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2007年9月 9日 (日)

モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲聴き比べ(3)

モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番 ト長調 K216

この曲は有名曲だから譜例は必要ないかと思ったが、私自身の勉強のため作ってみた。第1楽章、オケによる提示部(midi

K216_1_1

下記は同提示部から第11-14小節(midi)総譜

K216_2

ヴァイオリンソロによる提示部から(midi

K216_3

繰り返しになるが第3番は有名曲なので、聴き慣れた人間には「驚くべきことはない」と思えるであろうが、私、第1,2番の音源を11種類も聴き比べたのち、改めてこの「第3番」を聴くと、第1,2番との比較において第3番第1楽章の出だしは「度肝を抜く出だし」に思える。また、この「第3番」において、第11-14小節は、ユリア・フィッシャー、クライツベルクがいうように第1,2番において見られなかった「ヴィオラとチェロパートの独立性」が見られ、海老澤敏氏がいうように「(第2番においては)ほとんど重要な役割を与えられていない管楽器パート」に重要な役割が与えられている例と私は思うが如何だろうか。


・アルテュール・グリュミオー/コリン・デイヴィス指揮/Lso
第3番 ト長調 K216(61年録音)
(カデンツァ:ウジェーヌ・イザイ)
1. Allegro 8'38"
2. Adagio 7'33"
3. Rondeau(Allegro) 5'33"

この人の演奏は、もう安心して聞ける。演奏はよいが、私が購入した廉価盤(PHILIPS)は編集が良くない。マスターテープ自体、出来が悪いのかも知れない。

・アイザック・スターン/ジョージ・セル指揮/Members of the Cleveland Orchestra
第3番 ト長調 K216(61年録音)
(カデンツァ:不明)
1. Allegro 9'23"
2. Adagio 9'26"
3. Rondeau(Allegro) 6'06"

第2楽章が絶品。スターンは語り口においてグリュミオーに勝る。第1楽章展開部、第2楽章は、緊張感において後者が勝る。そして、スターンの第2楽章は「語り口」「緊張感」を超えた風格。これには形容の言葉が見つからない。やっと、まともなスターンを聞けた気がする。さらにいえば、これはK216のベストだろう。

・ヴォルフガング・シュナイダーハン(ヴァイオリン、指揮)Bpo(68年頃録音)
(カデンツァ:ヴォルフガング・シュナイダーハン)
第3番 ト長調 K216
1. Allegro 8'39"
2. Adagio 6'46"
3. Rondeau(Allegro) 6'10"

第1楽章はまともではない。第2,3楽章は聴けないことはない。この人の正体は見えてきたような気がする。

・ダヴィッド・オイストラフ(ヴァイオリン、指揮)Bpo
第3番 ト長調 K216(71年録音)
(カデンツァ:オイストラフ)
1. Allegro 9'03"
2. Adagio 9'22"
3. Rondeau(Allegro) 6'45"

ヴァイオリンを演奏しているのは、たしかにオイストラフだということ以外に何もない。

・ヨゼフ・スーク/プラハ室内管弦楽団
第3番 ト長調 K216(71年録音)
(カデンツァ:Marteau)
1. Allegro 8'35"
2. Adagio 8'35"
3. Rondeau(Allegro) 6'15"

DENONが制作したアナログ時代の名盤なのだろう。音がいい。録音の良さにオケのうまさが映える。スークの演奏はオケほどではないような気がする。

・アンネ=ゾフィー・ムター/カラヤン指揮/Bpo(78年録音)
第3番 ト長調 K216
(カデンツァ:サム・フランコ)
1. Allegro 10'42"
2. Adagio 9'47"
3. Rondeau(Allegro) 6'38"

「弱冠14歳時のDGデビュー盤」という宣伝文句がピッタリ。演奏は恩師シェリング的だと思う。

・イツァーク・パールマン/ジェイムズ・レヴァイン指揮/Vpo
第3番 ト長調 K216(82年録音)
1. Allegro(カデンツァ:サム・フランコ)9'12"
2. Adagio(カデンツァ:イツァーク・パールマン)8'49"
3. Rondeau(Allegro)(カデンツァ:イツァーク・パールマン)6'18"

第1楽章オケによる提示部は、サビのはいってないニギリのように聞こえたが、パールマンのソロから音楽がよくなる。パールマンの音色、技巧は、K216と相性が良いのだろうか。

これだからクラシック音楽のCDは、2〜3度聴いただけでは分からない。もしかしたら、パールマンのK207,211への私の評価も過小評価かも知れない。

カデンツァは、第1楽章はムターが好むサム・フランコのを使用し、第2,3楽章は自作。このカデンツァの選択も良い。それから第3楽章が良い。私は第3楽章、アンダンテ、アレグレットのあとテンポ・プリモ(下記、midi)の第25小節目に弦が一瞬短調を聞かせるところが好きなのだが「パールマンはどう弾いているだろうか」と聴き入ってしまった。聴いてみた結果、特に何もしてないが、パールマンの第3楽章は楽章全体のテンポ、意気、および「アンダンテ>アレグレット>テンポ・プリモの流れ」が良い。

K216_3_2

・ギドン・クレーメル/アーノンクール指揮/Vpo
第3番 ト長調 K216(84年録音)
1. Allegro(カデンツァ:ロバート・D・レヴィン)9'23"
2. Adagio(カデンツァ:ロバート・D・レヴィン)7'59"
3. Rondeau(Allegro)(カデンツァ:ギドン・クレーメル)6'38"

アーノンクール指揮による第1楽章オケ提示部は素晴らしい。「なんでこんな野暮ったいアンサンブルがいいの?」と言われそうだが、「(音が)よくきこえる」から、としか言いようがない。クレーメルのソロは第1楽章提示部、再現部は情感がこもっていていいが、展開部は重く、カデンツァは弱い。全楽章において、アーノンクールのうまさに対し、クレーメルのソロはK211と同様弱く、彼はアーノンクールに合わせているように感じる。K211に比べるとクレーメルは、かろうじて自発性を保つも、もっと自己主張すべきだったと思う。

第3楽章、最後のアインガングのあとの最後のヴァイオリンソロによるテーマ(下記、midi)の「レ」の音を、クレーメルはピチカートで弾いている。ここはNEUE MOZART-AUSGABE / DIGITAL MOZART EDITION(新モーツァルト全集)のスコアでは「この記譜は自筆譜に合致している。レの音はできればピチカート(左手)で演奏されるべきである」とある。

K216_3_3

・オーギュスタン・デュメイ(ヴァイオリン、指揮)
第3番 ト長調 K216(96年録音)
1. Allegro(カデンツァ:ウジェーヌ・イザイ)9'19"
2. Adagio(カデンツァ:アルテュール・グリュミオー)7'33"
3. Rondeau(Allegro)(カデンツァ:アルテュール・グリュミオー)6'21"

硬軟両様の構え。K211と違い不自然ではない。グリュミオー盤で使用されたイザイのカデンツァ(第1楽章)がいい。

・ジュリアーノ・カルミニョーラ/Carlo de Martini/Il Quartettone(97年録音)
第3番 ト長調 K216
1. Allegro 8'42"
2. Adagio 7'23"
3. Rondeau(Allegro) 6'14"

カルミニョーラのモーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集は、HMV.co.jpのユーザーレビューで賛否要論だが、ああいうレビューも、これがピリオドアプローチによるモーツァルトという前提なしでは意味がない。私的にはこの盤は演奏より録音が面白い。演奏については、同じピリオドアプローチのモーツァルトと比較してみないと確信的なことはいえないが、このK216については、悪くないと思う。それからこの人のモーツァルトは、アインガングがいい。

・アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン、指揮)Lpo(05年録音)
第3番 ト長調 K216
(カデンツァ:サム・フランコ)
1. Allegro 9'54"
2. Adagio 9'34"
3. Rondeau(Allegro) 6'20"

第1楽章ヴァイオリンソロによる第2主題前(下記、midi)で音楽が停滞するのは「間」といえばいいのか「ため」といえばいいのか分からないが、この「ムター節」を好む人と好まない人いずれの立場にも立たない客観的な意見として、Amazon.co.jpのベートーヴェン:VNソナタ全集 [Limited Edition]における「でかだん」さんのレビューは的を射ていると思う。

K216_1_2

・ユリア・フィッシャー/ヤコフ・クライツベルク指揮/Netherlands Chamber Orchestra
第3番 ト長調 K216(05年録音)
1. Allegro(カデンツァ:ユリア・フィッシャー)9'05"
2. Adagio(カデンツァ:ヤコフ・クライツベルク)8'21"
3. Rondeau(Allegro)(カデンツァ:サム・フランコ、ユリア・フィッシャー)6'11"

ムターとの比較において、やっとこの人たちの意図が分かってきた。細かいことに捕らわれず、適切なデュナーミクによる文字通りダイナミックな演奏。ストレートでアグレッシヴ、挑戦的、ゴージャスといってもいい。しかもクール。このヴァイオリニストには、やはり注目していいいようだ。今後、ベートーヴェン、ショスタコーヴィチが楽しみだ。ただし、以上はあくまで私の主観、嗜好だ。なお、フィッシャーもクレーメルと同じく「第3楽章最後のヴァイオリンソロによるテーマ」をピチカートで演奏している(こちらは控えめ)。

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