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2008年1月22日 (火)

モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲聴き比べ(6)

051


モーツァルト:ヴァイオリンと管弦楽のための作品全集
ジャン=ジャック・カントロフ(ヴァイオリン)
レオポルト・ハーガー指揮
オランダ室内管弦楽団
1984年録音
DENON

クセのない、聴きやすい演奏だが没個性。この人の演奏に、エレガンス、ギャラント、フランスのエスプリを感じるのは難しい。「カントロフ! なにをやってるんだ!」と感じつつ聴いているうちに、最後は退屈する。なぜそう感じるのか。モーツァルトは、一つとして同じ性格を持たない5つの作品を下記(再掲)のように短期間に書き上げた。

第1番 変ロ長調 K207(1773年)17才の時
第2番 ニ長調 K211(1775年6月14日完成、ザルツブルク)19才
第3番 ト長調 K216(1775年9月12日完成、ザルツブルク)19才
第4番 ニ長調 K218(1775年10月完成、ザルツブルク)19才
第5番 イ長調 K219(1775年12月20日完成、ザルツブルク)19才

その青春のパワーというものは、個性なしには表現できないからではないだろうか。しかも、これら5曲はいずれも秀作なのであるのだから..。カントロフの演奏の魅力のなさは、どの曲も同じ演奏していることから来る。ただし、こういうクセのない聴きやすい演奏を好む人もあるだろう(しかもカントロフのモーツァルト全集は録音が良い)。詰まるところは嗜好の問題である。試しにお聴きになりたければ、カントロフの「モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番、第5番」が安く出てるから聴いてみることができる。



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モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 第1,2,4番
アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)
ネヴィル・マリナー指揮アカデミー室内管弦楽団(第1番、1991年録音)
リカルド・ムーティ指揮フィルハーモニア管弦楽団(2,4番、1982年)

・第1番 K207
ネヴィル・マリナーのほうが、ハーガーより格が上という気がする。私は、いままで、マリナーの指揮を意識して聴いてなかったが、この人はうまかったということを初めて知った。ムターの演奏は元気がよく、ヴァイオリンを弾くことの喜びに満ち、リスナーに爽快感と、程良いカタルシスをもたらす。このK207は新盤(2005年録音)より良い。

・第2番 K211
第1楽章は、新盤よりテンポが遅い。ゆえに、こちらの方が"Allegro moderato"に従った演奏といえる。第2楽章はカンタービレの指示はないがよく歌い、第3楽章ロンドへの流れをよくする。これまた新盤より良い。

・第4番 K218
これも、第1楽章は新盤よりテンポが遅いようだ。リカルド・ムーティの指揮が特にうまいというわけではないが、どうも、ムターは指揮を指揮者に任せた方が、演奏に専念できるので、よいのではないかと思う。新盤における華やかさはないが、一音一音を大事にし、かつ歌い、K211の第1楽章同様、着実さを感じる。第2楽章のカンタービレも、よく歌いながらも節度あるように聞こえるのは、ムーティの抑制の効いた指揮のせいだろうか。第3楽章にも同様のことがいえる。ちなみに、2,4番のタイムは以下の通りである(前者が旧盤、後者が新盤)。このK218も私は旧盤の方が好きだ。

第2番 K211
1. Allegro moderato 8'52" 8'21"
2. Andante 7'40" 7'01"
3. Rondeau 4'15" 3'51"

第4番 K218
1. Allegro 9'27" 8'31"
2. Andante cantabile 7'34" 7'08"
3. Rondeau 7'20" 6'50"



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モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 第3,4,5番
ヘンリク・シェリング(ヴァイオリン)
アレキサンダー・ギブソン指揮
ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
録音:1966年(no.5)、69年(no.3)、70年(no.4)

期待したが、イッセルシュテット&LSOとのベートーヴェン(65年)のような圧倒的名演ではなかった。見通しの良い演奏だが、やはり、古いタイプの演奏に聞こえる。いいかえれば、いささか野暮ったい。それでも、シェリングのヴィブラートの美音や語り口を聴くと、彼こそムターにそれを伝授した師匠だったんだなぁと感じさせられ、大袈裟に言えばムターの秘密を知る思いがする。


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