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2008年3月20日 (木)

ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲聴き比べ(1)

ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61
作曲:1806年
構成:独奏ヴァイオリン、フルート、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、トランベット2、ティンパニ、弦5部。

「ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61」の聴き比べをする前に、この作品について、その内容を解析してみよう。といっても私は、楽典は苦手だし、絶対音感ないので、素人の解析しかできない。「作品61」が、どのような経緯で書かれたのか、また、この作品が、ベートーヴェンのどのようなモチベーションによって書かれたのか、など、この作品の性格を決定づけるような「作品成立のプロセス」については「作曲家別名曲解説ライブラリー ベートーヴェン」にも詳しく書いてない。

「作品61」は1806年12月、当時アン・デア・ウィーン劇場のコンサートマスターであったフランツ・クレメント(1780年、ウィーン生まれ)によって初演された。クレメントは「定評あるヴァイオリニスト」であり、その演奏は「優雅で柔和な表情」を持っていたという。そして、それが「作品61」に反映しているという。先入観になってはいけないが、クレメントがヴァイオリンの「ヴィルトゥオーゾ」ではなく「コンサートマスター」であったことは「作品61」の音楽的特徴に反映していると私は思う。

私自身の勉強のために、第1楽章の「オケによる提示部」を写譜してみた(jpgファイル 1.267KB、midiファイル 55KB。よければダウンロードして下さい)。まず、第1楽章の「オケによる提示部」を私の主観を交え見ていこう。

1.第1楽章、オケによる提示部、第1主題(midi)

Beethoven_op_61_1_2

 第1楽章の出だしは、同じ時期に書かれた「ピアノ協奏曲第4番 作品58」のそれのようなエレガントはない。すなわち冒頭のティンパニの「レレレレレー」は「ピアノ協奏曲第4番」のピアノソロの、あのエレガントなうっとりさせるような出だしに比べれば無骨に思える。第1主題は、ティンパニの「レレレレレー、レラララララー、ラララレラレ」にのって木管で奏される。これも「ピアノ協奏曲第5番 作品73《皇帝》」の「ド派手なピアノソロによる出だし」&「第1主題」とは好対照に地味である。しかし、そのような地味で素朴で、あまりパッとしない音型のパーツたちが「作品61」の長大な第1楽章を構成する。第1楽章は、冒頭のティンパニの「D」と「A」、すなわち「ニ長調」と「イ長調」の関係を行ったり来たりすることで構成されることに、楽典が駄目な私でも、気づく。

2.1の続き(midi)

Beethoven_op_61_1_3

 弦5部によって奏される不協和音的な経過句。

3.2の続き(midi)

Beethoven_op_61_1_4

 単純だが重要な音型。

4.第2主題前のトゥッティ(midi)

Beethoven_op_61_1_5

 これは多分、B-Durだと思うのだが、ここで初めて、オケが全楽器で「ff」を奏する。このパーツは第1楽章の複雑な紆余曲折を締める役割のようなものを持っているように思う。

5.第1楽章、オケによる提示部、第2主題(midi)

 Beethoven_op_61_1_6

 「第1楽章、オケによる提示部、第2主題」は「協奏曲風ソナタ形式」の定式にしたがって、主調であるニ長調で奏される。私は絶対音感がないから、これがニ長調であると言うことがピンと来ない。
 「第1楽章、ヴァイオリン・ソロによる提示部、第2主題」は、属調であるイ長調だが、それも同じ調性に聞こえる。ここまで、第1楽章は、似たり寄ったりの変わり映えしないパーツで構成されているように私には思える。この第2主題も、第1主題同様、インパクトが弱い。

6.第1楽章、オケによる提示部、結びの主題(midi)

Beethoven_op_61_1_7

 第2主題(譜例5)は、ニ長調の後、すぐに、ニ短調に転調され強調され優美さを聴かせる。その後、音楽はクライマックスを迎えるかのように盛り上がり、そして、譜例6の雄大で印象的な主題がニ長調で奏される。譜例6は、第1楽章で最も重要なパーツであるように私は感じる。

7.第1楽章、オケによる提示部、結びの主題(midi)

Beethoven_op_61_1_8

 譜例6に譜例7が応答する。譜例7で「第1楽章のオケによる提示部」は終わり、ヴァイオリン・ソロのアインガングに入る。繰り返すが、譜例1から譜例7までのパーツの中で、譜例6、7が私には一番印象が強い。

8.ヴァイオリン・ソロのアインガングと第1主題の提示(midi)

Beethoven_op_61_1_9

 ヴァイオリン・ソロのアインガングは、譜例7を受け継ぐ。

9.ヴァイオリン・ソロによる提示部の第2主題(midi)

Beethoven_op_61_1_10

 ヴァイオリン・ソロによる提示部の第2主題が、イ長調で奏される。

10.6の「結びの主題」もイ長調に転調する(midi)
Beethoven_op_61_1_11

11.ヴァイオリン・ソロが長いインターバルに入る手前(jpgファイル 377KB、midiファイル 14KB)

 私が購入したスコアは、小節数が書いてないから、第何小節か分からないが、譜例11(上記のjpgファイル参照)をもって、ヴァイオリン・ソロが、長いインターバルに入る。すなわち、ヴァイオリンソロは、展開部に至るまで休止する。ここで、4がトゥッティで奏される(多分、F-Dur)。

 譜例11で、クラリネットとファゴットが、ブレスしないで長い持続音を出すところがある。私は昔から、そこを聴いて「クラリネットとファゴット奏者は、よくまあ、息切れしないで、こんなに長い音を吹けるもんだなぁ」思っていた。つまり、ここはクラリネットとファゴットの持続音に乗っかってヴァイオリン・ソロが旋律を弾き続ける箇所であるわけだが、その間、ヴァイオリン・ソロが遅いテンポで弾き、そのタイムが長びけば長いほど、「伴奏のクラリネットとファゴット奏者は、さぞかし大量の肺活量を求められ、大変だろうなぁ」と私は思っていたということである。

 譜例11のあと「ヴァイオリン・ソロの長いインターバル」の部分は、文字通り「ヴァイオリン・ソロはお休み」で「オケのみ」によって提示部の残りが奏される。この部分のオーケストレーションは、「さすがはベートーヴェンだ」と思わせる迫力があり、もしかしたら、この部分は第1楽章の最大のクライマックスかも知れないと思える。

12.展開部への導入(midi)

Beethoven_op_61_1_13

 「オケによる提示部」「ヴァイオリン・ソロによる提示部」の2つの提示部が終わる。2つめの提示部の終わりで「6.結びの主題」の「レーファーラー、シードーレーミレドー」は、今度はC-Dur「ドーミーソー、ラーシードーレドシー」に転調している。「7.結びの主題」の「ラードーミー、ソー#ソーラーソミレ」は「ソーシーレー、ファー#ファーソーファレド」に転調している。したがって、展開部のヴァイオリン・ソロのアインガングは、上記「ソーシーレー、ファー#ファーソーファレド」を受け長2度低い「ソシレファ」で始まる。展開部はヴァイオリン・ソロが第1主題を短調(多分h-Moll)で開始する。展開部は、主にヴァイオリン・ソロが第1主題を展開する。そして、

13.12の続き(展開部)(midi)

 ヴァイオリン・ソロが、「pp」の伴奏に乗って13の感傷的旋律を奏する。

Beethoven_op_61_1_14_1

14.展開部から再現部へ(midi)

Beethoven_op_61_1_14

 14で展開部から再現部に入り、再現部では2つの提示部で提示された音楽が、主調で入念に再現されカデンツァに入る。カデンツァのあとは25小節。第2主題と譜例6,7を奏し、第2楽章への余韻を残しつつ第1楽章を閉じる。
 
 第1楽章の説明だけでも長くなった。よって、第2,3楽章の解析はここではしない。それらは、私が購入した「作品61」のCDを聴き比べながら、見ていくことにする。

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