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2008年6月22日 (日)

私の苦手な曲 バッハ:無伴奏チェロ組曲

Schott_2


J.S.バッハ
無伴奏チェロ組曲
ダニエル・ミュラー=ショット Daniel Müller-Schott
2000年録音
GLISSANDO

CD 1
Suite Nr. 1 G-dur BWV 1007 [17'14]
Suite Nr. 3 C-dur BWV 1009 [21'10]
Suite Nr. 5 c-moll BWV 1011 [23'24]

CD 2
Suite Nr. 2 d-moll BWV 1008 [19'49]
Suite Nr. 4 Es-dur BWV 1010 [21'52]
Suite Nr. 6 D-dur BWV 1012 [29'26]

ヒラリー・ハーンを追っかける(2)で書いたように、私はバッハの「無伴奏ヴァイオリン」と「無伴奏チェロ組曲」が苦手である。もう一度繰り返して書くが、ヴァイオリニストやチェリストが、ひとりで延々と自分の世界に浸っているような音楽を聴いて、何が面白いのだろうか...と、バッハの「無伴奏ヴァイオリン」と「無伴奏チェロ」を聴いて私は時々そう思うことがある。それらは、ただの、演奏者の腕前のひけらかしのように聞こえる。実際「無伴奏ヴァイオリン」と「無伴奏チェロ組曲」は、バッハが自らの腕前をひけらかすために書いたものではなかろうか...。しかし、そういう考えに捕らわれて、このふたつの作品の真の良さを知らずに終わるのは良くないと思い、私は、いろいろな演奏家の演奏を購入して聴き比べ、その良さを知ろうとした。

「無伴奏チェロ組曲」については以下のCDを購入した。

カザルス 1936 - 39年録音
フルニエ 60年
シュタルケル 63, 65年
藤原真理 82年
トルトゥリエ 82年
マイスキー 84, 85年
マイスキー 99年
ヨーヨー・マ 94 - 97年

上記の中では、トルトゥリエの演奏が聴きやすく気に入った。しかし、そのトルトゥリエの無伴奏も、取り立てて魅力的な演奏には思えなかったので、繰り返して聞くことはなかった。

もうこうなりゃ意地だと思って、ダニエル・ミュラー=ショット Daniel Müller-Schott の「無伴奏チェロ」を購入してみたところ、ついにこれが、当たった。ダニエル・ミュラー=ショットというチェリストは、アンジェラ・ヒューイット Angela Hewitt と組んだ「バッハ:チェロ・ソナタ集 BWV 1027-1029」が気に入っていたので、彼の「無伴奏チェロ」が私の好みに合うであろうことは予想できた。はたして、ショットの「無伴奏チェロ」は私にとって、初めて、全曲を退屈しないで聞ける演奏だった。彼の演奏は、特に力のこもった演奏ではない。むしろ、軽い演奏であり(いい意味で)癒し系であろう。思うに、バッハの「無伴奏チェロ」という作品は、カザルスの力演が有名になりすぎて、演奏者たちは、カザルスの演奏を模範とし、また、それを乗り越えようと、力を入れすぎているのではないだろうか。そして、そのようなスタンスはリスナーにもあると思う。

ミュラー=ショットの「無伴奏チェロ組曲」は、その明晰な演奏が私にとって魅力である。その演奏が秀演なのかどうかわからない。ただ、私は、ショットの「無伴奏」の6つの演奏を通して聴いても胃もたれしない。彼の技巧は安定している。彼の解釈、演奏に、おそらく「深遠」という形容は当てはまらないと思う。しかし、彼の無伴奏チェロの「重苦しさの無さ」が私には心地よい。ディナースタインのゴルトベルクと同じ理由で私の愛聴盤になりそうだ。すなわちその理由とは「心地よさ」だ。次は「無伴奏ヴァイオリン」の心地よい演奏を発見したいと思う。

なお、ミュラー=ショットはユリア・フィッシャーとのブラームスでも良い演奏を聴かせていると思う。私がミュラー=ショットを初めて聴き、記憶にとどめたのは、上記フィッシャーとの共演である。

【HMVへのリンク】
Johann Sebastian Bach
Cello Suites.1-6
Muller Schott(Vc)

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コメント

『バッハの音楽』って、一度や二度くらい聞いただけでは、なかなか良さがわからない作品が多いと思います。
無伴奏や平均率などは、その代表的な作品ではないでしょうか。
だけど、何度も何度も、繰り返し『聴く』につれて、その良さがわかってくるんですよ。
と云うか、徐々に良さがわかってくる作品の方が、実は奥が深くてより魅力的だということに気づくんです。
ベートーヴェンのピアノソナタや弦楽四重奏曲などにも、それがいえるんじゃないかと思いますね。
あ・・・、云い忘れるところでしたが、こういった作品は、極力、素晴らしい演奏で『聴く』ことが重要ですね。

やや同感。

カザルスの呪縛というのがあって、親父の説教的重苦しさから逃れた演奏が望ましいと思います。

もともとが舞曲の集まりだから、もっと軽快に踊るような演奏が望ましい・・・最近の古楽器系の演奏にその方向のものがあります。ま、神髄が見えれば旧来の謹厳実直なものも愉しめるようになるかも。

最近、藤原真理さんの真面目な演奏も素敵だ、と感じられるようになりました。有名どころではフルニエのライヴか。

ここなら書けることがあります。(笑)

さすがに、主要な名手は網羅してますね。あとは、ロストロさんくらいかな。面白くないから買う必要はありませんが。

私の愛聴盤はモーリス・ジャンドロン。トルトゥリエの後任で、パリ音楽院の享受になっています。同じくフランス系のチェリストですので、お好みからはずれないとは思いますが、眉間にしわを作って弾くタイプの演奏ではありません。私には、軽快で歌っているような演奏に聴こえます。フィリップスから、2枚組の廉価版が出ています。

無伴奏チェロ組曲には、音の並びの美しい曲がたくさんあり、いくつかは、クラシックギターでも演奏されます。

同様に無伴奏Vnのためのソナタとパルティータにも、美しいものが・・・。

これらの曲は、ソリストと対話するようなスタンスをとらないと、続けて聞くのはつらいですね。

ちなみに、無伴奏Vnは、グリュミオーが好きです。これもフィリップスの廉価版に。
フィリップスの録音は、L-560に通じる豊潤さ、艶やかさがあり、弦楽器に向いていると思います。

書き忘れました。

ダニエル・ミュラー=ショット、面白そうですね。聴いてみたくなりました。

※上のコメントで「享受」は「教授」です。とんでもない変換のまま、スミマセン。

コメント、ありがとうございました。

ジャンドロンの綴りを調べるために、グーグルで検索したら、「バッハ 無伴奏チェロ組曲(全曲) モーリス・ジャンドロン 校訂 (楽譜)」が出てきました。学者サンなのですね。

ジャンドロンの無伴奏 HMVで廉価盤見つけました。多分購入すると思います。

Grumiauxの無伴奏も買うと思います。

私は、ベートーヴェンの大ファンでして、ベートーヴェンといえば、ピアノソナタ。したがって、ピアノという楽器が好きでして、バッハの平均律は大好きです。ちょっと数えてみたら、CDは第1、2巻それぞれ、20種類以上持ってました。しかし、ベートーヴェンさんは、無伴奏ヴァイオリンや無伴奏チェロは書いてないんですね。

ベートーヴェンのヴァイオリンソナタやチェロソナタは好きですが、それらはピアノ付きなので、好きなのです。たとえば、チェロソナタの第5番 作品102-2 の最終楽章のフーガは、無茶苦茶かっこいい!!!

ところが、ベートーヴェンはVn協奏曲は1曲(これは名曲なので1曲で十分ですが)チェロ協奏曲を、一曲も書いていません。

>無伴奏チェロ組曲には、音の並びの美しい曲がたくさんあり、いくつかは、クラシックギターでも演奏されます。

>同様に無伴奏Vnのためのソナタとパルティータにも、美しいものが・・・。

>これらの曲は、ソリストと対話するようなスタンスをとらないと、続けて聞くのはつらいですね。

なるほど、ギタリストというお立場であれば、バッハの無伴奏の和声はたまらないでしょうね。

私も最近手に入れた、デュ・プレのEMI全集で、やっとチェロという楽器を気に入り始めたところです。

モーリス・ジャンドロン(Maurice Gendron)のチェロ組曲と、ミュラー=ショットのを聴き比べてみました。
後者ほうが、やはり軽るくて明るい!
と思いました(短調の曲で当然少しだけの暗さ重さはありますが)。

バッハの無伴奏チェル組曲は、トルトゥリエを聴いています。ボーイングも力強く、フレージングも素晴らしいと思います。チェロがすぐ近くにある感じで、チェロの定位も良いのではと思っています。
無伴奏バイオリンは、手軽に聴くには、グリュミオーのCDを聴いています。BGM的にはズスケです。耳をそばだてて聞くのは、シゲッティのLPです。(へたくそという評判もありますが。)
バッハは、この2曲で従来の作曲技法を大きく超えたのではと、いつも演奏を聴きながら思います。
バッハで、他には、グールドのパルティータ、シフのゴルトベルク変奏曲、ニコレのフルートソナタというところです。
宗教曲は聴きませんし、チェンバロも聴きません。私も楽器はピアノが一番好きです。
総じて、バッハ、ベートーヴェン、シューベルトが好きですが、聴くものが偏る傾向にあります。以上拙いコメントですみません。

月夜の案山子さん
コメントありがとうございました

私のブログを読めばお分かりのとおり、2009年12月、私は火事に遭い、クラシック音楽のCDを全部(約2500枚)焼失しました。住居再建後、コレクションを再構築しています。が、はっきり言って、うまく行ってません。結局、失った物は全部再取得したいです(厳選するということは出来ません)。
お金が足りない。
手に入らない物もあるし・・・
現在、CD保有枚数、1238枚。

はっきり書きます。私はモーツァルト、ワーグナーをまったく聴かなくなりました。
私は火事を経験し、神に近づきたくなりました。バッハにおいて宗教的なものを求めたくなりました。

バッハのオルガン曲
無伴奏ヴァイオリン・ソナタ(緩急緩急の教会ソナタの形式を持っている)
これらは、教会で演奏されたという意味では教会音楽だと思います。

平均律のフーガは神の音楽に聞こえるものあり
(曽根麻矢子は平均律第2巻を早く録音して欲しい)

無伴奏チェロは、純粋な世俗曲ですね。舞曲集ですから。だから、私には面白くない。

[例外]
Vn協奏曲は好きです。<ーーージャニーヌ・ヤンセンの新譜(注文済)

鍵盤作品は、グールド、ヒューイットで十分か?!
あと、Zhu Xiao-Meiのパルティータが面白かったです

ニコラーエワの2、3声のインヴェンションは好きです

P.S. ロン・カーターの無伴奏チェロ組曲だけは好きです

NHK-BS名曲探偵アマデウスで古川展生さんの無伴奏チェロ組曲を聴くまで、この曲のよさは分かりませんでした。カザルスの演奏は名人芸と思いますが、暗すぎます。古川さんの演奏は、生き生きとし、躍動感があり、まさにバッハ的と感じます。一度、お試し頂ければ幸いです。疲れた心にしみ入る、教会で作曲したバッハとはこれだ、と思わせるものがあります。

ラピュタさま

コメントありがとうございました。

>古川さんの演奏は、生き生きとし、躍動感があり、まさにバッハ的と感じます。
>一度、お試し頂ければ幸いです

アマゾンで検索したところ、売ってませんでしたが・・・。

--

私は、火災で、

>カザルス 1936 - 39年録音
>フルニエ 60年
>シュタルケル 63, 65年
>藤原真理 82年
>トルトゥリエ 82年
>マイスキー 84, 85年
>マイスキー 99年
>ヨーヨー・マ 94 - 97年
>ダニエル・ミュラー=ショット 2000年

などを失いましたが、その中に、(あえて買い戻すほどの)私のお気に入りの演奏はありませんでした。

私のお気に入りは、
ロン・カーターです。
http://koshiro-m.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-6897.html

現在、私は、バッハの無伴奏チェロは、ロン・カーター以外持ちません。

そこで、
Nina Kotova のを買おうと思っています。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00HER4XG4/

この人は美人ですね〜。
私は美人に弱いのです。
しかし、美人アーティストに、実力者が多いので期待してます。

KMさま、

すみませんでした。
昨日、コメントを書いた後、HMVに買いに行って絶盤である
ことに気付きました。売れなかったので、そうなった可能性
が考えられますが、私が素晴らしいと思う演奏、録音を
よいと思う人は少なかったということかもしれません。
が、私はめげずに、Amazonマーケットプレースの中古を
注文して明後日辺りに近隣のコンビニに届く予定です。
ちなみに、以下のビルボードジャパンで、さわりの視聴は
できます。
http://www.billboard-japan.com/goods/detail/150781

ちなみに、youtubeでカザルス、マイスキー、ヨーヨーマー
の演奏を聴いてみましたが、カザルスは歴史的な価値を考える
とまだしも、他のお二人のものは買ってまで聴きたいとは
思えませんでした。当方も美人は好きですが、演奏は、
多くの場合、味のある外見の方の方が好みに合う(味わい深い)
ように感じています。その典型は、演奏ではなく歌の場合ですが、
小椋 佳さんでしょうか。今夏で引退されるということで
残念ですが、引き際が綺麗だとも思います。小椋さんの声は
声帯と身体を使って演奏しているような錯覚に、時折、
引き込まれます。私にとってはいやされる音楽の一つです。
すみません。話が脱線し過ぎました。お許し下さい。
このくらいにしておきます。失礼致しました。

ラピュタさま

私は、最近、女性アーティストを聴くことが多いです。
女性は、差別により、排他されてきた(クラーラ・シューマン、アルマ・マーラー)。
いま、女性アーティストが、男性よりも面白いのは、その反動だと思います。
男性演奏家の演奏はマンネリ化(?)して、いきづまったという見方ができると思います。
それに対し、女性は、その個性、そのユニークさ、型にはまらない自由さ、が、男性アーティストに比し、未開拓なのだと思います(つまり、新しさです。新しさは、クラシック音楽において必要)。

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