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2007年6月14日 (木)

ユリア・フィッシャー(1)

Julia_fischer_bach


無伴奏ヴァイオリンソナタ&パルティータ(全曲)
ユリア・フィッシャー(Julia Fischer)
Violin: Jean Baptiste Guadagnini from 1750
2004年12月録音
Pentatone Classics

バッハの《無伴奏ヴァイオリン》は、シゲティ、アーヨ、クレーメル、シェリング、ミルシテイン(旧盤)など持ってましたが、まじめに聴いてませんでした。というか、この作品の良さが分かりませんでした。この作品は技巧だけでなく内容も難しいという印象しかありませんでした。しかし今回、ユリア・フィッシャーという若手女性ヴァイオリニストの新譜を聴いて初めてこの作品の面白さが分かりました。すなわち、フィッシャーの演奏の特徴を一言でいうと「わかりやすい」「聴きやすい」です。

フィッシャーのヴァイオリンは音色がきれいです。そして端正。技巧に秀でていながら、ひけらかさない。解釈は正攻法かつ新鮮。

パルティータ2番のシャコンヌは「シャコンヌという形式をもつ小宇宙」というイメージでしたが、このフィッシャーの演奏は、単なるシャコンヌ、すなわち短いテーマによる「変奏」にとどめているという印象です。演奏時間は

シゲティ 15'59"
アーヨ 14'33"
クレーメル(80年) 12'47"
シェリング 14'22"
ミルシテイン(旧盤) 13'41"
フィッシャー 15'47"

ですが、私には、フィッシャーの演奏は比較的テンポが遅く、テンポの揺れが少ないように思えました。その点、物足りなかったんですが、解釈は新しいと思いましたし、聴きやすかった。劇的演奏でないところが新鮮という感じでしょうか。HMV.co.jpの宣伝文句には「バーンスタイン&グレン・グールドの演奏によるピアノ協奏曲ニ短調、そしてキーシンが弾いたブゾーニ編曲の『シャコンヌ』に魅了されたというユリア・フィシャーは...」と書いてありますが、たしかにフィッシャーの「シャコンヌ」は鍵盤楽器での演奏のような雰囲気であり、それはなんとなく論理的演奏に聞こえました。HMV.co.jpの宣伝文句には「これまで8つの国際コンクールに優勝していますが、そのうち5つはヴァイオリンでの受賞、あとの3つはなんとピアノでの受賞という驚くべき才の持ち主」ともあります。この人はピアノも弾けるというのが、その演奏に反映しているのかも。

《ソナタ&パルティータ第1番》は、得体の知れない音楽だと思ってましたが、やっとその形式の意味が分かりました。ソナタ第1番第1曲アダージョは平均律などの「前奏曲とフーガ」の「前奏曲」に当たるんですね。第2曲のアレグロがフーガなのでまさに「前奏曲とフーガ」です。そのあと、第3曲はシチリアーノ、第4曲プレストはジーグ風と舞曲が続くので、このソナタ第1番はある意味「管弦楽組曲」と同じような「舞曲組曲」じゃないかと思いました。そのあとパルティータ第1番を続けて演奏すれば《ソナタ&パルティータ第1番》は一連の「舞曲組曲」として聴くことができます。

あと、この曲集は、付点付きの緩い曲-急の「フランス風序曲」で始まる曲が多いですね。そういうことが分かったら、断然この曲が面白くなりました。それを気づかせてくれたのが、このユリアさんでした。今までそれが分からなかった私が間抜けだったのかも知れませんが、とにかく、私にとってこのユリア・フィッシャーのバッハは、一般的に難解に思われている《無伴奏ヴァイオリンソナタ&パルティータ》の聴き方を教えてくれた良い盤でした。


【Amazon.co.jpへのリンク】
J.S. Bach: Sonatas and Partitas for Solo Violin, BWV 1001-1006 [Hybrid SACD]

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コメント

はじめまして。

音楽に関してずぶのど素人です。
こちらでユリア・フィッシャーさんの記事を
拝見し、ネットで発注しましたが、約一ヶ月
待てど暮らせどなかなか届きません。

バイオリン関係の曲に興味があり、バッハの
無伴奏はシェリング、グリュミオー、ハーンは持っていました。素人なのでどちらがどう・・とか考察などはできませんが、これか
らいろいろと聞き比べて見たいと思います。

ユリア・フィッシャーさんのCD、そろそろ
到着してもいいころなのですが・・・
楽しみです。

(実はヒラリー・ハーンもこちらの記事の影響でいろいろ楽しませてもらっています。)

ゆこべえさん

はじめまして。

コメントありがとうございます。

ユリア・フィッシャーは、『久々のドイツ系ヴァイオリニストの大器』という宣伝文句に惹かれて買いましたよ。私も最初...。

フィッシャー、ハーンは若いので、私のようなおじさんのスケベ心をくすぐる。

しかし、それだけでなく、たとえば無伴奏はシェリング、ミルシテインなどより、私は聴きやすいというか、親しみやすく、演奏も悪くないと思います。巨匠の演奏を無批判に聴くのはそろそろやめてもいいと思います。

ヒラリー・ハーンは、ソニー時代のものはすべていいと思います。ショスタコーヴィチも素晴らしい。

ハーンという人は、非ストラジヴァリの音が好きです。クールさとともに.....。


>約一ヶ月待てど暮らせどなかなか届きません。

なんで来ないんでしょうね。

>ショスタコーヴィチも素晴らしい。

私の意見は「ハーンのショスタコーヴィチに満足できないし、この作品の新しい代表的録音だとは思わない。」に変わりました。09/07/02

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