の音形、旋律、音楽的素材を持つように思えた(具体的に指摘できないが)。

上記、フランツ・コンビチュニー指揮ベルリン放送交響楽団盤は、モノラル録音だが、ステレオ録音の下手なリマスタリングより聞きやすいと思う(3日にわたるスタジオ・セッションなので安心して聴ける)。ノイズが少ないし、低音も比較的(まあまあ)よく録れてる。この演奏は、ライプチヒ・ゲヴァントハウスの古色はなく、ベルリン放送交響楽団のスキのない実力が聞けると思う。こういうスキのない演奏を聞くと「改訂版のスキ」も見えなくなるような気がする。カラヤンやヴァントは、独自の美でブル8を振ってブル8を美化したと思う。その美は「いくらでも美しくできる美」であり、マイスター的伝統と現代のハイテク技術により制作された教会オルガンの美に似た美であると思う(ブル8は教会で録音されることが多いし残響など音響効果に凝った録音が多い...)。私は長くブルックナーの8番になじめなかった。やっと、ブル8に目ざめたのは、ヴァントのブルックナーの美に触れたのがきっかけだった。

ブルックナーの8番にはブルックナーの野生性や素朴さがあると思う(スケルツォはドイツの野人であり、第4楽章の第1主題はコサックの進軍である)。第7番の完成後、ブルックナーはすぐに第8番の作曲に取りかかっている。しかし、ブルックナーが、いかにすぐれた作曲家であったとしても、交響曲というジャンルにおいて、たて続けに大作を書くのはきつかっただろうと思う。第7番という大作完成後、ひと休みもできなかったことは、ベートーヴェンが第9番を書くのに10年の余裕を持てたのに比して「余裕のなさ」を感じる。さらに8番完成後すぐに(1887年に)9番に着手しているのは驚異的。ブルックナーはすでに60才を過ぎ、残された時間が少なかったことを自覚していたのか...。第7番が「ワーグナーへの敬意と追憶」というモチベーションを持つのに比べ、第8番は内面的でプラベートなモチベーションとテーマ性を感じさせる。それは彼の「野生性・素朴さ」の直接的現れであり、そしてそれらは彼が生来持っていた性格・パーソナリティかも知れない。あるいは「余裕のない老人の衰え」だったのかも知れない。余裕のない作家が創作の素材とできるものは「最も身近なもの」すなわち「自我」である。

とはいえ、老年ブルックナーの旺盛な創作意欲。第8番を完成させたブルックナーは偉い!

コンヴィチュニーの第8番のストレートなパフォーマンスを聴いて改めてそう思う。

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