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2007年8月10日 (金)

ニーナ・ステンメ

Wesendonck_stemme


・ワーグナー:ヴェーゼンドンクによる5つの詩
・ニーストレム:『海に寄せる歌』
・ド・ベック:『7つのメロディ』
ニーナ・ステンメ(ソプラノ)
ヨゼフ・デ・ベーンホウエル(ピアノ)
2003-04年録音






WESENDONCK-LIEDER

1. Der Engel

In der Kindheit früen Tagen
Hört' ich oft von Engeln sagen,
Die des Himmels hehre Wonne
Tauschen mit der Erdensonne,
 
Daß, wo bang ein Herz in Sorgen
Schmachtet vor der Welt verborgen,
Daß, wo still es will verbluten,
Und vergehn in Tränenfluten,
 
Daß, wo brünstig sein Gebet
Einzig um Erlösung fleht,
Da der Engel niederschwebt
Und es sanft gen Himmel hebt.

Ja, es stieg auch mir ein Engel nieder,
Und auf leuchtenden Gefieder
Führt er, ferne jeden Schmerz,
Meinen Geist nun hinmmelwärts.
 
2. Stehe still!
 
Sausendes, brausendes Rad der Zeit,
Messer du der Ewigkeit;
Leuchtende Sphären im weiten All,
Die ihr umringt den Weltenball;
Urewige Schöpfung, halte doch ein,
Genug des Werdens, laß mich sein!
 
Halte an sich, zeugende Kraft,
Urgedanke, der ewig schafft!
Hemmet den Atem, stillet den Drang,
Schweiget nur eine Sekunde lang!
Schwellende Pulse, fesselt den Schlag;
Ende, des Wollens ew'ger Tag!

Daß in selig süßem Vergessen
Ich mög' alle Wonnen ermessen!
Wenn Aug' in Auge wonnig trinken,
Seele ganz in Seele versinken;
Wesen in Wesen sich wiederfindet,
Und alles Hoffens Ende sich kündet;
Die Lippe verstummt in staunendem Schweigen,
Keinen Wunsch mehr will das Inn're zeugen:
Erkennt der Mensch des Ew'gen Spur,
Und löst dein Rätsel, heil'ge Natur!
 
3. Im Treibhaus
 
Hochgewölbte Blätterkronen,
Baldachine von Smaragd,
Kinder ihr aus fernen Zonen,
Saget mir, warum ihr klagt?
 
Schweigend neiget ihr die Zweige,
Malet Zeichen in die Luft,
Und der Leiden stummer Zeuge,
Steiget aufwärts süßer Duft.
 
Weit in sehnendem Verlangen
Breitet ihr die Arme aus,
Und umschlinget wahnbefangen
Öder Leere nicht'gen Graus.
 
Wohl, ich weiß es, arme Pflanze:
Ein Geschicke teilen wir,
Ob umstrahlt von Licht und Glanze,
Unsre Heimat ist nicht hier!
 
Und wie froh die Sonne scheidet
Von des Tages leerem Schein,
Hüllet der, der wahrhaft leidet,
Sich in Schweigens Dunkel ein.
 
Stille wird's, ein säuselnd Weben
Füllet bang den dunklen Raum:
Schwere Tropfen seh' ich schweben
An der Blätter grünem Saum.
 
4. Schmerzen
 
Sonne, weinest jeden Abend
Dir die schönen Augen rot,
Wenn im Meeresspiegel badend
Dich erreicht der frühe Tod;
 
Doch erstehst in alter Pracht,
Glorie der düstern Welt,
Du am Morgen neu erwacht,
Wie ein stolzer Siegesheld!
 
Ach, wie sollte ich da klagen,
Wie, mein Herz, so schwer dich sehn,
Muß die Sonne selbst verzagen,
Muß die Sonne untergehn?
 
Und gebieret Tod nur Leben,
Geben Schmerzen Wonnen nur:
O wie dank' ich, daß gegeben
Solche Schmerzen mir Natur.
 
5. Träume
 
Sag, welch' wunderbare Träume
Halten meinem Sinn umfangen,
Daß sie nicht wie leere Schäume
Sind in ödes Nichts vergangen?
 
Träume, die in jeder Stunde,
Jedem Tage schöner blühn,
Und mit ihrer Himmelskunde
Selig durchs Gemüte ziehn!
 
Träume, die wie hehre Strahlen
In die Seele sich versenken,
Dort ein ewig Bild zu malen
Allvergessen, Eingedanken!
 
Träume, wie wenn Frühlingssonne
Aus dem Schnee die Blüten küßt,
Daß zu nie geahnter Wonne
Sie der neue Tag begrüßt,
 
Daß sie wachsen, daß sie blühen,
Träumend spenden ihren Duft,
Sanft an deiner Brust verglühen,
Und dann sinken in die Gruft.
(Mathilde Wesendonck)


ヴェーゼンドンクによる5つの詩
 
1.天使
 
子どもの頃 遠い昔
私はよく天使たちの物語を耳にした
天使たちは天上の尊い歓びを
地上の太陽に換えるという
 
心が不安におびえ
人知れず悩むとき
そして ひそかに心が血を流し
溢れる涙に消え行こうとするとき
 
激しく 心の祈りが
ひたすら救いを願うとき
その時 天使が下り
心を 優しく天上に引き上げるという
 
本当に私にも一人の天使が下った
そして輝く羽に乗せて
彼はすべての苦痛から遠くに隔てんと
私の精神をいまや天へと導く
 
2.とまれ!
 
ザワザワとざわめく時の車輪よ
汝 永遠を測る者よ
広大なる万有に輝ける天体たちよ
汝ら 球なす世界を取り囲む者らよ
永遠なる創造の源よ いざ やめよ
生成の充足よ 我を捨て置け!
 
とまれ 産み出す力よ
永遠の造物主なる原想念よ!
息を殺し 衝動をしずめ
一秒間だけでよい 沈黙せよ!
高まる脈動よ その鼓動を縛れ
果てよ 果てしなき希望の日よ!
 
そして至福なる甘き忘却の中に
我 すべての歓喜を測らん!
目は目を嬉々として見つめ
魂はすべて魂に沈み
存在者は存在者に自らを再び見いだすなら
そして すべてが望みの終わりを告げるなら
唇は 驚愕する沈黙の中で 沈黙し
心の内は もはや希望を産み出そうとはしない
人間は永遠なるものの痕跡を知れ
そして汝の謎を解き放て 聖なる自然よ!
 
3.温室にて
 
高くアーチを描く葉の冠よ
エメラルドの天蓋よ
遠い国からきた子どもたちよ
言っておくれ 何故お前たちは嘆くのか?
 
お前たちは黙して枝を傾け
虚空にしるしを描く
そして沈黙する苦悩の証人は
甘い香りとなって立ちのぼる
 
遠く焦がれる思いに
お前たちは腕を伸ばす
そして 妄想にとらわれ
荒れ果てた空虚のむだな恐怖を抱く
 
そうだ 私は知っている 哀れな植物たちよ
一つの運命を私たちは分かち合っている
光と輝きに周囲を照らされてはいるが
私たちの故郷はここではないことを!
 
そして陽は楽しげに
昼のうつろな輝きに別れを告げる
そのとき真に苦しめる者は
沈黙の暗闇に身をくるむ
 
静寂が訪れ サラサラと生を織りなす音が
不安気に暗い空間を満たす
重いしずくたちが漂うのを
私は見る 青い葉の端に
 
4.痛み
 
太陽よ 夕べが訪れるたびに
お前は美しい眼を赤く泣きはらす
海の鏡に浴しながら
早い死がお前を捕らえるときに
 
だが お前は蘇る 変わらぬ壮麗のまま
この陰鬱な世界の栄光よ
お前は新しい朝に目覚める
勝利の英雄さながらに!
 
ああ だから私は何故嘆くことがあろうか?
わが心よ お前は 何故かくも悲しむのか?
もし太陽でさえも ひるまなければならないのなら。
太陽が 没しなければらならないのなら。
 
死はただ生だけを生む
痛みはただ歓びだけを与える
ああ 私は如何に感謝せん
かくなる痛みを私に自然が与えしことを
 
5.夢
 
告げよ なんと素晴らしい夢が
私の心を抱いて離さぬことか? そして
それが虚ろなうたかたにはあらで
荒れ果てた空虚へ消え去らざりしことを
 
夢 それはいつでも
日毎に 美しさを増し花咲く
そして 天上の告知を担いて
至福に満ち 心をよぎり行く!
 
夢 それは尊き光の如く
魂の中に自らを沈め
そこに永遠の像を描く
それは全ての忘却にして記憶なり!
 
夢 それは春の太陽が
雪から出(いで)し花に接吻するがごとし
そして予期せぬ歓びに至らんとて
夢は新しい日の挨拶を受ける
 
夢は育ち 夢は花咲き
夢見つつ その芳香を放ち
夢は優しくあなたの胸に消え行き
そして 墓へと沈む
(マチルデ・ヴェーゼンドンク)

現役のソプラノ歌手で良い歌手はいないかと数人追っかけてましたが、このニーナ・ステンメの「ヴェーゼンドンク」は気に入りました。

私、ワーグナーの「ヴェーゼンドンク・リーダー」を楽劇《トリスタン》の習作と捕らえてました。しかし、これはピアノ伴奏による歌曲として良い曲ですね。それを教えてくれたのが、ステンメでした。

この作品、ビルギット・ニルソンやフラグスタートが歌うのを聴いたことがありましたが、ピンと来ませんでした。ステンメは、ロマン派のシューベルト以降の歌曲として歌っているように聞こえます。それが、この作品の本来の魅力なのでしょう。

「ヴェーゼンドンク・リーダー」は大胆と静謐(せいひつ)を合わせ持つ夜の歌。そして、あえて言えばドイツ・リートの主流として、R.シュトラウスの歌曲に受け継がれた歌曲集として聴くのが正しい聴き方だと思いますし、また、そう歌われるべきだし、もっと多く取り上げられていい作品だと思います。

この作品の魅力は、音楽もさることながら歌詞です。マチルデ・ヴェーゼンドンクという人は、ワーグナーが惚れただけあって、また彼に《トリスタン》をインスパイアさせただけあって豊かな感性を持つ人ですね。彼女の詩は、たしかにアマチュアっぽい稚拙はありますが、ワーグナーとは異なる独特のドイツ語を感じさせます。

すなわち、これらの詩は、マチルデに献呈された《トリスタン》の台本に対する返礼として書かれた詩なので、《トリスタン》を真似た詩ではないかとという先入観が私にはありました。しかし、そうではなく、ワーグナーのテキストとは違う独特の雰囲気に私は感嘆しました。

第1曲 天使
マチルデがワーグナーを天使の贈り物(地上の太陽)と歌ったラヴソング。

第2曲 とまれ!
「時間よ、とまれ!」というモチーフ。作者は、成就しない恋愛を忘却の中にとどめようとする。「人間は永遠なるものの痕跡を知れ」とか「汝の謎を解き放て 聖なる自然よ!」とか大袈裟なことを歌ってますが、これも愛の歌。

第3曲 温室にて
音楽が《トリスタン》第3幕の前奏曲に転用されたこと、後半のところで「太陽が昼の空虚な輝きと別れるのは楽しい」と《トリスタン》的モチーフが歌われてはいますが、楽劇《トリスタン》とは切り離して聴いた方がいいと思います。マチルデとワーグナーの悲恋を「温室」の植物たちにたとえた詩のイメージと、ワーグナーの音楽が、よくマッチしている作品だと思います。

第4曲 痛み
劇的歌い出しで始まる。「太陽が死して蘇るように 愛の痛みは歓びにかわる」という大意。

第5曲 夢
第3節の「夢は忘却にして記憶」というのはフロイト的だと思います。《トリスタン》第2幕に転用された曲。

私は、これら5曲を聴くとき、この盤のニーナ・ステンメのジャケット写真がヴェーゼンドンク夫人と重なります。


Wesendonck_studer

なお、私は、シノーポリ指揮シュターツカペレ・ドレスデンでチェリル・スチューダー(Cheryl Studer)が歌った「ヴェーゼンドンクによる5つの詩」も持ってました(上図)。これは「4つの最後の歌」と《トリスタン》前奏曲と愛の死と一緒に収められているものですが、私は後者2つが、あまり気に入らなかったので、スチューダーの「ヴェーゼンドンク・リーダー」はあまり聴いてなかったのでした。改めて聴いてみると、スチューダーの歌唱も素晴らしいです。これは同盤の「4つの最後の歌」「愛の死」より良いかもしれません。スチューダーの「ヴェーゼンドンク・リーダー」を改めて聴く気になったのも、ステンメさんのお陰。また、スチューダーのうまさを知ったのも同様、ステンメさんのお陰です。ステンメを追っかけてよかったです。

ヴェーゼンドンクによる5つの詩をはじめとする歌詞対訳集へのリンク
ヴェーゼンドンクによる5つの詩他

HMV.co.jpへのリンク
ヴェーゼンドンク歌曲集、他 ステンメ、ベーンホウエル

Amazon.co.jpへのリンク
Sings Wagner/Nystroem/De Boeck


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