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2009年7月 2日 (木)

ヒラリー・ハーンを追っかける(7)ショスタコーヴィチ


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Felix Mendelssohn
Concerto for Violin and Orchestra in E minor, Op. 64
I. Allegro 12' 01
II. Andante 8' 11
III. Allegretto - Allegro 5' 56
Dmitri Shostakovich
Concerto for Violin and Orchestra No. 1 in A minor, Op. 77 *
I. Nocturne 12' 35
II. Scherzo 5' 36
III. Passacaglia 9' 24 - Cadenza 5' 20
IV. Burlesque 4' 36
Hilary Hahn, violin
Oslo Philharmonic Orchestra
Hugh Wolff, Marek Janowski *, conductor
Recorded 2002
SONY

ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲について、渡辺純一さんのショスタコーヴィチ/プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番/チャン/ラトル [EMI]をお読みになってから、私の感想をお読みになることをお進めします。渡辺さんは、サラ・チャン盤について書いてますが、私は、ハーン盤について書きます。

まずメンデルスゾーンのほうだが、これはよくわかないからノーコメント。

英語で書かれたハーン自身のライナーノートに、上の2作品は「どちらも作曲者の脂の乗り切った年齢に書かれた作品であることに共通性がある(だから、両者をカップリングしたと言いたいのだろう)」みたいなことが書いてるが、私はそうは思わない。

結論をいうと、第5作でハーンは初めてこけたと思う。いくら、クールさが持ち味のハーンでも、彼女の弾くショスタコーヴィチの第1楽章は味気ない。この楽章は、息の長いフレーズで始まる。第1楽章は「ノクターン」と題されてはいるが、ショパンのノクターンのような情緒はない。これは本当にノクターンなのだろうか。ヴァイオリンの長いフレーズはハーンので5分4秒も続く(ちなみに、オイストラフのは4分36秒、サラ・チャンのは4分50秒ぐらい)。この息の長いフレーズをもしオーボエで吹いたら、どこで息継ぎしたらいいのだろうと、私は思わせられる。オイストラフのでさえ息詰る演奏に聞こえる。ただ、オイストラフの演奏では最初の息の長い旋律の次の旋律、弱音器をつけた旋律が、前の息の長い旋律とのコントラスト(?)において前者を生かしているようにきこえるが、ハーンの演奏にはそれがない(私は、最初、ハーンは弱音器をつけずに演奏しているのではないかと思った)。

これを言ったらおしまいだが、ショスタコ1番は(作曲者がオイストラフが演奏することを前提にして書いた作品であるという意味で、もっといえばオイストラフのためだけに書いた作品であるという意味で)ショスタコーヴィチとオイストラフの共同作品ではないかと思う。オイストラフ&ムラヴィンスキー(1956年)を超える演奏は出ないとあきらめた方がいいと思う。

ハーンは、ライナーノートの中で、ショスタコーヴィチのこの Vn 協奏曲のことや、作曲者の事情を良く知っているような文章を書いている。しかしどういうわけか(つまり作曲者を知ってるはずなのに)ショスタコの D - Es - C - H 音型【注】や、その他ショスタコーヴィチに特有な旋律をあまり重要視していないように聞こえる。それらを軽く扱っているように思える。それは彼女のショスタコ解釈の欠点だと思う。なぜなら、この作品は、ユダヤ音楽の影響(と、池辺晋一郎さんが N 響アワーで言っていた)民族性があり、また前後するが、それらの旋律を作曲者の伝記的側面や作品成立史また当然のことながら作曲者へのシンパシー、作曲家への深い理解をもってフレージングしないと、(作品が)死ぬんじゃないかと思うのだが、私の主観ではハーンの演奏にはそれらが薄い。ハーンの演奏はショスタコーヴィチへの思い入れのなさを感じさせる。取り扱い方が雑というかクールというか、重要フレーズを特別視してないように聞こえる(特別視しなくてもいいが、クールなだけでは良くない気がする)。繰り返すが、ハーンはライナーノートにちゃんと作曲者への研究をうかがわせる記述をしているのに ...。

高い技巧による迫力ある演奏だが、私は、ハーンのショスタコーヴィチに満足できないし、この作品の新しい代表的録音だとは思わない。

あと指揮者が悪いのかも...。

【注】言わずもがなですが、Dmitri Shostakovich のイニシャル。ドイツ語風にすると、D - S - C - H。

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