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2007年7月16日 (月)

シノーポリのマーラー:交響曲全集(4)

GUSTAV MAHLER
10 Symphonies & Lieder

CD 6
交響曲第4番ト長調
1. 第1楽章 16'17"
2. 第2楽章 10'07"
3. 第3楽章 21'52"
4. 第3楽章 9'52"

エディタ・グルベローヴァ(ソプラノ)

録音:1991年2月

これはシノーポリの指揮より、第4楽章のエディタ・グルベローヴァの歌唱がうまい。

私は、この作品も第3番同様大好きです。特に第4楽章が好きなので、いろいろ持ってましたが、成人女性が歌ったもので満足できるものはありませんでいした。しかし、やっと見つかりました。エディタ・グルベローヴァによる第4楽章は、私にとって、決定的です。グルベローヴァはマーラー、R.シュトラウスはダメかと思ってましたが、彼女がマーラーを、かくもうまく歌うなら、R.シュトラウス歌曲集も買ってみようかなぁ..。

上で「成人女性」と書いたのは、バーンスタイン/コンセルトヘボウ/87年盤のボーイソプラノの歌唱が、成人女性の歌唱より気に入っていたからです。

・第4楽章のグルベローヴァの歌唱について

まず歌詞を見ます。






Wir genießen die himmlischen Freuden,
d'rum tun wir das Irdische meiden.
Kein weltlich Getümmel
hört man nicht im Himmel!
Lebt alles in sanftester Ruh!
 
Wir führen ein englisches Leben!
Sind dennoch ganz lustig daneben!
(Wir führen ein englisches Leben!)
Wir tanzen und springen,
wir hüpfen und singen (wir singen)!
Sankt Peter im Himmel sieht zu!
 
Johannes das Lämmlein auslasset,
der Metzger Herodes drauf passet!
Wir führen ein geduldig's,
unschuldig's, geduldig's,
ein liebliches Lämmlein zu Tod!
Sankt Lukas den Ochsen tät schlachten
ohn' einig's Bedenken und Achten;
der Wein kost' kein Heller
im himmlischen Keller;
die Englein, die backen das Brot.
 
Gut' Kräuter von allerhand Arten,
die wachsen im himmlischen Garten!
Gut' Spargel, Fisolen
und was wir nur wollen!
Ganze Schüsseln voll sind uns bereit!
Gut' Äpfel, gut' Birn' und gut' Trauben,
die Gärtner, die alles erlauben!
Willst Rehbock, willst Hasen?
Auf offener Straßen
sie laufen herbei!
Sollt ein Fasttag etwa kommen,
alle Fische gleich mit Freude angeschwommen!
Dort läuft schon Sankt Peter
mit Netz und mit Köder
zum himmlischen Weiher hinein.
Sankt Martha die Köchin muß sein!
 
Kein Musik ist ja nicht auf Erden,
die unser verglichen kann werden.
Elftausend Jungfrauen
zu tanzen sich trauen!
Sankt Ursula selbst dazu lacht!
(Kein Musik ist ja nicht auf Erden,
die unser verglichen kann werden.)
Cäcilia mit ihren Verwandten
sind trefflich Hofmusikanten!
Die englischen Stimmen
ermuntern die Sinnnen,
daß alles für Freuden erwacht.
(Des Knaben Wunderhorn)

私たちは天上の喜びを享受する
だから地上のことは避けている
世俗の喧騒を
天上で聞くことはない!
皆 とても穏やかな静かさの中に暮らす!
 
私たちは天使の生活を送る!
私たちは静かに暮らしながらも陽気そのもの!
(私たちは天使の生活を送る!)
私たちは踊り 跳びはね
私たちは歌い また 歌う!
天上におられる聖ペテロ様はご見物なさる!
 
洗礼者ヨハネ様が子羊を放す
肉屋のヘロデがそれを待ち伏せる!
私たちは忍耐の人を
罪なき忍耐の人を
可愛い子羊を死へと導く!
聖ルカ様は雄牛をほうる
少しもためらわず気にもせず。
ワインを飲むにお金はいらぬ
天上のレストラン
天使たちはパンを焼く
 
あらゆる種類の上等な野菜が
天上の庭に育つ!
美味しいアスパラガス インゲンマメ
そして欲しいものは何でも!
私たちのボールぜんぶに山盛り用意される!
美味しいりんご 梨 ぶどう
庭師たちは 何でもとらせてくれる!
鹿が欲しいか? ウサギが欲しいか?
それらは 公道を
走ってやって来る!
精進日が来れば
あらゆる魚たちがすぐに喜んで泳いで来る!
そこに さっそく 聖ペテロ様が
網とエサを持って
天上の池に とんで来る
聖マルタ様が 料理をなさるに違いない!
 
私たちの音楽に比べられる音楽が
地上に あろうか。
一万一千の乙女たちが
はじらうことなく踊る!
聖ウルズラ様 御自身それを見て笑う!
(私たちの音楽に比べられる音楽が
地上に あろうか。)
聖チェチリア様と その御一族は
たぐいまれなる宮廷楽士!
その天使の歌声は
こころ はずませ
万物は喜びに目覚める
(少年の不思議な角笛)

この歌詞は気味悪いですね。キリスト教を題材にしながら、禁欲とは反対に食い物の話ばかり出てくる。キリストをさっさと殺す。そのあとすぐに、ルカが雄牛をほうる。聖ウルズラは一万一千人の乙女とともに殺された聖女。聖チェチリアとその一族もまた残酷に殺された殉教者。そういう聖女たちが天国では楽しくに暮らしているはいいのですが、やはり彼女らの残酷な最期を知ると、その落差に不気味さを感じます。それに歌詞では「天上に喧噪無し」と歌っておきながら、第4楽章はけっこう騒がしい音楽です。この楽章は、第1楽章の主題が、歌唱と歌唱をつなぐ接着剤のような役割をしてますが、私にはそれがノイズに聞こえます。そして、そのノイズを聴くと、私はフランツ・カフカの『城』で主人公が城に到着してすぐ、城の中枢に電話をしていると、突然、電話にノイズが入る場面を思い出します。この「ノイズ」がうまく生かされている演奏は、バーンスタイン/コンセルトヘボウ盤だと思います。

第4楽章は下記の歌唱を聴き比べました。

レリ・グリスト(バーンスタイン/NYP/60年)
エディット・マティス(バーンスタイン/Vpo/72年/ビデオ盤)
ルチア・ポップ(テンシュテット/Lpo/82年)
Laura Claycomb(T.トーマス/SFS/03年)
ドロテア・レシュマン(ハーディング/マーラー室内/04年)

エディット・マティスは清楚すぎる。彼女はバッハのカンタータ(カール・リヒター指揮)が合ってるし、それは、うますぎるぐらいうまい。しかしマーラー第4番第4楽章の気味の悪い歌詞は、彼女には合ってない気がします。

テンシュテット盤のルチア・ポップは第1,2節が若干不安定に聞こえます。ひどい失敗はないのですが魅力もない歌唱に聞こえます。たまたま同じCDに入っていたR.シュトラウスの「四つの最後の歌」(82年)が圧倒的でうますぎるので、マーラー第4番のほうは元気なく調子悪いように聞こえます。彼女は同じ《角笛》を素材にしたものでもR.シュトラウスの《15ペニッヒ》のシンプルなイロニーのほうが合ってるような気がします。ヴルフガング・サヴァリッシュのピアノ伴奏によるものです(1984年録音)。

レリ・グリストは持ち前の明るい声の《少年》らしさは良いのですが、雄弁ではありません。その点、物足りません。悪く言えば舌足らず。

ドロテア・レシュマンは明らかに力不足。

上記に対し、エディタ・グルベローヴァのうまさについて以下に書きます。

まず、第1行の"himmlischen"のメリスマがうまい。

第3,4行目で"Getümmel"と"Himmel"で韻を踏んでるんですが"Himmel"のアクセントがうまい。

第3節「洗礼者ヨハネ様が子羊を放す」以下の表情が良い。

第4節「Gut' Äpfel, gut' Birn' und gut' Trauben, / 美味しいりんご 梨 ぶどう」以下テンポが速くなりますが、適切な語り口です。もう少しドイツ語をはっきり聞こえるように歌った方がいいと思ったのですが、このドイツ語は、ドイツ語ネイティヴの人には、ちゃんと聞こえるでしょう。問題ありません。

「Sankt Ursula selbst dazu lacht! / 聖ウルズラ様 御自身それを見て笑う!」の"dazu"の"zu"の下降は、バーンスタイン盤(87年)のボーイソプラノでは、少年らしく可愛かったんですが、やはり大人の技巧のほうが断然いいです。

グルベローヴァの歌唱は、美声、気品、貫禄でこの気味の悪い歌を「圧倒」してしまったという感じです。

グルベローヴァのお陰で、シノーポリの第4楽章の指揮も、よく聞こえます。例の歌唱と歌唱の間の「ノイズ」も効果的に聞こえます。

歌手は指揮者の指示の通りに歌うということであれば、この第4楽章の歌唱の良さは「シノーポリの巧さ」によるということになります。本当に、そうなのか、どうなのか分かりませんが、そういうことにしておきましょう。

・シノーポリの指揮について

私は、マーラーの第4番はテンシュテット/Lpo/82年盤とバーンスタイン/コンセルトヘボウ/87年盤が気に入ってます。いずれも第3楽章が素晴らしい。T.トーマス/SFS/03年盤は第1楽章再現部第2主題を上手く盛り上げていますが聴き飽きました。シノーポリの第4番第1,2,3楽章は、テンシュテット、バーンスタインとは、まったく異なるユニークな解釈に、私は最初ビックリしました。しかし、今は私は、これら第1,2,3楽章を、ひどい演奏とは思いませんし嫌いでもありません。ただ、これらを最悪の演奏だと感じる人もあるかも知れません。正直言って、シノーポリのマーラー第4番第1,2,3楽章は、シノーポリが何をいいたいのか私にはわかりません。第4楽章のグルベローヴァの歌唱を、とても気に入った私は、第1,2,3楽章はどうでもいいです。

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