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2009年2月28日 (土)

ディナースタインのベルリン・コンサート


Dinnerstein


Simone Dinnerstein
The Berlin Concert
Johann Sebastian Bach
French Suite No. 5 in G major, BWV 816 [18' 30]
Philip Lasser (b. 1963)
Twelve Variations on a Chorale by J. S. Bach [22' 21]
Ludwig van Beethoven
Piano Sonata No. 32 in C minor, Op. 111 [28' 08]
Encore:
Johann Sebastian Bach
Goldberg Variations, BWV 988
Variation 13 [5' 24]
Recorded live at the Berlin Philharmonie,
November 22, 2007

結論からいうと、ベートーヴェンが一番良い。

フランス組曲第5番は、クーラントの右手と左手のおかっけっこが良いが、サラバンドはピリス Maria Joao Pires と同じ過ちをおかしていると思う。すなわちサラバンドのリズム感がない。ブーレーのリズムも悪い。ジーグの3声のフガートでなんとか持ち直している。

私の持論は、フランス組曲は左手が右手と対等でなければならないということ。理由は以下。

いうまでもなく、フランス組曲はもともと、チェンバロのために書かれた作品なのである。チェンバロはモダン・ピアノより音の減衰が速く、音量も小さく、また鍵盤も軽い。したがって、バッハは、クラヴィーア曲に多くの音符を書き込んだ。装飾音も多いし。

そして、チェンバロは通奏低音のために利用されることが多かった。しかし、バッハは「ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ BWV 1014 - 1019」において、そうしたように、チェンバロパートを、和音のみを表す数字で書かず、声を与えた。しかも右手と左手それぞれ一つの声を与えた。

私は、フランス組曲も、上記と同じ理屈で書かれていると思う。左手は右手の伴奏にとどまっていないと思う。左手は声を持ち、そして、さらにいえば、右手と違う人が弾いてるように聞こえてもよいと思う。上記「ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ BWV 1014 - 1019」では、Vn パートとチェンバロ・パート2声の合計3声3人だとすれば、フランス組曲は、2声2人というふうに...。そして、モダン・ピアノによるフランス組曲の演奏で、上記観点において成功しているのは、私が知るかぎり2人しかいない。グールドとコロリオフ Evgeni Koroliov だ。ヒューイットは失敗していると思う。ディナースタインも失敗しているといっていいだろう。

2曲目のPhilip Lasser (1963年生まれ) Twelve Variations on a Chorale by J. S. Bach は、現代作品にもかかわらず、19世紀のロマン派みたいな曲で全然面白くないので感想無し。

3曲目のベートーヴェン、最後のピアノ・ソナタ作品111

私は最初、ディナースタインには、この難しい曲の演奏は技巧的に無理だと思っていた。しかし、その先入観は吹き飛ばされた。ゴルトベルクの難しいフレーズを見事に弾きこなした彼女は、ベートーヴェンのハ短調作品111の演奏を、これまた見事に弾きこなしている。

第1楽章ので出しからしてユニーク。序奏の第11小節(ディナースタインの演奏で track21 の 1' 17 あたり)のスタッカートとスタッカティッシモがついた4つの和音(クレッセンドでピアニッシモからフォルテになるところ)の強調の仕方がユニークで強いインパクトを私に与えた。それだけで、この演奏に吸い込まれてしまった。第2主題への入りは美しい。フーガもうまい。「女性ピアニストで、これだけ豪快に弾いた人は他にいるだろうか」と思わせる。(いまどき女性ピアニストと男性ピアニストを区別するのは時代遅れだが)男性ピアニストでも、こんな豪快な演奏はあまり聴いたことがない(たとえばポゴレリチのは印象薄いなあ)。そして、このライヴ録音は音がいいので、スタインウェイならではの抜群の音響効果が最大限聴けるといって、よいだろう。

そして、第2楽章

変奏曲の最後の最後まで、クライマックスをお預けにするような演出は、私の嗜好に合う。演奏後、しばらくしてから拍手が起きる。聴衆の受けたインパクトが容易に想像できる。

ディナースタインは、変奏曲と相性が良いということか。

彼女は、バッハの組曲系では失敗し、ベートーヴェンの変奏曲付きピアノ・ソナタで成功していると思う。このアルバムを聴くと、もともと、彼女がゴルトベルク変奏曲で成功した人であることをリスナーは再確認すると思う。

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