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2009年6月15日 (月)

パメラ・フランクのベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集


Beethoven_frank_2


Beethoven
The 10 Sonatas for Violin and Piano
Pamela Frank, Violin
Claude Frank, Piano
CD 1
Sonata No. 9 Op. 47 ("Kreutzer")
Sonata No. 1 Op. 12, No. 1
Recorded January, August 1992 New York
CD 2
Sonata No. 6 Op. 30, No. 1
Sonata No. 7 Op. 30, No. 2
Sonata No. 8 Op. 30, No. 3
Recorded August 1992, June 1995 New York
CD 3
Sonata No. 2 Op. 12, No. 2
Sonata No. 3 Op. 12, No. 3
Sonata No. 4 Op. 23
Recorded December 1995 New York
CD 4
Sonata No. 10 Op. 96
Sonata No. 5 Op. 44 ("Spring")
Recorded December 1995 New York
2004 Music & Arts USA

この父娘は、CD 1 の《クロイツェル》を最初に録音したのだと思うが、そのテンションが他の作品に保たれていると思う。《クロイツェル》では、クロード・フランクのピアノが良い。その他の曲も「ヴァイオリン伴奏付きソナタ」のようなスタイルのもの(Nos. 1 - 3)は良い演奏だと思う。《春》も良い。Nos. 6 - 8 も悪くない(ということはほとんどの曲は良い)。ただ、第10番作品96は《クロイツェル》ほどは良くない。すなわち、作品96はパメラ・フランクの力不足が感じられる(作品96は、ベートーヴェンの Vn ソナタの中で私が一番好きな曲なのに、良い演奏になかなかお目にかかれない。いま思い浮かぶ良い演奏は私の記憶でオイストラフのみ)。

パメラ・フランクとクロード・フランクのベートーヴェン:Vn ソナタ全集の良さは、ありきたりな表現で言えば「奇をてらわない演奏であること」だと思う。ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集(1971)を録音した実績を持つクロードはさすがに巧い。そして、この演奏の良いところは第一に父クロード娘パメラの息が合っていること。「息が合う」という言い方もありきたりだが、それは本当に聴いていて非常に心地よいほど息が合っている。もし「この二人が父娘であることを知らない人」がこの録音を聴いたと仮定した場合、二人が親子であることを見破るんじゃないかと思わせるほどだ。

ベートーヴェンの音楽は、楽譜のとおりに演奏すること自体難しいが、楽譜に書いてないことを演奏することを要求されることを、私は最近ベートーヴェンのピアノ・ソナタを弾いてみて気づいた。クロードの演奏は、まさにそのことを感じさせてくれる「ベートーヴェン弾き」の技だ思う。だがこの全集において、パメラの技巧と表現力の不足をクロードが補ったにしても、それは当然限界がある。しかし、アルゲリッチとクレーメルでさえ、良い演奏をできなかったし ... ムターのはゲテモノ ... シェリング&ヘブラーの名コンビでも面白くない ... それらのベートーヴェン:Vn ソナタ全集を私はあまり聴きたいと思わないのに対し、パメラのは「繰り返し聞きたくなる」「随所に巧いと思わせる」瞬間が存在することは、完成度の不足を何かが補っていると思う。この演奏の特徴は、しつこいがありきたりに言って(異論もあると思うが)自然体だ。すなわち、

Amazon.co.jp におけるムターの「ベートーヴェン:Vn ソナタ全集」のでかだんさんのレヴューを私は大変気に入っているが、パメラ&クロード・フランクのベートーヴェンはムターの正反対の演奏だと考えて間違いないと私は思っている【注】。でかだんさんには悪いが、非常に良いレヴューなので全文引用させてもらいます。m(._.)mお許しを…


たしかに今日、ベートーヴェンを演奏するのは難しいことである。ここに並んでいる10曲のソナタのどれもが、これまで数え切れないほどの演奏家によって録音され、聴かれてきた。現代の演奏家は、そうした耳ダコの旋律の退屈さから、何とかして逃れようとする。ムター氏のテンポは激しく加速と減速を繰り返し、また、誰も予想だにしなかったところでアクセントをつけてみせる。たしかにそんな演奏は今までなかった。しかしただひたすらビザールな斬新さに逃避した演奏の後に残るのは、漠としたむなしさである。それは何故なのか。多くの演奏家たちに、このCDを聴いて考えてもらいたい。

【注】パメラ・フランクにも癖や個性がないわけではない。あとは好みの問題 ... というか、この父娘の演奏は、父クロードの好サポートがなければ成り立たなかっただろう。


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