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2007年4月 4日 (水)

《コシ・ファン・トゥッテ》聴きくらべ(3)

Cosi_levine

[つづき]

7.レヴァイン指揮/VPO/キリ・テ・カナワ(フィオルディリージ)アン・マレー(ドラベルラ)マリー・マクローリン(デスピーナ)ハンス・ペーター・ブロッホヴィッツ(フェランド)トーマス・ハンプトン(グリエルモ)フェルッチョ・フルラネット(ドン・アルフォンソ)1988年録音/DG(上図)

9.ラトル指揮/エイジ・オブ・エンライトメント/Hillevi Martinpelto(Fiordiligi), Alison Hagley(Dorabella), Ann Murray(Despina), Kurt Streit(Ferrando), Gerald Finley(Guglielmo, Thomas Allen(Don Alfonso)1995年録音/EMI

結論から先に書きます。この二つの《コシ》を聴き比べたとき、前者は面白い《コシ》であり、後者は面白くない《コシ》です。この二人の指揮者は世代が一回り違います。レヴァイン1943年生まれ。ラトル1955年生まれ。もう一つの違いは、オペラ指揮者としての経歴・経験です。これについては説明は要らないと思いますが、一応説明しますと、前者はザルツブルク、バイロイトからメトロポリタンまで長く豊富な経験を持つ。後者は最近ザルツブルク音楽祭に進出してますが、レヴァインに比べれば、これからでしょう。

ラトルの《コシ》はピリオド楽器によるピリオド奏法。1st Vn, 2nd Vnを左右に配置した対向配置。《コシ》は登場人物のシンメトリーだけではなく、オケのシンメトリーも栄えますのでますのでヴァイオリンの対向配置は効果的です。ラトル盤のサウンドは、ある意味、モーツァルトのサウンドを理想的に再現しているかも知れません。

しかし、オペラの芝居としての面白さは、サウンドだけじゃ駄目なんです。たとえば、レヴァイン盤の第1幕第11場で歌われるグリエルモのアリアNo.15a《Rivolgete a lui lo sguardo 彼に目を向けて下さい》からフェランドのアリアNo.17《Un'aura amorosa いとしい女の愛の吐息が》への流れと歌唱は上手いです。アリアNo.15aは普通、短いアリアNo.15《Non siate ritrosi おずおずしないで、麗しい瞳よ》が歌われるところです(作品初演の直前にNo.15aがNo.15に差し替えられた)。No.15aはNo.15より長いアリアですが退屈させません。さらにNo.17も長いアリアです。長いアリアを連発しても退屈させない巧さと技が、レヴァインにはありますが、ラトルにはありません。もっといえば、ラトルはこの作品の面白さが分かっていなっかったんじゃないかと思います。

私もラトルの《コシ》には期待してました。Hillevi Martinpeltoのフィオルディリージにも期待してました。しかし、ラトルの《コシ》には芝居としての面白さがない。最後まで聴き終えても何も残らない演奏だったと記憶しています(もう手放してしまいました)。ラトル盤は演奏会形式ライヴでしたが、スタジオ録音でもライヴ録音でもない中途半端な印象を受けました。ラトル盤《コシ》は演奏技術や歌手の歌唱が秀でていても、オペラとしての出来は悪いという典型だと思います。

話が飛躍しますが、思うに、レヴァイン以降の世代にオペラ指揮者が不足しているという感があります。2006年のバイロイト《指輪》におけるティーレマン以外は、パッとしません。若手のハーディング(1975年生まれ)が頑張ってますが、あまりピンと来ません。あと、ウェルザー=メスト(1960年生まれ)は上手いんでしょうかね。その他に、この世代でオペラを指揮できる指揮者としてどんな人がいるか、私は知りませんが、レヴァインのようにザルツブルクで《魔笛》を指揮し、バイロイトでワーグナーを、メトロポリタンでリヒャルト・シュトラウスを指揮する、そういう大物になる人材が待望されます。

最後に《コシ》レヴァイン盤についてもう少し書いておきます。このスタジオ録音もヴァイオリン対向配置です。オケはウィーン・フィル。歌手は手堅いキャストで固めてます。テ・カナワの歌唱はまったく問題なし。ドン・アルフォンソを歌っているフェルッチョ・フルラネット(Ferruccio Furlanetto)は、アーノンクール指揮/ポネル演出/1988年ビデオ盤で、グリエルモを歌っていますが、それは適役で歌唱も芝居も充実してます。レヴァイン盤《コシ》では、アルフォンソを歌ってますが、まるで別人のように歌唱を変えて、こちらでも好演しています。よく見ると、アーノンクール指揮ビデオ盤とレヴァイン盤は、同じ1988年に録音されてますね。フルラネットはグリエルモとアルフォンソを歌い分ける器用な歌手だと思いました。

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