私の苦手な曲 バッハ:無伴奏チェロ組曲

J.S.バッハ
無伴奏チェロ組曲
ダニエル・ミュラー=ショット Daniel Müller-Schott
2000年録音
GLISSANDO
CD 1
Suite Nr. 1 G-dur BWV 1007 [17'14]
Suite Nr. 3 C-dur BWV 1009 [21'10]
Suite Nr. 5 c-moll BWV 1011 [23'24]
CD 2
Suite Nr. 2 d-moll BWV 1008 [19'49]
Suite Nr. 4 Es-dur BWV 1010 [21'52]
Suite Nr. 6 D-dur BWV 1012 [29'26]
ヒラリー・ハーンを追っかける(2)で書いたように、私はバッハの「無伴奏ヴァイオリン」と「無伴奏チェロ組曲」が苦手である。もう一度繰り返して書くが、ヴァイオリニストやチェリストが、ひとりで延々と自分の世界に浸っているような音楽を聴いて、何が面白いのだろうか...と、バッハの「無伴奏ヴァイオリン」と「無伴奏チェロ」を聴いて私は時々そう思うことがある。それらは、ただの、演奏者の腕前のひけらかしのように聞こえる。実際「無伴奏ヴァイオリン」と「無伴奏チェロ組曲」は、バッハが自らの腕前をひけらかすために書いたものではなかろうか...。しかし、そういう考えに捕らわれて、このふたつの作品の真の良さを知らずに終わるのは良くないと思い、私は、いろいろな演奏家の演奏を購入して聴き比べ、その良さを知ろうとした。
「無伴奏チェロ組曲」については以下のCDを購入した。
カザルス 1936 - 39年録音
フルニエ 60年
シュタルケル 63, 65年
藤原真理 82年
トルトゥリエ 82年
マイスキー 84, 85年
マイスキー 99年
ヨーヨー・マ 94 - 97年
上記の中では、トルトゥリエの演奏が聴きやすく気に入った。しかし、そのトルトゥリエの無伴奏も、取り立てて魅力的な演奏には思えなかったので、繰り返して聞くことはなかった。
もうこうなりゃ意地だと思って、ダニエル・ミュラー=ショット Daniel Müller-Schott の「無伴奏チェロ」を購入してみたところ、ついにこれが、当たった。ダニエル・ミュラー=ショットというチェリストは、アンジェラ・ヒューイット Angela Hewitt と組んだ「バッハ:チェロ・ソナタ集 BWV 1027-1029」が気に入っていたので、彼の「無伴奏チェロ」が私の好みに合うであろうことは予想できた。はたして、ショットの「無伴奏チェロ」は私にとって、初めて、全曲を退屈しないで聞ける演奏だった。彼の演奏は、特に力のこもった演奏ではない。むしろ、軽い演奏であり(いい意味で)癒し系であろう。思うに、バッハの「無伴奏チェロ」という作品は、カザルスの力演が有名になりすぎて、演奏者たちは、カザルスの演奏を模範とし、また、それを乗り越えようと、力を入れすぎているのではないだろうか。そして、そのようなスタンスはリスナーにもあると思う。
ミュラー=ショットの「無伴奏チェロ組曲」は、その明晰な演奏が私にとって魅力である。その演奏が秀演なのかどうかわからない。ただ、私は、ショットの「無伴奏」の6つの演奏を通して聴いても胃もたれしない。彼の技巧は安定している。彼の解釈、演奏に、おそらく「深遠」という形容は当てはまらないと思う。しかし、彼の無伴奏チェロの「重苦しさの無さ」が私には心地よい。ディナースタインのゴルトベルクと同じ理由で私の愛聴盤になりそうだ。すなわちその理由とは「心地よさ」だ。次は「無伴奏ヴァイオリン」の心地よい演奏を発見したいと思う。
なお、ミュラー=ショットはユリア・フィッシャーとのブラームスでも良い演奏を聴かせていると思う。私がミュラー=ショットを初めて聴き、記憶にとどめたのは、上記フィッシャーとの共演である。
【HMVへのリンク】
Johann Sebastian Bach
Cello Suites.1-6
Muller Schott(Vc)
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コメント
『バッハの音楽』って、一度や二度くらい聞いただけでは、なかなか良さがわからない作品が多いと思います。
無伴奏や平均率などは、その代表的な作品ではないでしょうか。
だけど、何度も何度も、繰り返し『聴く』につれて、その良さがわかってくるんですよ。
と云うか、徐々に良さがわかってくる作品の方が、実は奥が深くてより魅力的だということに気づくんです。
ベートーヴェンのピアノソナタや弦楽四重奏曲などにも、それがいえるんじゃないかと思いますね。
あ・・・、云い忘れるところでしたが、こういった作品は、極力、素晴らしい演奏で『聴く』ことが重要ですね。
投稿: 西方の音 | 2008年6月23日 (月) 13時53分
やや同感。
カザルスの呪縛というのがあって、親父の説教的重苦しさから逃れた演奏が望ましいと思います。
もともとが舞曲の集まりだから、もっと軽快に踊るような演奏が望ましい・・・最近の古楽器系の演奏にその方向のものがあります。ま、神髄が見えれば旧来の謹厳実直なものも愉しめるようになるかも。
最近、藤原真理さんの真面目な演奏も素敵だ、と感じられるようになりました。有名どころではフルニエのライヴか。
投稿: 林 侘助。 | 2008年7月 7日 (月) 15時43分
ここなら書けることがあります。(笑)
さすがに、主要な名手は網羅してますね。あとは、ロストロさんくらいかな。面白くないから買う必要はありませんが。
私の愛聴盤はモーリス・ジャンドロン。トルトゥリエの後任で、パリ音楽院の享受になっています。同じくフランス系のチェリストですので、お好みからはずれないとは思いますが、眉間にしわを作って弾くタイプの演奏ではありません。私には、軽快で歌っているような演奏に聴こえます。フィリップスから、2枚組の廉価版が出ています。
無伴奏チェロ組曲には、音の並びの美しい曲がたくさんあり、いくつかは、クラシックギターでも演奏されます。
同様に無伴奏Vnのためのソナタとパルティータにも、美しいものが・・・。
これらの曲は、ソリストと対話するようなスタンスをとらないと、続けて聞くのはつらいですね。
ちなみに、無伴奏Vnは、グリュミオーが好きです。これもフィリップスの廉価版に。
フィリップスの録音は、L-560に通じる豊潤さ、艶やかさがあり、弦楽器に向いていると思います。
投稿: たっちん | 2009年2月25日 (水) 23時13分
書き忘れました。
ダニエル・ミュラー=ショット、面白そうですね。聴いてみたくなりました。
※上のコメントで「享受」は「教授」です。とんでもない変換のまま、スミマセン。
投稿: たっちん | 2009年2月25日 (水) 23時18分
コメント、ありがとうございました。
ジャンドロンの綴りを調べるために、グーグルで検索したら、「バッハ 無伴奏チェロ組曲(全曲) モーリス・ジャンドロン 校訂 (楽譜)」が出てきました。学者サンなのですね。
ジャンドロンの無伴奏 HMVで廉価盤見つけました。多分購入すると思います。
Grumiauxの無伴奏も買うと思います。
私は、ベートーヴェンの大ファンでして、ベートーヴェンといえば、ピアノソナタ。したがって、ピアノという楽器が好きでして、バッハの平均律は大好きです。ちょっと数えてみたら、CDは第1、2巻それぞれ、20種類以上持ってました。しかし、ベートーヴェンさんは、無伴奏ヴァイオリンや無伴奏チェロは書いてないんですね。
ベートーヴェンのヴァイオリンソナタやチェロソナタは好きですが、それらはピアノ付きなので、好きなのです。たとえば、チェロソナタの第5番 作品102-2 の最終楽章のフーガは、無茶苦茶かっこいい!!!
ところが、ベートーヴェンはVn協奏曲は1曲(これは名曲なので1曲で十分ですが)チェロ協奏曲を、一曲も書いていません。
>無伴奏チェロ組曲には、音の並びの美しい曲がたくさんあり、いくつかは、クラシックギターでも演奏されます。
>同様に無伴奏Vnのためのソナタとパルティータにも、美しいものが・・・。
>これらの曲は、ソリストと対話するようなスタンスをとらないと、続けて聞くのはつらいですね。
なるほど、ギタリストというお立場であれば、バッハの無伴奏の和声はたまらないでしょうね。
私も最近手に入れた、デュ・プレのEMI全集で、やっとチェロという楽器を気に入り始めたところです。
投稿: KM | 2009年2月26日 (木) 01時28分
モーリス・ジャンドロン(Maurice Gendron)のチェロ組曲と、ミュラー=ショットのを聴き比べてみました。
後者ほうが、やはり軽るくて明るい!
と思いました(短調の曲で当然少しだけの暗さ重さはありますが)。
投稿: KM | 2009年3月25日 (水) 20時24分