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2007年9月16日 (日)

モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲聴き比べ(4)

モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第4番 二長調 K218

1.第1楽章、オケによる提示部(midi

K218_1_1

2.第1楽章、第2主題(再掲、midi

K218_1_9

3.第1楽章、ヴァイオリンソロによる提示部の出だし(midi

K218_1_2_1

4.第1楽章、ヴァイオリンソロによる提示部の一部(上の続き、midi

K218_1_2_3

(4の冒頭、下記青線のねじれが私は好きだ。midi

K218_qqq

5.第1楽章、コーダの音型(再掲、midi

K218_1_3

6.第1楽章、展開部と再現部(一部、midi

K218_1_8

7.第1楽章、再現部(上の続き、midi、再現部第2主題は主調で始まり、短調の陰りを聞かせる)

K218_1_10

この作品の第1楽章は、特異な形式をしているので理解するのに時間がかかった。上記は譜例というより「写譜」に近い。聴くだけでは、スッキリしないことが「写譜することで分かる」という経験を、私、初めて、してしまった。要するにこの形式は「レーレーレレレレファラファレファラファレファラファレ」という冒頭の第1主題が、展開部、再現部には現れないこと。第1主題の代わりに「4の最初の部分の主題」が再現部を開始(多分、6の第145小節からが再現部)させるので再現部の開始がどこか分かりづらい。5の「コーダの音型」も大事で、これは属調で展開部を導く。モーツァルトは、新しい主題で展開部を開始するということは、よくやることだが、この作品では、その「新しい主題」らしき(6の)第117小節の主題が目立たないので、展開部がどこから始まるかも分かりづらい。あとは、協奏曲風ソナタ形式の定石通りのようだ。

また、下記の第1楽章第8小節以下は、第1楽章のリズムを特徴づけると思う(再掲、midi)。

K218_1_13

これは譜例7の第1楽章再現部、第153小節とカデンツァ前に現れる(下記、midi)。

K218_1_11

この作品の特徴は、第1楽章で、オケの役割の度合いが小さくヴァイオリンソロが自由奔放に演奏しまくること。第2楽章もヴァイオリンソロの歌が終始歌われること。第3楽章のロンドも複雑であること。こういった特徴をもつK218は、ヴァイオリン独奏者にとって「魅力的かつ弾き甲斐のある作品」であると思う。

・アルテュール・グリュミオー/コリン・デイヴィス指揮/Lso
第4番 ニ長調 K218(62年録音)
1. Allegro 8'57"
2. Andante cantabile 6'55"
3. Rondeau(Andante grazioso - Allegro ma non troppo) 6'51"

例によって瑕疵のない音楽。しかし、作品の面白さを伝えない。

・アイザック・スターン/アレキサンダー・シュナイダー指揮/イギリス室内管弦楽団
第4番 ニ長調 K218(76年録音)
(カデンツァ:ヨーゼフ・ヨアヒム)
1. Allegro 9'24"
2. Andante cantabile 8'54"
3. Rondeau(Andante grazioso - Allegro ma non troppo) 7'44"

遅めのテンポ。貫禄ある演奏。スターンは、この演奏で特に何かをしているわけではないのだが、音楽がそぞろ身に染む。私はヨアヒムのカデンツァが好きだ。スターンのカデンツァ選択と演奏は気に入った。

・ヴォルフガング・シュナイダーハン(ヴァイオリン、指揮)Bpo
(カデンツァ:ヴォルフガング・シュナイダーハン)
第4番 ニ長調 K218(68年頃録音)
1. Allegro 8'46"
2. Andante cantabile 6'42"
3. Rondeau(Andante grazioso - Allegro ma non troppo) 6'55"

K218はシュナイダーハンに合ってると思うのだが、音色の美しさだけが耳に付く演奏。自作のカデンツァは、そろそろ鼻に付くようになった。

・ダヴィッド・オイストラフ(ヴァイオリン、指揮)Bpo
第4番 ニ長調 K218(70年録音)
(カデンツァ:ダヴィッド)
1. Allegro 9'20"
2. Andante cantabile 7'54"
3. Rondeau(Andante grazioso - Allegro ma non troppo) 7'58"

オイストラフの第1-3番を聴いてきて、ピンと来なかったが、第4番は含蓄ある演奏(?)に思えた。彼のK218も音楽がそぞろ身に染む。

・ヨゼフ・スーク/プラハ室内管弦楽団
第4番 ニ長調 K218(70年録音)
(Kadenzen nach David, Marteau, Jachim von Josef Suk)
1. Allegro 9'33"
2. Andante cantabile 7'06"
3. Rondeau(Andante grazioso - Allegro ma non troppo) 7'09"

何も感じなかった。

・イツァーク・パールマン/ジェイムズ・レヴァイン指揮/Vpo
第4番 ニ長調 K218(85年録音)
(カデンツァ:イツァーク・パールマン)
1. Allegro 8'38"
2. Andante cantabile 7'10"
3. Rondeau(Andante grazioso - Allegro ma non troppo) 6'59"

音色、技巧ともに素晴らしく流麗な演奏。第2楽章はベートーヴェン:交響曲第2番の第2楽章(同じイ長調)を想い起こさせる。

・ギドン・クレーメル/アーノンクール指揮/Vpo
第4番 ニ長調 K218(87年録音)
(カデンツァ:ロバート・D・レヴィン)
1. Allegro 8'20"
2. Andante cantabile 6'07"
3. Rondeau(Andante grazioso - Allegro ma non troppo) 7'41"

インパクトは強くないが、真摯な演奏。作品の特徴をよく伝える。

・オーギュスタン・デュメイ(ヴァイオリン、指揮)
カメラータ・アカデミカ・ザルツブルク
第4番 ニ長調 K218(96年録音)
1. Allegro(カデンツァ:ヨーゼフ・ヨアヒム)9'15"
2. Andante cantabile(カデンツァ:ヨーゼフ・ヨアヒム)6'45"
3. Rondeau(Andante grazioso - Allegro ma non troppo) 7'16"

好みもあるだろうが、第1楽章、ヨアヒムのカデンツァが下品に聞こえる。第3楽章は対照的に上品すぎて面白い。この人は、美しい音色をもてあましているように聞こえる。

・ジュリアーノ・カルミニョーラ/Carlo de Martini/Il Quartettone
第4番 ニ長調 K218(97年録音)
1. Allegro 8'07"
2. Andante cantabile 6'13"
3. Rondeau(Andante grazioso - Allegro ma non troppo) 7'21"

第1楽章でアグレッシヴな演奏も聴かせ、第2楽章のアンダンテ・カンタービレはきちんと歌っている。第3楽章は丁寧な演奏。全曲通してバランスあり。この人は癖のあるヴァイオリニストと聞いていたが、結構ストレートで手堅い。くろうと(?)に好まれるであろう。

・アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン、指揮)Lpo
第4番 ニ長調 K218(05年録音)
(カデンツァ:ヨーゼフ・ヨアヒム)
1. Allegro 8'31"
2. Andante cantabile 7'08"
3. Rondeau(Andante grazioso - Allegro ma non troppo) 6'50"

11種類聴き比べた中で、私はこれが一番気に入った。音楽を楽しませながら、かつ、音楽を理解させてくれる演奏。自由に歌いながらも自然である。音に酔わされる。リスナーは、ついオーディオのヴォリュームを上げてしまうであろう。カデンツァはヨアヒムのを弾いているのも良い。この演奏に私は脱帽させられた。「さすがは14才でデビューした根っからのヴァイオリニストによる演奏だ」また「才女ムターの円熟はかくあるべし」と..。そして旧盤も聴いてみたくなった。

・ユリア・フィッシャー/ヤコフ・クライツベルク指揮/Netherlands Chamber Orchestra
第4番 ニ長調 K218(05年録音)
1. Allegro(カデンツァ:ユリア・フィッシャー)8'31"
2. Andante cantabile(カデンツァ:ユリア・フィッシャー)7'08"
3. Rondeau(Andante grazioso - Allegro ma non troppo)(カデンツァ:ヨーゼフ・ヨアヒム)6'50"

全曲を通して、指揮者クライツベルクが独奏者フィッシャーをリードしている感じがする。したがって、フィッシャーに元気がない(第1,2楽章においてフィッシャーが書いた長いカデンツァが、それを補っているかも知れない)。「フィッシャーに元気がない」といっても、それは私の主観であり私の印象である。それは、フィッシャーが若さ、みずみずしさ、それ故の元気さを聴かせるK216(第3番)と比較したときの微妙な差異である。ただ、K218は、ムターの演奏のように独奏者がリードするというのが正しいと思う。

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コメント

「聞く側」のお立場としての評価はとても研究熱心さが伺えますね。更に演奏者,作曲者,それらの研究実践派などの立場も併合して考えれば更によいアドバイスとなるでしょうね。関連しているHPがあります。ご参考に。
http://violin.doorblog.jp/archives/cat_136019.html
以下。

良い成果を。

MEMRL さま

私のブログに目をとめて頂き、ありがとうございます。

>更に演奏者,作曲者,それらの研究実践派などの立場

それは私には無理です

http://violin.doorblog.jp/archives/cat_136019.html

自分も楽器弾けたらいいなぁ・・・

私は楽器を演奏できないだけでなく、絶対音感なし、相対音感にも自信なし、リズム音痴。
要するに楽器弾けない、楽譜読めない・・・
よって写譜は音楽の勉強になります。

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